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今回紹介いたしますのはこちら。

「鮫島、最後の十五日」第19巻 佐藤タカヒロ先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。


さて、まさかの12連勝を果たした鯉太郎。
宿敵を撃破し、その力を体の中に宿し、目指すは横綱との戦いです。
が、そんな鯉太郎の十三日目の取組の相手は、これまた浅からぬ因縁のある男、猛虎。
またも立ちはだかる難敵に、鯉太郎は……?



猛虎は子供のころ、線が細いうえ、不器用な少年でした。
クラスのみんなからは何をやってもダメな男だと疎んじられ、孤立。
陰鬱とした彼が変わる転機とのなったのが、テレビで見た時の大横綱、虎城だったのです。
虎城はインタビューで、天才だと言われているが自分もそう思っているかと聞かれ、こう答えたのです。
だったらいいんですが、私も昔から強かったわけじゃないですよ。
この世界に入ったころなんて体も細く、土俵ではいつもやられっぱなしで、悔しくてね。
天才なんて軽い言葉でかたずけられるほど、これまでの時間は語れはしない。
でもひとつ、私に飛びぬけた才能があったとするなら、
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誰にも負けないくらい相撲が好きだったと言う事でしょう。
そんな古城の笑顔の言葉を見て、少年だった猛虎は胸を高鳴らせます。
自分も相撲を取ってみたい。
その衝動は抑えきれず、猛虎は相撲道場に通い始めたのでした。

勿論最初は、箸にも棒にもかからない無様な結果しか出ませんでした。
ですがそれでもあきらめず、鍛錬に鍛錬を続けていくと……
次第にその愚直さは血肉となって猛虎の体と技を鍛え上げていったのです。
今まで相手にされなかった猛虎は、気が付けば他の誰もついていけないほどの訓練をこなすようになっています。
気が付けば猛虎は、学生横綱の座を射止めるまでに強くなって……
そして優勝のインタビューを受けて、猛虎は応えたのです。
自分は天才なんかじゃありませんよ、ただ、誰よりも相撲が好きなだけです、と。

そんな稽古の結果は、彼にとって最上の形で実を結びました。
引退し、自分の部屋を持った虎城が、自分の部屋に来てくれないかと誘ってきたのです!!
憧れの横綱に声をかけられて、断る理由などどこにもないでしょう。
一も二もなく入門を決めた猛虎は、報道陣の押し掛けたインタビューで、プロとしてやっていく自信はある、とはっきり答えたのですが……
その時猛虎は、自分が「人一倍能力の低い不器用な人間」である事を忘れて、重い上がっていたのだ、と自身で振り返ります。
それを思い出させてくれたのが、あの鯉太郎との出会いです。
鯉太郎は猛虎の攻めによって気を失いながらも、押し切って土俵を割らせた。
高校生の、それも素人である鯉太郎に相撲で負けた。
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それは猛虎に、「相撲をなめるな」と相撲にぶん殴られたかのような衝撃を与えたのです。

そしてそれから猛虎は、さらに稽古に打ち込むようになりました。
そんな稽古を見て、兄弟子たちは堅苦しい、つまらない、と小馬鹿にするばかり。
あげくにあの虎城には、ユルッとなるとバァーとなると何度言ったらわかるんだ、と訳の分からない罵倒を浴びせられる始末です。
流石に虎城の失跡には戸惑う猛虎だったのですが、流石に親子と言いますか、王虎だけは虎城の使う謎言語が理解できたようで。
その王虎の通訳をまめにメモして実践していく猛虎。
そして王虎を自分の付き人に受けたことも一つのきっかけとして、さらに稽古を積み、さらに実力を上げていくのです。
天分のあるものに渡り合うにはどうすればいいか。
奴らが1やるところを2、10やるなら20、100やるなら200稽古をこなせばいい!
そうして懸命に稽古に打ち込むうちに、次第に部屋の中でより上を目指す者がもう事負うこの後に続くようになり……
そして、虎城の求めるものも完全に理解し、ステップアップ!!
やがて猛虎は硬く決意をするのです。
必ず、虎城のいた高みへ登って見せる。
だから狂え、決して止まらず、もっと強く、もっと相撲に、
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全てを捧げろ。
こうして、猛虎は虎城の力を自分のものにしつつありました。
ですが鯉太郎も、満身創痍ながら、王虎の力をその身に宿し、空流の教えもしっかりと体に刻み込んでいます。
巨大な力をその身に収めた者同士の戦い。
それは紛れもなく熱戦となり……そして、おそらく横綱・泡影に挑む第一人者の座をかけるものとなるでしょう!!
運命の戦いの火ぶたは、間もなく切られるのです……!!




と言うわけで、十三日目編に突入する今巻。
王虎を倒した鯉太郎の前に立ちはだかったのは、王虎よりもさらに虎城の血を濃く受け継いでいると言ってもいい猛虎でした。
今巻で猛虎がいかにして猛虎になったのかが語られ、それによってどれだけ手ごわい相手か、と言うのを知らされます。
王虎に比べればイージーな相手、ではないかと言うその予想を大きく大きく覆すこの難敵、鯉太郎はどう立ち向かうのか!?
十三日目もやはり注目の一戦となるわけです!!

そして猛虎意外にもスポットライトが当てられます。
ここに来てまさかの登場となったある人物によってかき回される鯉太郎の周囲の人物や、どこか悟ったかのような鯉太郎本人の姿など、注目の要素は満載。
ますますこれからが気になるところなのですが……

最終巻となる第20巻は、18年10月発売。
佐藤先生の遺作となってしまった本作、最後までしっかりと見届けましょう!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!