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今回紹介いたしますのはこちら。

「二コラのおゆるり魔界紀行」第1巻 宮永麻也先生 

エンターブレインさんのハルタコミックスより刊行です。 


 宮永先生は、16年にハルタでデビューした新人の漫画家さんです。
17年に本作の連載を開始し、初連載、初単行本刊行となりました。

そんな本作、そのタイトル通り主人公となる二コラが魔界を旅する作品となっています。
魔界の旅と言っても大冒険やはげしいバトルが待っているわけではなく……?



魔界第3の都市、クリンブルク。
そこに二コラとサイモンは訪れていました。
お腹すいたとつぶやく二コラに、サイモンは露店で売っていた焼き魚のような物を、これなら毒もないし多分安全だよと買い与えます。
その見たこともない面白い形をした魚を見て、二コラは笑いだしました。
これホントに、人間でも食べられるの?
その発言を聞いて、サイモンはしーっと静かにするようにジェスチャー。
ここは魔界なのですから、人間がいるなどと知られたらめんどくさいことになってしまいます。
口を酸っぱくしてサイモンは不用意なことを口走らないように言っていたのですが……二コラはついついこう言ったことを口にしてしまうのです。
その声を誰かが聞いていたのでしょうか……二人の前に、数名の兵隊風の男が姿を現し、尋ねてきました。
貴様に人間の疑いがある、異界生物取締法により取り調べを行う。

二人はわき目もふらず逃げ出し、何とか兵隊を振り切った二人。
ですがまだ町の中には兵隊がうろついておりまして、大っぴらに行動することはできなそうです。
サイモンは行商人をしていまして、街から街へ移動しては旅先で入手したものを売り、生計を立てています。
このクリンブルクにも商売で立ち寄りまして、結構大変な思いをしてこの街での行商許可をとったのですが……これで台無しになってしまいました。
びりびりと許可証を破るサイモンに、二コラは申し訳なさそうに謝るばかり。
二コラが軽率なせいでこんなことに、と言うサイモンですが、本気で怒っているわけではないようで。
対処できないことは起こすなよな、魔女のくせに魔法使えないんだからさ、と小馬鹿にしたように笑うのです。
今度はむっとした二コラ、使えないわけじゃないもん、と口を尖らせ、とっておきの魔法を披露してくれました。
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何もないところから、パッと一輪の花を咲かせる、彼女ができるたった一つの魔法を!
サイモンはもうその魔法を見慣れているようで、はいはしそのの手品ね、とまともに取り合わず、これからのことを考え始めます。
せっかく大きな都市に来たのですから、商売せずに逃げ出すというのはもったいないというもの。
そこで彼はこう決めたのです。
闇バザールに行こう、と!

一見すると廃墟にしか見えない建物の扉をたたくと、小柄な魔族が扉を開けて顔をのぞかせます。
そこでサイモンが、「クリンブルクの兵隊はアホばっか」と愛言葉を告げると……魔族は扉を開けて、二人を中へ招き入れてくれました。
そこには広大な地下空間が広がっています。
魔界にはこう言った兵隊の目につきにくい場所が多く、こう言った場所で闇バザールが開かれているのだそうです。
闇バザールと言うだけあって、そこはうさん臭さまんてん!
サイモンは、居心地もいいから二コラも気に入るんじゃないかな、と言うのですが……
這いまわる得体のしれない虫のようなものを見て、二コラはそうかなぁと漏らすしかないのでした。

サイモンは目についた店に飛び込んでみることにしました。
その店はものすごく雑多にものが置かれていまして、二コラはつい、ごちゃごちゃ、と漏らしてしまうのですが、すぐに悪かったな、とその隙間から店主が顔を出してきました。
早速いい地獄焼きのツボがあるんだ、と営業を始めるサイモン。
良いものだよ、と10万で売ろうとするものの、店主はじっくりと眺めながら、2万でどうだと思いっきり値切ってきました。
いくらなんでもそれは相場から離れすぎています。
そんな無茶な、と異を唱えるサイモン、この店主は手ごわそうだなと長期戦を覚悟するのです。
が、そこで二コラが、キラキラしてる、とアクセサリーを手に取ってサイモンに見せてきました。そのアクセサリーを見につけたいというわけではなく、道具箱に入れた眺めたいという二コラ。
買ってほしい、と言うことのようですが……サイモンはそのお願いが出てくる前に嫌だね、ときっぱり拒否!!
まだ何も言ってないのに、と二コラは膨れるのです。
と、そのやり取りを見ていた店主が、親子で行商の旅か、大変だな、と漏らしました。
そう言われればそう見えなくもないかもしれませんが、二人はそう言う関係ではありません。
じゃあどんな関係なのかと尋ねれば……何だろうと二人とも少し考え……二コラが説明をし始めます。
私が魔界に来たばかりのころ、行き倒れちゃって、そこであったのがサイモンだったの、それから一緒に旅することになったってわけ。
……また不用意な発言です。
慌てるサイモンですが、店主はそれほど気にしていない様子。
心配するな、黙っててやるよ、ここの住民は地上の兵隊と違って異界から来たやつの味方なんだ。
魔界ってのは混沌としてなんぼなんだから、取り締まる方がどうかしてる。
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……いいことを言ってくれた店主でしたが、いいこと言ったんだから2万にまけろや、と付け足したことで台無しになってしまうのです……!

結局6万で勝負はついたようです。
ちょっと損はしてしまいましたが、この闇バザールならば二コラが安心して行動できることがわかったのは収穫かもしれません。
ここに住めばいいじゃないか、安全だし、そしたら俺は気ままな一人旅に戻れるし、サイモンは冗談交じりに言うのですが……
二コラは涙目になりながらサイモンのすねにキック!!
ついてきてもいいって言ったのに、と怒ってしまいました。
サイモンも慌てて謝罪し、機嫌を直すために、なんかキラキラしたものを買ってやるよと提案。
二コラはパッと顔を明るくして、早速露店へと向かうのです!

セクシーな女魔族のやっている露店には、キラキラしたものがいっぱい。
ですがそのキラキラしたもの、どれも呪い付きなのだそうです。
悪夢の呪い、片頭痛の呪い、猫舌の呪い、いびきの呪い……
ちょっと引いてしまう二コラでしたが、身に着けるわけではないので呪いがあってもOKといえばOK。
そこで、ホームシックの呪いがついているというアクセサリーに目をつけるのですが、そこでにわかに闇バザール全体が騒がしくなってきました!
どうやら兵隊が闇バザールにでやって来たようなのです!!
無粋だな、と言いながらサイモンは買い物を取りやめ、身を隠そうとします。
が、そこで二コラは、さきほどのごちゃごちゃの店の店主が兵隊に取り調べを受けているのを見かけました!
人間のガキが来ただろう、と高圧的に質問してくる兵隊に、店主はと言うと……とっとと消え失せろ、と全く取り合わず!!
闇バザールの住民たちも声をそろえて兵隊に帰れコールをするのですが、そこで兵隊はキレてしまいました!
うるせえ、この害虫どもが!!
そう叫んで、店主を押し倒して壁にたたきつけ、ごちゃごちゃの店をめちゃくちゃにしてしまうのです!!
もう二コラは我慢できません!!
この間に逃げようと言うサイモンに、やだ、助ける、ときっぱり断言!!
サイモンは気持ちはわかるけど何ができるっていうんだよ、と冷静になるよう説得をするのですが……
二コラは何ができるか、を考えるのです。
できることと言えば、花を出す魔法。
ですがそれでは本格的に何にもできません。
と、そこで自分が先ほど見ていた呪いのアクセサリーを持って来てしまっていることを思い出します。
二コラはそれを眺め……そして……兵隊のほうへと駆けだしました!!
そして兵隊に背後から近づき、
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帰れバカっ!と、背後からそのアクセサリーを兵隊に装着してしまったのでした!!



というわけで、魔法の出来ない魔女の二コラが、面倒見のいい悪魔のサイモンと旅をする姿を描いていく本作。
わがままで負けず嫌いで食いしん坊、魔法は一つしか使えない。
そんなちょっと困った二コラですが、その心根はとっても優しく素直な女の子です。
二コラをちょっと皮肉めいた口調でいじりながらも、なんだかんだ面倒を見てくれるサイモンもまたいい人(悪魔ですけど)で、二人の対照的ながら相性バッチリなコンビが各地でちょっとした事件やイベントに遭遇しては、ちょっとしたトラブルを起こしたり、ちょっとしたお悩みを解決したりしていくのです。

魔界ではあるものの、お話に物騒な要素はほとんどありません。
でてくるのが悪魔がらみな人が多いため、毒だのなんだのとワード自体は物騒なものが出てくるのですが、基本的に悪い人がいないのもポイントでしょう!
二コラと魔界の住人たちが心を通わせていく様子を、面白おかしく、そして時に心を温める暖かさで描いていくのです!

本作のほっこりするお話を彩る、宮永先生の絵柄もまた独特で目を惹きます。
トーンやベタをあまり使わず、ペンの線で彩られた暖かな絵柄は本作の雰囲気を増幅してくれます!
印刷されているインクまで若干茶色がかったものが使われていまして、絵面に対するこだわりも本作からひしひしと感じられますよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!