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今回紹介いたしますのはこちら。

「宇宙人プルカ」第1巻 関崎俊三先生 

集英社さんの集英社ホームコミックスより刊行です。


 さて、「恋愛怪談サヨコさん」以来2年ぶりの単行本刊行となった関崎先生。
本作は今まで主戦場としていた白泉社さんから離れ、ホーム社さんのウェブコミック「Z」での連載となりました。
内容はと言いますと、関崎先生おなじみとなる、ちょっとアレな感覚を持つ主人公がちょっとしたトラブルを巻き起こす日常を描いていく作品となっています!



宇宙人のプルカ。
手のひらサイズのちょっとかわいい感じの彼、地球人の風香の「頭」に住んでいます。
それは比喩ではなく、プルカが必要としたとき、風香の額はぱっくりと避けて口を開け、その中に入ることができるようになります。
中に入ると、風香本人の意識がなくてもある程度ならば体を動かせるのですが、プルカはいまいちその操縦が苦手なようです。
ですがなぜプルカは風香の頭に住むことになったのでしょうか?
それは2週間前に時をさかのぼらせる必要があるのです。

プルカは、宇宙船で地球に降り立ちました。
乗ってきた小型の宇宙船を見えないようにして上空に待機させ、早速目的の遂行を狙ったのですが、いきなり空を舞う黒い凶暴な生き物に襲われてしまいました。
まあ、カラスなんですが……
ともかくプルカのサイズからすれば、カラスは恐ろしい存在なことは間違いありません。
プルカは地球にはるばるやって来る宇宙人だけあって、現代科学では実現不可能ななんかすごいアイテムを持っているようで。
懐から取り出したのは、万能光線銃。
全てを塵と化せるおっそろしい光線を出せる凄すぎる銃なのですが、エネルギーがすぐカラになってしまうのが難点となっております。
飛び回るカラスに光線を当てることはできず、結局エネルギー切れを起こしてしまい、カラスは塵にできずじまい。
すわ絶体絶命、と思われたその時のことでした。
風香がカラスを追い払い、プルカを助けてくれたのは!
助けてくれた風香はそのまま立ち去ろうとしたのですが、宇宙人である自分の存在が知られたままではいろいろ後に支障が出かねません。
例のアイテム群の中から、記憶を消す道具を取り出そうと荷物をあさっておりますと……目の前で、風香が車に轢かれてしまうではないですか。
これならアイテムを使わなくても間もなく……と嫌なことを考えていたプルカ、彼女の元に近寄り、助けてくれてありがとう、と感謝の言葉を投げかけます。
すると彼女は、薄れ行く意識の中で、あなたも交通事故とカラスには気をつけてね、とつぶやいたのです。
……プルカの目的とは、この星で宿主となる存在を探し出し、最終的に自分の子孫を生ませること。
そうやって増えていく寄生型の宇宙人なわけですが……
命の恩人の鼓動が消え行くのをさすがに見過ごせなくなったのでしょう。
プルカは彼女への寄生を決意。
寄生して脳機能を補助することによって、彼女の命を救うことにしたのでした!!

成り行きで共生関係となった二人ですが、プルカは内心ガッツポーズをしていました。
風香はこの星で言うところの美少女でしたから、子供を作ろうと考えてくれる異性は少なくないはず!
さらにプルカに対して恐怖や嫌悪を抱かず、体の拒否反応のようなものもない、相性もばつぐんなのですから!
……しかし、それは風香の持っている性質を知るまでの束の間のガッツポーズでした。
まさに理想的な宿主かと思われた風香でしたが、実は彼女……
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とんでもない対人恐怖症だったのです!

なんでも彼女、子供のころ全国中継されていた音楽発表会に出たことがあるのだそうです。
大舞台に出た緊張からなのか、彼女はそこであろうことかお漏らしをしてしまいました。
見る人からすれば、子供のことだからそう言うこともあるかもしれないと思って終わりなのでしょうが、当人からすれば笑ってすまされることなわけがありません。
それ以来彼女は強烈な対人恐怖症となってしまいまして、外に出るたびに四方八方の人々におびえながら暮らすようになってしまったのです。
が、彼女はこのままでいいとは思っていません。
本当は対人恐怖症を克服したい、本当は人と接していたい。
その為なら多少虫もしていこうと思う、結果再びお漏らししたとしても、と彼女、言動はともあれ頑張ろうとしていたのです。
風香の凄いところは、その決意だけして何もしていないわけではないと言うこと。
少しでも頑張ろうと、急な雨を前にして傘を忘れた人に傘を貸してあげようとするなど、積極的に人と言い感じにかかわろうとしていたのです。
ですが対人恐怖症をおして、まともにしゃべれずものすごいオーラを発したまま近づいていきますので、親切にしようと思った方は恐怖しか感じず、逃げ出してしまう始末。
その行動を見慣れている者からは、声かけテロ、親切テロなどと笑われ、キモ風香とさげすまれているのです。
この対人恐怖症を直さなければ、プルカの望みである子作りが果たされません。
逆に言えば、そこさえ直せば美少女の彼女に向かうところ敵なし(?)ではありませんか!
そこでプルカは……悪い顔をして、あのアイテムを使えばいいか、とつぶやくのです……!!

君の対人恐怖ちゃん、今すぐ治したいと思わないかい?
風香がお風呂に入っている時、突然プルカはそう言ってきました。
その不自然な明るさに風香は不審なものを感じますが、プルカはいつも通りだよと適当に流して、いいものを出してあげよう、とアイテムを取り出しました。
それは、
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「記憶消去ブザー」。
日付を合わせてひもを引くと、その設定した時の記憶を強烈に消すことができるのだとか。
これでトラウマとなった日の記憶を消してしまえば、対人恐怖症もそもそもなかったかのようになるのではないかと言うわけです!
選択は君に任せよう、これで一気に直してみないかい?
そう言ってなんだかいい笑顔で選択をゆだねるプルカ、なのですが……
風香は、やめときます、とあっさり返事。
それはそうでしょう、あからさまにいつもと違う雰囲気のプルカが不審でならないのです。
そもそもそんな便利なものがあるのなら、さっさと使えばよかったはず。
使わなかったと言うことは、使いたくない理由があるとしか考えられないではありませんか。
理由なんてないよ、と言うプルカですが、それでも全く態度を変えない風香……
とうとうプルカはぶち切れ、いいから使え!!と怒鳴りつけてしまうのです!
……この態度、やっぱり何かあると言うことでしょう。
怪訝な瞳となる風香。
その視線に気が尽きたプルカは、また顔を作り直し、一からアイテムを取り出すところから始めるのですが、当然もう後の祭りなのでした。

翌日、登校する段階になってもプルカの誘いは止まりません。
日々努力しているのは認めるが、それでも気合が足りないと言わざるを得ないな!などと風香を扱き下ろしてくるのですが、風香も黙ってそれを受け入れるままではいられません!
自分だって、カラスがトラウマになってるじゃないか、と反撃を試みるのです。
確かに今も、カラスを見かけるや否や風香の中に隠れてしまっているプルカ。
あんな生物、一瞬で塵と化せる、問題ない、と言うプルカですが、その尋常ではない汗の量が巨星であることを物語っております。
そして通学路に人が増えてきたからと言い訳をして、風香の頭の中に逃げ込んでしまうのでした。

それでとりあえずは終わったかと思われた二人のトラウマを廻る小競り合い。
ですが、風香の中には苛立ちがまだ残っていたのでしょう。
電線の上でたむろしているカラスが、こっちの様子をうかがっているのを見て、プルカにこう言ってからかってみました。
ねえプルカ、カラスがこっち睨んでるよ。
と、その直後
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風香の額から飛び出し、消えろ!!と大声で叫びながら光線銃を放ったのです!!
……当然周りには多くの登校中の生徒たちがいます。
そんな全員の視線が、風香に……いや、風香の額のプルカに集中し……!!
宇宙人である自分の存在が知られてはマズイですし、額が割れている場所を見られた風香もなんかいろいろ今後に支障が出そう。
そこで、プルカはあれを……記憶消去ブザーを取り出すのです。
風香に耳を塞げ、と命令し、そして……思いっきりブザーのひもを引くプルカ!!
するとその大音響があたりに響き渡り……そして、周囲の人々の記憶を消すとともに……とんでもない出来事が巻き起こってしまったのでした!!



と言うわけで、プルカと風香の日常を描いていく本作。
風香は対人恐怖症を治すため、プルカはその先にある子孫繁栄を果たすため、二人はなんだかんだと仲良く毎日を過ごしていくこととなります。
6話が収録されているこの第1巻、この二人の関係性や人となりの説明がされる第1話の後、各話新キャラを登場させ、その人物を中心にお話を展開していく形式になっていきます。
対人恐怖症を解消するためにまず、同性で良いから友人を作ろう、と提案してくるプルカの声に何と書応えようとする風香の前に現れる、個性豊かな新キャラ達。
異性はもちろんの事、同性でも変わらず腰が引けまくってしまう風香は、そんなキャラたちと本当に友達になることができるのでしょうか?
プルカのアイテムも正直信用しきれませんし……!!
新キャラの中にはプルカ関係のキャラクターもいまして、ドタバタ劇は一層加速!!
コミカルで楽しい二人と、それを取り巻くキャラクターの日常が楽しめますよ!!

どうも本作は全1巻の予定で連載されていたようで、第6話はものすごく最終回的なお話になっています。
感動するお話でありつつ、ギャグでもある一粒で二度おいしい第6話でお話はきれいにまとまっておりまして、読後感も爽やかに完結……と言うところでしたが、どうやら連載時の反響が大きかったようで、シーズン2の連載及び第2巻刊行が決定した様子!!
是非ともこの調子で、二人には幸せになってほしいものです……!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!