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今回紹介いたしますのはこちら。

「ホームルーム」第1巻 千代先生 

講談社さんのヤンマガKCより刊行です。


千代先生は14年にヤングマガジンの新人賞で佳作、15年にちばてつや賞で最優秀新人賞を受賞してデビューした漫画家さんです。
その後18年よりウェブコミック誌にて本作の連載を開始。
待望の単行本刊行となりました。

本作は、とある女生徒と教師を中心に描かれていくサイコサスペンスとなっています。
気になるその内容はと言いますと……?



The unsolved case has excited a lot of piblic interests.
この場合、「case」は多義語として活用されるため、みんなが思う「入れ物」とは違う意味になる。
では何になるか?
そんな愛田先生の出した問題をあてられたのは、メガネが目を惹く真面目そうな女生徒、桜井幸子でした。
勉強家な彼女、もちろんその問いの答えはわかっているのですが……席を立とうとしません。
困り果てた顔をして……やがて、授業終了のチャイムが鳴ると同時に、わかりません、と答えるのでした。

幸子が答えられなかった理由。
それは、出にありました。
幸子の異常を感じ取った友人が何かあったのかと尋ねてきまして、幸子は何でもないふりをしたのですが……そこに愛田先生もやってきて、お前ならあんな問題楽勝だっただろう、どうしたんだと話しかけてきましたので……
友人のほうが、愛田先生にこう告げたのです。
先生、この娘またイジメられてます、と。
幸子の椅子には、べったりと接着剤が塗られていました。
それに気づかず座っていた幸子、無理に立ち上がればスカートが破れてしまったりしそうで、立ち上がることができなかったのです。
そんな事情を聞かされた愛田先生は……
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すぐにいすごと幸子を抱え上げ、保健室へダッシュ!!
学校中のみんなのさらしmこの状態になってしまうのです。
……本来なら、いじめられるわ、みんなに見られるわで嫌気がさしてしまうであろうこの状況。ですが、実は幸子、この時間が嫌いではありませんでした。

幸子はこんな過去を持っています。
幸子は派手な母親と二人きり、アパートに住んでいました。
母はスナックへと稼ぎに向かい、幸子は黙々と勉強。
お互い干渉せず、それぞれの仕事に打ち込んでいたのですが……
母は「じゃあちょっと行ってくるから」といういつもの言葉を最後に、帰って来なくなってしまったのです。
姿を消して2年、一度として姿を見せない母。
ですが少しは娘が気になっているようで、幸子がいない間にちょくちょく帰ってきて、必要最低限の金銭を残していっています。
そんなあまりにも寂しい生活をしていた時、担任になった愛田先生が家庭訪問にきたのです。
一連の事実を知った愛田は、まるで自分のことのように、ものすごい勢いで泣いてしまいます。
泣きながら、大丈夫、俺がいるから、これからは一人じゃないから、と言う愛田先生。
あまりにも泣かれてしまったため、幸子は自分が泣くのも忘れ、思わず笑顔になってしまいました。
自分を救ってくれた愛田先生が、軽トラックに乗って帰っていく姿は、幸子にとってまるで救世主、ナポレオンのように映って……

保健室で、幸子は処置を受けます。
と言っても、もうスカートはどうしようもなさそう。
保健室には女性の保健教師だけしかいないとはいえ、処置のためスカートとパンツを脱いでと言われて戸惑ってしまう幸子……
恥ずかしさに耐えながらスカートとパンツを脱いで、体操服に着替えて教室に戻ることになるのですが……その間に、教室では愛田先生が緊急クラス会議を開いていました。
先生すんごく悲しいです。
そう言って涙をこぼす愛田先生、桜井の椅子に接着剤を塗ったやつがいる、もしかしたらこのクラスの生徒である可能性だってある、ただ同じバカなら正直者であってほしい……
そんな愛田先生のお言葉はいつものお決まりのようで、悪ぶっているクラスの生徒から、さっさといつもの奴をやってくれと声を上げられてしまうのです。
小学生とかがよくやるアレ……全員に目をつぶらせ、やったものに手を上げさせる、と言うアレを。
当然、手を上げるものなんていません。
ため息をついた後、相田先生は全員目を開けるように指示し、何か情報を持ってるやつはラインなり直接なりでもいいから報告してくれ、と言い残し……自習と黒板に書いて教室を後にするのでした。

その日の夜、幸子はアルバイトをしながら先生に心の中で謝罪していました。
先生ごめんね、いつも私のせいで大変だよね。
でも私、先生がいるから頑張れてるよ。
幸子は、アルバイト先にも尋ねて気はしないものの、来るまで様子を見に来ているらしい愛田先生の車と横顔を確認し、元気を振り絞っていました。
そして愛田先生は、後続の車に追い立てられるようにその場を離れ……アパートにたどり着きました。
愛田先生は、ポケットから何かを取り出し、ゴミ捨て場へと放り捨てます。
それは……接着剤の、チューブ。
そして愛田先生は部屋の中に入ると、ベッドに倒れこんで思い出に浸っていました。
それは、幸子の家庭訪問をしたあの日のこと。
あの時お前、はじめて笑顔を見せてくれたっけ。
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そして俺は……恋をしたんだっけ……

深夜1時半を回ったころ、幸子は眠りにつこうとしていました。
愛田先生が進めてくれた就寝前のカモミールティーが深い眠りに誘うから。
何があっても、現実に瞼で蓋をすれば大丈夫。
幸子が目を閉じた暗闇には、愛田先生の顔がありありと浮かんで……
安心した幸子は、安堵します。
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私は独りじゃない。
……そう、本当に幸子は一人ではありませんでした。
ベッドの下には、愛田先生が潜んでいたのです。
愛田先生がやって来たアパートは、自宅ではなく、幸子の住むアパートで……!!
幸子が深い眠りについたことを確認すると、愛田先生はベッド下から這い出てきて、全裸で幸子の上に馬乗りになりました。
桜井、先生はお前のヒーローでありたいんだ。
辛い時、困ったときに必ず現れる正義の味方みたいな。
だから、お前は不幸である必要があるんだ。
何心配するな、あの笑顔のためなら先生何度だって助けてやるから。
その他身に何が必要かわかるか?
ほら、今日倣ったばかりじゃないか。
「CASE(事件)」って。
これテストに出すぞ。




と言うわけで、先生によっていじめと救済の自作自演を受けている生徒、と言う奇妙な事件が行われる本作。
この後も、次々と愛田先生による策謀が繰り広げられていくこととなります。
愛田先生は、生徒からラブリンと呼ばれて親しまれ、熱血教師然としたその性格から先生たちからも信頼を寄せられている人物。
そして友人も少なく家庭環境にも恵まれない幸子にとっては、絶対ともいえる存在です。
そんな人物が、まさか生徒一人の気を引くためにこんなことをしているとはだれが思うでしょう!!
ここから愛田先生の歪み切った欲望が、さらに幸子へと注がれていくのです……!!

そんな愛田先生、なぜこんな人物になっていくのかと言う背景などが明かされていき、この事件の音がかなり深いものである事がわかっていきます。
そしてその間にも、幸子は愛田先生の物語など知らず、幸子の物語を進めていくわけで。
その物語にも愛田先生はありとあらゆる手で介入していきます!!
かといってすべてが愛田先生の思い通りに行くかと言えばそうではなく、思いもよらない第三者がこの物語に乱入してくると言う展開も用意!
愛情と欲望が渦巻くそれぞれのドラマ、そのそれぞれが絡み合って生まれるストーリー。
見どころいっぱいの一作となっているのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!