今回紹介いたしますのはこちら。
「彼女は宇宙一」 谷口菜津子先生
エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。
谷口先生は10年ごろから自身のブログで漫画を発表し、その作品をきっかけとして注目を集め、11年ごろからウェブ雑誌で連載を開始した漫画家さんです。
今までは四コマやショート漫画をメインにされておりましたが、今回は初となるストーリー形式の読み切りを集めた単行本刊行となりました。
本作では女性を中心に据えたもろもろの物語が6編収録されておりますが、今回はその中で撮りを務める「ランチの憂鬱」を紹介させていただきたいと思います。
昼休みに仲良しグループでお弁当を食べている時、それは起きてしまいました。
お母さんの手作りよりも、冷凍食品のほうが良いんじゃないか?
でも、リンカのは羨ましい。
リンカのお弁当は、凝りに凝った可愛らしい、SNSに映えちゃう系のそれ。
その美しい見た目から、皆の注目を集めていました。
が、リンカはこう言うのです。
私はマホちゃんみたいなのが羨ましいな、と。
……マホが食べていたのは、菓子パンと牛乳。
何を言っているのか、その場にいた人は理解できません。
ですが、マホの機嫌を損ねたことは間違いなさそうでして。
それ以来、仲良しグループはリンカをいじめるグループ、に変わってしまったのです……
毎日のように捨てられてしまう、リンカのお弁当。
この仲良しグループと言うのは、純粋に仲良しとは言えないグループなのです。
マホが気に入らないと思った人物を一人、いじめていく。
それはマホの気分が変わるまで続き……終わった後は、また何もなかったかのように仲良しに戻るのです。
まるで自分たちは、マホの周りをまわる衛星のようだ。
そう自虐するリンカは、給食のことを思い出していました。
給食にカレーとコッペパンが出たとき、リンカはパンの中身をほじって穴をあけ、そこにカレーを流し込んでカレーシチューコロネ、と言って食べていました。
そんな様子を、マホはリンカの変なところ、面白いから好き、と笑ってくれていたのです。
その時、リンカの心は躍り、「無敵な気持ち」になれました。
ですがその惑星は、お弁当が始まると不機嫌な時が増え、輪番で衛星たちが仲間はずれにされるようになっていたのです。
また二週間もすれば矛先が変わるだろう、と我慢の日々を続けるリンカ。
おうちに帰りますと、お母さんがまた映える料理を作っておりました。
お母さんはその料理の撮影+SNSへのアップに夢中。
料理が冷めようとも一切気にしていないようです。
そしてすぐさま、今日のお弁当はどうだったと尋ねてきました。
渾身のお弁当は、全部ゴミ箱がお召し上がりになってしまったのですが……とりあえず、見た感じから無難な感想を選んで返します。
お母さんは、マホちゃんは最近私のお弁当写真にいいねをくれる、と嬉しそう。
マホちゃんは片親だからお弁当難しいものね、かわいそうな子なんだから仲良くしてあげなさいよ?と、携帯から目を離さないまま、勝手なことを言ってきます。
あまり聞かれたくないことを聞かれたことから、リンカはお腹が痛くなってきてしまいました。
せっかく作ってくれた夕食ですが、お腹が痛くて食べられなそう、と言ってみると……お母さんは不満顔。
機嫌を取るために、治ってきた、と言って何とか食べるのですが……
マホは、リンカいじめを継続しつつ、他の友達とそれなりに楽しく過ごしていました。
彼女が家に帰ると、そこには誰もいません。
今日はママと晩御飯、と喜んでいたマホの気分は一気に落ち込んでしまいました。
が、机の上においてあった書置きを見てその気分は変わります。
そこには、1000円と、ごめんと言う謝罪の言葉……そして、「週末の遊園地は絶対行くよ!!」と言う言葉が書いてあったのです。
ですがその気持ちも、すぐに曇ってしまいました。
そのお金で、カップラーメンを買いに行ったマホ。
そこでリンカとお母さんと出会い、こう言われてしまったのです。
それ御夕飯?
成長期の子にこんな、ひどすぎる……
何か辛いことがあったらいつでも相談してね?
いじめはエスカレートして、弁当箱ごとトイレに投げ込まれてしまいました。
お母さんはさすがにどうしたのかと聞いてきましたが、水たまりに落としてしまって、と言うと……ドジね、でもSNSのネタになるかも、などと言いだします。
ユウご飯を食べる段階になっても、リンカが冷めるよと言っても、リンカは贅沢よ、マホちゃんのうちは毎日手作りのご飯が食べられないのよ、片親ってかわいそう、本当に不幸よ、と一切取り合わず……
リンカは、とうとう我慢ができなくなってしまいました。
お母さん、こっち見て。
見て、私のこと。
この家、変。
……ある日を境に、リンカのお母さんのSNSの行進は止まりました。
と同時に、マホの天下も終わってしまいます。
他のお友達が、ハブとかシカトとかもううんざりだ、と言ってマホとの関係を断絶。
逆にマホを無視するようになってしまったのです。
一人で菓子パンとサラダ、牛乳を食べようとしていたマホ。
すると、そこにリンカが現れ、野菜食べられるようになったんだ今日は捨てないでくれてありがとう、と言い残し、去っていったのです。
むっと来たマホは、リンカを呼び止めて弁当をひったくり、フタを外して捨てようとしたものの……
そこにあったのは、
ゆで卵が6つ入っただけのものだったのです!!
ヤバいよね、これしか料理作れなくて。
そう言って自虐的に笑ったリンカは、マホを誘うのです。
これからうち来ない?と。
と言うわけで、リンカとマホの憂鬱なランチを描いたエピソードを収録した本作。
一見するとすごく幸せそうに見えるリンカの家。
逆に一見すると、あまり幸せそうには見えないマホの家。
ですが実際はどうなのでしょうか?
お弁当や手料理が毎日ふるまわれれば幸せなのか、食べられなければ不幸せなのか?
表面と内面が逆のようにも見える二人は、その日をきっかけにどうなっていくのか。
この後描かれるクライマックスは、決して大事件が起きるわけではありません。
ありませんが……きっとその心に響くものになっていますよ!!
このエピソードの他にも、様々な読み応えあるお話が用意されています。
表題作となる、ミステリアスな美女と、周囲をうまく操作して人気者になっている男のちょっと不思議な恋愛を描く「彼女は宇宙一」。
たっぷり食べて巨大化する能力を持ち、それによってやって来る怪獣と戦う女の子の悩みを描く「カロリーファイターあいちゃん」。
サークルクラッシャー的な女の子に揺れるサークルの中で揺らぐまいとする一人の男子の青春を描く「ツチノコ捕獲大作戦」。
恋する女の子が好きな男子に告白する、と言うところで死んだ末に見るものを描く「死ぬほど大スキ高田くん」。
そして、地球の男に飽きたところで宇宙へ飛び立ってしまった女の子が愛を求める「サセコちゃん愛をさがす」……
紹介したお話も含め、女の子が抱える悩みや想い、あるいは特定の女の子に対して思うところのある男の子を中心としておりまして、ショッキングだったりそうでもなかったりするトラブルとそんな要素を絡め、谷口先生ならではの味わいを作りだしています!!
どれをとっても、引き込まれること間違いなしのこれらのエピソードも必見ですよ!!
今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
「彼女は宇宙一」 谷口菜津子先生
エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。
谷口先生は10年ごろから自身のブログで漫画を発表し、その作品をきっかけとして注目を集め、11年ごろからウェブ雑誌で連載を開始した漫画家さんです。
今までは四コマやショート漫画をメインにされておりましたが、今回は初となるストーリー形式の読み切りを集めた単行本刊行となりました。
本作では女性を中心に据えたもろもろの物語が6編収録されておりますが、今回はその中で撮りを務める「ランチの憂鬱」を紹介させていただきたいと思います。
昼休みに仲良しグループでお弁当を食べている時、それは起きてしまいました。
お母さんの手作りよりも、冷凍食品のほうが良いんじゃないか?
でも、リンカのは羨ましい。
リンカのお弁当は、凝りに凝った可愛らしい、SNSに映えちゃう系のそれ。
その美しい見た目から、皆の注目を集めていました。
が、リンカはこう言うのです。
私はマホちゃんみたいなのが羨ましいな、と。
……マホが食べていたのは、菓子パンと牛乳。
何を言っているのか、その場にいた人は理解できません。
ですが、マホの機嫌を損ねたことは間違いなさそうでして。
それ以来、仲良しグループはリンカをいじめるグループ、に変わってしまったのです……
毎日のように捨てられてしまう、リンカのお弁当。
この仲良しグループと言うのは、純粋に仲良しとは言えないグループなのです。
マホが気に入らないと思った人物を一人、いじめていく。
それはマホの気分が変わるまで続き……終わった後は、また何もなかったかのように仲良しに戻るのです。
まるで自分たちは、マホの周りをまわる衛星のようだ。
そう自虐するリンカは、給食のことを思い出していました。
給食にカレーとコッペパンが出たとき、リンカはパンの中身をほじって穴をあけ、そこにカレーを流し込んでカレーシチューコロネ、と言って食べていました。
そんな様子を、マホはリンカの変なところ、面白いから好き、と笑ってくれていたのです。
その時、リンカの心は躍り、「無敵な気持ち」になれました。
ですがその惑星は、お弁当が始まると不機嫌な時が増え、輪番で衛星たちが仲間はずれにされるようになっていたのです。
また二週間もすれば矛先が変わるだろう、と我慢の日々を続けるリンカ。
おうちに帰りますと、お母さんがまた映える料理を作っておりました。
お母さんはその料理の撮影+SNSへのアップに夢中。
料理が冷めようとも一切気にしていないようです。
そしてすぐさま、今日のお弁当はどうだったと尋ねてきました。
渾身のお弁当は、全部ゴミ箱がお召し上がりになってしまったのですが……とりあえず、見た感じから無難な感想を選んで返します。
お母さんは、マホちゃんは最近私のお弁当写真にいいねをくれる、と嬉しそう。
マホちゃんは片親だからお弁当難しいものね、かわいそうな子なんだから仲良くしてあげなさいよ?と、携帯から目を離さないまま、勝手なことを言ってきます。
あまり聞かれたくないことを聞かれたことから、リンカはお腹が痛くなってきてしまいました。
せっかく作ってくれた夕食ですが、お腹が痛くて食べられなそう、と言ってみると……お母さんは不満顔。
機嫌を取るために、治ってきた、と言って何とか食べるのですが……
マホは、リンカいじめを継続しつつ、他の友達とそれなりに楽しく過ごしていました。
彼女が家に帰ると、そこには誰もいません。
今日はママと晩御飯、と喜んでいたマホの気分は一気に落ち込んでしまいました。
が、机の上においてあった書置きを見てその気分は変わります。
そこには、1000円と、ごめんと言う謝罪の言葉……そして、「週末の遊園地は絶対行くよ!!」と言う言葉が書いてあったのです。
ですがその気持ちも、すぐに曇ってしまいました。
そのお金で、カップラーメンを買いに行ったマホ。
そこでリンカとお母さんと出会い、こう言われてしまったのです。
それ御夕飯?
成長期の子にこんな、ひどすぎる……
何か辛いことがあったらいつでも相談してね?
いじめはエスカレートして、弁当箱ごとトイレに投げ込まれてしまいました。
お母さんはさすがにどうしたのかと聞いてきましたが、水たまりに落としてしまって、と言うと……ドジね、でもSNSのネタになるかも、などと言いだします。
ユウご飯を食べる段階になっても、リンカが冷めるよと言っても、リンカは贅沢よ、マホちゃんのうちは毎日手作りのご飯が食べられないのよ、片親ってかわいそう、本当に不幸よ、と一切取り合わず……
リンカは、とうとう我慢ができなくなってしまいました。
お母さん、こっち見て。
見て、私のこと。
この家、変。
……ある日を境に、リンカのお母さんのSNSの行進は止まりました。
と同時に、マホの天下も終わってしまいます。
他のお友達が、ハブとかシカトとかもううんざりだ、と言ってマホとの関係を断絶。
逆にマホを無視するようになってしまったのです。
一人で菓子パンとサラダ、牛乳を食べようとしていたマホ。
すると、そこにリンカが現れ、野菜食べられるようになったんだ今日は捨てないでくれてありがとう、と言い残し、去っていったのです。
むっと来たマホは、リンカを呼び止めて弁当をひったくり、フタを外して捨てようとしたものの……
そこにあったのは、
ゆで卵が6つ入っただけのものだったのです!!
ヤバいよね、これしか料理作れなくて。
そう言って自虐的に笑ったリンカは、マホを誘うのです。
これからうち来ない?と。
と言うわけで、リンカとマホの憂鬱なランチを描いたエピソードを収録した本作。
一見するとすごく幸せそうに見えるリンカの家。
逆に一見すると、あまり幸せそうには見えないマホの家。
ですが実際はどうなのでしょうか?
お弁当や手料理が毎日ふるまわれれば幸せなのか、食べられなければ不幸せなのか?
表面と内面が逆のようにも見える二人は、その日をきっかけにどうなっていくのか。
この後描かれるクライマックスは、決して大事件が起きるわけではありません。
ありませんが……きっとその心に響くものになっていますよ!!
このエピソードの他にも、様々な読み応えあるお話が用意されています。
表題作となる、ミステリアスな美女と、周囲をうまく操作して人気者になっている男のちょっと不思議な恋愛を描く「彼女は宇宙一」。
たっぷり食べて巨大化する能力を持ち、それによってやって来る怪獣と戦う女の子の悩みを描く「カロリーファイターあいちゃん」。
サークルクラッシャー的な女の子に揺れるサークルの中で揺らぐまいとする一人の男子の青春を描く「ツチノコ捕獲大作戦」。
恋する女の子が好きな男子に告白する、と言うところで死んだ末に見るものを描く「死ぬほど大スキ高田くん」。
そして、地球の男に飽きたところで宇宙へ飛び立ってしまった女の子が愛を求める「サセコちゃん愛をさがす」……
紹介したお話も含め、女の子が抱える悩みや想い、あるいは特定の女の子に対して思うところのある男の子を中心としておりまして、ショッキングだったりそうでもなかったりするトラブルとそんな要素を絡め、谷口先生ならではの味わいを作りだしています!!
どれをとっても、引き込まれること間違いなしのこれらのエピソードも必見ですよ!!
今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
コメント
コメント一覧 (2)
また、短編集のカテゴリを作ると、ほぼすべての作品がそちらのカテゴリになってしまう作家さんなどもいますので、作成は考えておりません。