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今回紹介いたしますのはこちら。

「メランコリア」上巻 道満晴明先生 

集英社さんのヤングジャンプコミックス・ウルトラより刊行です。


さて、エロスとタナトスとコミカルとシリアスが織り交ぜられたショート漫画を描かせればピカイチな道満先生の最新作となる本作。
本作はそんな道満先生の魅力がたっぷり詰め込まれた短編連作となっております。
13編収録されている短編作品の中から、今回は「Gestalt(ゲシュタルト)」というエピソードを紹介したいと思います!



真剣に形態とにらめっこをするナオ。
友人の女性と二人がそれをのぞき込みますが……どうやらナオは告白するメッセージの文面を決めかねているようです。
「ずっと前から先輩のこと」
「よかったら今度一緒に」
「私たちつきあっちゃいます?」
「夏休みに海に一緒に」
「好きです好きです」
「好き好き好き好き好好好好好好好好」
考えすぎて文面が決まらず、そんな怪文書を入力してしまうナオ。
怖いから!それ絶対送信すんなよ?と友達に言われてしまいまして、またも携帯とのにらめっこにもどる尚なのでしたが……
画面上に無数に並んだ「好」の文字が突然何だかわからなくなり、声を上げて立ち上がってしまいました。
これってなんて字?と友人に問いかけてしまうナオ。
何って、「スキ」でしょ、と冷静に応える友人なのですが……
ナオは依然、この字が「スキ」である実感がつかめないのです。
ゲシュタルト崩壊と言うやつでしょう。
考えれば考えるほどわからなくなり、ナオはモヤモヤしたまま一日を過ごし……そして、明日になったら治ってますように、と床に就くのでした。

が、翌日になると症状はむしろ悪化していました。
好きと言う字どころか、自分が誰に告白しようとしていたかすらわからなくなっています。
3年の早川先輩でしょ、一緒に海生きたいから夏休みまでに告るって。
そんな友達の言葉も、ナオには全く響きません。
本当に「スキ」だったのか、アタシ「スキ」が何だかわかんなくなっちゃって。
どうやら本気で重症の様子。
マズイことにナオ、恋愛脳とまで言われるほどいつも「スキ」のことを考えていたはずの人物でして、そんな人物から「スキ」がなくなってしまったら……
空っぽになってしまう前に、友人たちは図書委員の夏目を訪ねることにするのでした。

眼鏡で図書委員と言うイメージにそぐいまくった夏目、ナオのことも分析してくれます。
ゲシュタルト崩壊とは、聴覚や触覚、味覚にも起こる現象で、ナオの場合は複雑化した恋愛の欠如が、後漢の崩壊を起こしたのかもしれない……
そこで夏目は、とりあえず手本書のようなもので徐々に思い出させればいいのではないか、と恋愛要素のある人気シリーズの本与えます。
じっくりと読んでみるナオですが……
頑張って読んでも吐き気がものすごい勢いで襲ってくるばかり!
手をつないで唇を重ねて性器を舐めあって(最後の描写は本にはなかった気がしますが)して何が楽しいのか理解できない、と、
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結局おげーっと友人の顔にはいてしまうのでした。

その後、告白しようとしていた早川先輩(カリスマ読モ)をこっそり見つめてみると言うこともてみたものの、またももげー!とリバース。
さらに、実は過去何か月か付き合っていたという経験のある友人たちも、今思い起こせば気持ち悪いと言う感情しかわかず……

図書館で一人、机に突っ伏して泣いていたナオ。
そこに夏目が現れ、今度は四コマ漫画あたりからならすといいんじゃないか、と漫画を差し出してくれました。
ナオは顔を上げ、あたしもう一生恋とかできないのかな?と弱気な言葉を漏らすばかり。
そこで夏目はこう言います。
ウサギは寂しいと死ぬっていうの、あれ嘘なんだよ。
寂しいと死ぬ生き物なんていないし、私は今までに一度も友達を作ったことなかった。
それが普通だと思ってた。
でも必死になってるナオを見てて気づいたの、私もずっと何かが形態崩壊を起こしていたのかもね;
……そこで、ナオはふと気が付きます。
夏目とは普通に接せられることに。
夏目にはその理由もわかっていました。
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それは、ナオが夏目のことを「スキ」じゃないから、です。
寂しそうにそう告げる夏目なのですが……瞬間、ナオはパッと表情を明るくして言うのです!
そっか!「スキ」じゃなければ付き合えるんだ!!
……当然夏目は突っ込みます。
好きじゃない人と付き合うなんておかしいよ、と素直に言うものの、ナオはもう止まりません!
でもアタシ、夏目っちのこと嫌いじゃないよ?
今日あったばっかだけど、同じクラスだって今日知ったばっかだけど!
戸惑いまくる夏目に、ナオはきっぱりと言うのです。
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「スキ」はすぐに崩壊しちゃうけど、私の「嫌いじゃない」は揺らがないよ!ずっと一緒に居られる!!
そんなナオの言葉に、ほのかに頬を染める夏目……
夏目っち海は好き?
どこでもいっか!
手をつないで唇重ねて性器を舐めあえれば!
なおあっけらかんとそう言って、夏目と「嫌いじゃない」ゆえのこれからを語りあうのでした!!



と言うわけで、ゲシュタルト崩壊でスキを見失った恋愛脳の少女を描くエピソードを収録した本作。
この他にも、実に様々な物語が収録されています。
10年間引きこもっていた少女が気がついた時、世界がめっちゃ滅んでいた「Apocalypse」。
森に棲むマジョのお姉さんと天才的なチェスの腕を持つせいでいじめられてしまう少年の関係を描く「Bobby Fischer」。
殺し屋に目をつけられ、今まさに始末されようとしている女子高生三人組の物語「Cutthroat」……
コミカルだったりシリアスだったり、その両方だったりと様々な味わいが楽しめるエピソードばかり13編取り揃えられているわけですが、そのほとんどのお話が二人の人物の関係をピックアップしたもの、あるいは生と死がかかわってくるお話になっているのです。

そんな本作、どうやらすべて同じ世界の物語になっているようで。
作中ででてきた人物が他のストーリーに関わってきたり、他のお話に出てきたモノが別のお話にちょっとだけ顔を見せたりと、そんな部分からそれをうかがうことができます。
が、そう言ったちょっとにやりとできる共通点もいいのですが、もっと重大な背景があったりします。
それは「巨大な彗星がそう遠くないうちに地球に衝突する」状況である、と言うこと!!
しかも人類はひとしきりパニクり終えた後のようで、迫り来る彗星を前にして、それでも割と普通の日常を送っている……と言うのがミソなのです!!
こう言った世界観はまさに道満先生ならではといったところでしょう!
いつもの道満先生作品のように、毒もあればエロスもあり、感動も笑いもある日々をたんたんと描くお話が楽しめるのは間違いありません。
ですが彗星が迫ることによって、ほんの少しだけ心の持ちように変化が起きている人々の日常、といった少しだけスパイスの効いた物語としての面白さも用意されているわけです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!









それにしても、「スーサイドパラベラム」の単行本はいつ出るんでしょうか……
絶対買うので早く……出してください……!!