cb0
今回紹介いたしますのはこちら。

「カースブラッド」第1巻 梶山浩先生 

徳間書店さんの龍コミックスより刊行です。


梶山先生は90年代初期から活躍されている、イラストレーターで漫画家でゲームデザイナーです。
様々な作品を手掛けられておりますが、個人的に(一般的にも?)印象的なのは「ドラゴンマスターシルク」、セガサターン時代の「シャイニング」シリーズのキャラクターデザインでしょうか。
「シャイニングウィズダム」は世間的にゲームの評価はいまいちでしたが、個人的には好きでしたねぇ……

そんな梶山先生の最新作となる本作は、前述の作品のイメージに近いファンタジーもの。
その内容はと言いますと……



目を覚ましたキョウコは、あたりの異様さに驚くことしかできませんでした。
自分が寝ていたのは間違いなく自分のベッド。
ですが周りの風景は、荒涼とした荒れ地に、壊れた遺跡のような建物の跡がぽつぽつとたち、真っ赤な空には3つの月が光っているという、到底現実とは思えない世界だったのです。
これは夢だろう、と自分に問いかけるようにつぶやくキョウコ。
そんなキョウコの前に、頭に角の生えた女性が現れました。
あっけにとられているキョウコに、彼女は語りかけてきます。
気をつけて、あなたはパエトーンの娘、女神ヨークの魂を受け継ぐもの、フーカの血脈。
グートに心を奪われないで、あなたが心を奪われるとわたしたちはいつまでも輪廻の闇に閉じ込められたまま。
お願いだから私たちに力を貸して。
……何かのゲームのような、聞きなれない単語ばかりを並べながら、注意とも懇願ともとれる言葉をかけてくるその女性。
その単語の意味の分からなさもあり、キョウコは何も言えずその女性の顔を見つめることしかできなかったのですが……
その時、地面にひび割れができ、何か得体のしれない存在が這い出てきたではありませんか!!
見るからに恐ろしい風貌のそれを見たキョウコはたまらず叫び声を上げるのですが、彼女とその怪物の間に何か激しく光る物体が現れます。
やがてその光の中に、刺青のようなものを体に入れた褐色の男の背中が見えてきました。
まるでキョウコを守るように立つその男……いったい何者なのでしょうか。
その答えを知る前に、キョウコは眠りから覚めてしまうのです。

……が。
どうしたことでしょう。
目が覚めるとキョウコはなんだかものすごいジャングルの真っただ中にいました。
これも夢の続きなのでしょうか?
沖田と思ったけどまだ寝ているのかと不安を掻きたてられるキョウコなのですが、落ち着いて考える暇はありませんでした。
キョウコが立っていた、地面だと思っていたものは……
cb1
羽の生えた巨大なトカゲの背中だったのです!!
……キョウコでもその生き物が、お話の中にしか存在しない、と思っていたドラゴンだと言うことはわかります。
そしてそのドラゴンは背中に立っているキョウコに気がついたものの、特に気にせずそのまま飛び立ってしまい……!!

ドラゴンの背に乗って飛ぶという思いがけなさすぎる体験をすることとなったキョウコ。
いい加減にこれが夢ではないことを認めざるを得ないのですが……ドラゴンに乗って飛ぶ空には3つの月が輝いていることから、あの夢で見た世界である事を理解します。
そしてこの世界には、ドラゴンだけではなく、いわゆるハーピーと呼ばれる鳥人、下半身が馬のそれであるケンタウロスと言った、ファンタジーの世界の住人が当たり前のように息づいていることも……!!
驚嘆するばかりのキョウコですが、ドラゴンはキョウコの事情などお構いなし。
気ままに空を飛ぶ際に体を傾け、背中に乗っていたキョウコは空高くから落下してしまうことになったのでした!!

幸い下は湖になっていまして、キョウコはけが一つなく助かりました。
冷たい水の中からとりあえず手近の陸地に上がりますと……そこには、女性をかたどった石像が飾ってありました。
角のある女性の石像……それはどうも、あの夢の中で語りかけてきた女性のような……?
呆然とその石像を見上げていたキョウコですが、その背後から水音が聞こえます。
水音を立てたのは……両手から鋭い爪のようなものを伸ばした、狼男のような生物だったのです!!
意味の分からない言葉をうめく狼男は、有無を言わさずキョウコに襲い掛かってきます!!
逃げ惑うことしかできないキョウコですが、やがてバランスを崩して倒れ、追い詰められてしまうことに。
こっち来ないで、やめて、誰か助けて!!
最後にできるのは姫と助けを求める声を上げることだけ……
こんな見も知らぬ場所で助けなど来るわけがない。
そう思われたのですが……そこに、狼男の刃を止めてキョウコを助けてくれる人物が現れたのです!!
褐色で、全身に入れ墨のようなものを走らせている男……
cb2
まるで、夢の中で最後に現れたあの男のような人物が!!

……全く別の場所で、一人の女が事態の把握に動いていました。
魔導士マルカ。
キョウコがこの場所にやって来てしまったのは、彼女が部下の幹部格の男に命じてこの世界に「転移」させたから、のようです。
が、何らかの妨害が入り、予定されていた場所ではなく、あのジャングルに転移してしまったのだとか。
すぐにそちらにも追っ手を放った、と幹部格の男は言うのですが……あの狼男のことでしょうか?
部下からその報告を聞いたマルカは……転移させる術を使った部下を容赦なく始末し、その指示をしていた幹部格の男に迫るのです。
cb3
失態を侵した実行者は罰を与え、より任務に適したものを採用する。
問題があれば解決し、障害となるものを取り除いていけば物事は正常に進み始めるものです。
人の社会にも淘汰の理は必要、私は無能な存在は嫌いですよ。
……冷徹で冷酷な女魔導士マルカは……キョウコをこの世界に呼び出してどうしようというのでしょうか。
あの夢の中の女が語ったことと何か関係あるのでしょうか。
……物語は、こうして幕を開けるのです……!!


というわけで、壮大な幻想冒険譚の予感がする物語が開幕する今巻。
最近はやりの異世界転生もの……と言うよりは、ふた昔くらい前に流行った異世界召喚ものと言った感じでしょうか。
それらの作品群に引けを取らない、ものすごい大長編になる予感のする物語なだけに、今巻は物語の導入とでもいうべき内容となっています。
わけもわからにうちに居世界に召喚されてしまったキョウコですが、キョウコの周りには数々の謎が渦巻いています。
パエトーン、フーカ、ヨーク、グート、そしてこの後さらにいくつか出てくる謎めいたワード。
今はキョウコとともに読者も置いてけぼりなその数々の言葉ですが、物語が進むにつれてその言葉の意味がわかり、そしてキョウコに架せられた運命の苛烈さが明かされていくこととなるのでしょう!!
その時が今から楽しみでなりません!!

今巻はその物語の下準備がメインではありますが、その世界観に触れられるのも見どころの一つです。
いかにもファンタジーの世界らしい住民や巨大生物が歩き回るこの世界、梶山先生の情熱がひしひしと感じられる圧倒の描き込みで生き生きと描かれていまして。
数々の怪物や亜人たちが息づいている様に息をのむことでしょう!!
そしてキョウコとともに主人公格となる褐色の男、ソロモンがこの後活躍していくのですが、その戦い方も特殊で面白いのも見どころ。
剣ではなく、魔法とも違う、かといって完全な肉弾戦でもないその能力も使い方が様々想像でき、これからのバトルにも期待してしまいます!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!