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今回紹介いたしますのはこちら。

「ブレインダメージ」 駕籠真太郎先生 

ワニブックスさんのガムコミックスより刊行です。


さて、エログロナンセンス漫画を描き続けてきたかご先生の最新作となる本作。
本作は4つのエピソードを収録した短編集となっておりまして、そのどれもが駕籠先生節の効きまくったお話になっています。
今回はそんなお話の中から、駕籠先生も予想外の展開を迎えることになったエピソード、「呪いの部屋」を紹介したいと思います。



千夏は自分の身に降りかかる奇妙な現象に悩まされていました。
シャワーを浴びていれば、自分のものとは髪質が違う長い髪の毛が絡みついてくる。
閉めたはずの冷蔵庫の扉がわずかに開いている。
着信拒否にしていたはずの番号非通知の電話が着信し、留守電が入っている。
件名のないメールに、何かわからない奇妙な画像が添付されている。
自撮り画像を取ってみれば、何とも言えない奇妙な違和感のある画像になる……
不安になった彼女は、友人の西村に相談します。
西村はそもそも怪しいメールの添付ファイルなんて開いてはだめだと千夏を諭しながら、相談に乗ってくれました。
彼女はそんな添付画像などを持ち帰って知り合いに調べてもらう、と言ってくれました。
不安はありますが、それでもとりあえずは安心した千夏。
ですがそれでも怪現象は止まないのです。
寝苦しさを感じて目を覚ませば、時間は4時44分と嫌な数字の並びの時間。
消したはずのテレビはなぜかついていて、最近は珍しい砂嵐が映し出されていたのです。

その日はそれで終わったものの、西村の報告を聞いて千夏はさらに戦慄することとなります。
非通知の留守電は、解析してみるとなんとお経の声!
メールに添付されていた画像は、画質を調整すると墓地の画像だとわかり……!!
いよいよ不吉な思いを隠し切れなくなった千夏を見て、西村は知人の霊感のある知り合いだと言う小山田と言う女性を連れてきてくれました。
小山田によれば、千夏の住む部屋は霊の通り道になっていて、霊が通るたびに霊障が発生しているから早く何とかした方がいいというのです。
……そんなことを言ってもすぐにどうにかできるはずもありません。
その後も彼女に降りかかる様々な怪現象は続き……そしてある日ついに、決定的な出来事が起きてしまうのです!
それは、西村からこの部屋に過去あったという曰くを聞いた日の夜でした。
なんとこの部屋の前の住人は自殺し、その前の住人は行方不明、さらにその前の人は窓から落ちて転落死、と次々に死者、行方不明者が出た部屋なのだと言うのです!
ショックを受けた千夏は、その夜もまた4時44分に目を覚ましてしまいます。
するとやはりまたテレビがついていたのですが……
そこには砂嵐に混じり、奇妙な表示がされていたのです。
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「明日の死亡者」
「青山千夏(享年21)」
と……!!

そんな出来事が起き、千夏はすっかり弱ってしまいました。
もうダメ、私礼に呪い殺されちゃう。
顔面は蒼白、すっかり体からは生気が抜けてしまっている千夏。
そんな彼女の姿を見て、西村は……ひそかにほくそ笑むのです!!
そう、そうよ、そうやって悩み苦しんで絶望していきなさい。
人の命なんてはかないもの、そのままとことん消耗していくのよ。
そんなとんでもないことを考えている西村!
実は一連の怪現象、すべてこの西村の企んで行ったものだったのです!!
が、だからと言って西村が千夏に恨みがあり、殺してやろうと思っていた、と言うわけではないのです。
何故なら……
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千夏はすでに死んでいるのですから!!

事が起きてしまったのは18年前でした。
何が何なのかわかりませんが、その時から死んだ人間がよみがえると言う怪事件が起きるようになってしまいます。
再生した人間は凶暴化していきている人間に襲い掛かってくるため、やむなく物理的に破壊して対峙していたのですが……
時間が経つにつれ、再生した「対象」がすぐに凶暴化するわけではないことがわかりました。
彼らは最初、死んだことに気が付かず、生きている時と同じ行動をとろうとするのです。
が、その時点で自分の死を認識してしまうと凶暴化してしまいます。
そこで設立されたのが、西村や、あの霊感があるという設定になっていた小山田が所属している事故物件安眠研究所。
再生して記憶などがあやふやになった対象をワンルームマンションのような構造の部屋に生活させ、生前の知人に似た感じの職員が担当につきます。
そしてあの怪現象などを使って、凶暴化しない程度に追い詰めていくと、大将は暗示にかかって徐々に衰弱、そして改めて死んでいくのです。
こうすれば、かつて普通の人間であった人物を再び殺害するという、人道的にも、遺族の心情的にも問題のあった処理をしなくても済みます。
この千夏のように、西村や小山田は様々な対象を処置していったのです。

そんな西村、千夏を終えた後早速次の仕事に取り掛かりました。
今度の対象は、淳子と言う女子高生。
なのですが……
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頭は潰れ、眼球は飛び出し、内臓ははみ出ている、ものすごい状態!!
とある事件に巻き込まれてこうなったのですが、その事故の影響で視覚を失い、聴覚も弱っていまして……
今までで一番しんどい仕事になりそう。
そんな不安がよぎる西村ですが、一体どうなってしまうのでしょうか!?



と言うわけで、どんでん返しが待っているこのエピソードを収録した本作。
怪現象に悩む女性……と思わせておいて、女性は実はすでに死んでいるゾンビだった、と言うそれだけでも十分な急展開が巻き起こるわけですが、この時点で物語はまだ半分なのが本当にすごいところ!
後半ではこの淳子を安らかに死なせるために西村が奮闘することになるですが、淳子の状態が状態なのでものすごく苦戦することに。
そしてその結果に待っているのは……!!
そんな、さらなる驚きの展開が待ち構えているのです!!

勿論このエピソード以外にもとんでもない物語がそろっております。
「4人の迷宮」では、何故かよく似た顔の女性4人が一つの部屋に閉じ込められ、そこで巻き起こる惨劇を描いています。
そのつかみだけで見ると、よく似た女性が集められていると言う点以外は比較的よく聞く感じのお話に聞こえるのですが、そこは駕籠先生。
駕籠先生でなければ描けないであろう、とんでもなさすぎるオチが待っています!!
「家族の肖像」も、忽然と人間が姿を消していく怪事件が展開するのですが、その姿を消す原因となるものがわかってからものすごいことになっていきます!!
ホラーでありながら、とんでもないユーモアをぶち込んでくるこのお話も必見と言えましょう!!
そしてトリを飾る「血の収穫」もまた凄いことに。
渋滞中うたたねをしてしまい、気が付くと周りの車全てがめちゃくちゃに壊れ、助手席に座っていた女性がめちゃくちゃに押しつぶされたような無惨に死体になっていた、という戦慄の展開で幕を開けるこのお話。
謎を探っていくうちに奇妙な共通点がわかり、そこから原因も突き止めていくことになるのですが……
やっぱりこちらもオチが独特!!
4エピソード全て、駕籠先生だからかける、駕籠先生だから許される、ファン納得、読む人によっては何だこれと脱力してしまうエンディングがまっているのです!!!

……ちなみに本単行本のタイトルはブレインダメージ。
つまり脳にダメージを与えるような……そんなお話と、ラストしか用意されていませんのでご注意くださいませ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!