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今回紹介いたしますのはこちら。

「阿修羅ちゃんと修羅場った」第1巻 秀河憲伸先生 

講談社さんのマガジンエッジコミックスより刊行です。


秀河先生は四季賞で09年に佳作、10年に四季賞を受賞し、11年にデビューした漫画家さんです。
代表作は一癖あるキャラクターのホンワカした恋愛を描いた「今日のユイコさん」。
そんな秀河先生の最新作となる本作の内容はと言いますと……?



ああ嫌だ、嫌だったら嫌だ!!
そううめきながら頭を抱える少年、ジロー。
何がそんなにいやなのかと言いますと……宿題でございました。
なんで毎日毎日宿題なんてやらなきゃいけないんだ、と悶絶するその姿……
宿題くらいやりなさいよと皆様はお考えになるかもしれませんが、彼はとある事情がありまして、家の様々な仕事を自分でやらなければいけない身の上。
学校に行った上、毎日の家事やらをして、そのうえ宿題までやらなくてはいけないとなりますと、このくらいうなっても仕方のないこと、なのかもしれません。
いやだいやだ、たとえ地球が滅んだとしても嫌だ!と、物騒な例えを出すくらい追い込まれているジローですが、そんなことをやっていても事態は好転いたしません。
やむなくうなだれた頭を上げ……部屋の掃除を始めるのです!
……追い込まれるとなぜかしたくなってくる部屋の掃除。
現実から目を背けたいからなのかなのでしょうが、ともかくジローもそれにうちこみ始めました。
すると、押し入れの中から懐かしいものが出てきます。
それは……50センチくらいはありそうな阿修羅像。
小学生の時の修学旅行で買ったものなのですが、ジロー少年はだいぶ渋い趣味をお持ちだったようですな……
と、そこで掃除なんてしてる場合ではないと正気に返るジロー。
こんなことしてる場合じゃない、助けて阿修羅様!と、思わず出てきた阿修羅像に助けを求めてしまうのです。
が。
そこで、いいだろう、その修羅場、アタシが解決してやろう、と言う声がどこからともなく響いてくるではありませんか!!
気が付けば、目の前に阿修羅像の顔を大きくしたような形状の巨大な門が登場!!
そしてその門が開いたかと思うと、もうもうと立ち込める煙とともに……現れたのです!!
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チャイナドレス風の服に身を包んだ、かわいらしい少女が!!
戸惑うジローに、彼女は自己紹介を始めます。
アタシは卓上神様阿修羅ちゃん!
修羅場ならアタシにまかせておきなっ!
自信満々でそう語る彼女……本当に神様なのでしょうか!?
数々の疑問が沸き上がるところですが、今のジローに取って最大の問題はそのあたりではなく、今まさに差し迫った宿題です!!
そのことを早速相談しますと、阿修羅ちゃんはやっぱり自信満々に、人間の修羅場などアタシの敵じゃない!特別にアタシが半分やってやろう、と請け負ってくれるのでした!
ところが、古典の動詞の活用の問題のプリントを前にしたところ……
しばしの沈黙の後、
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泣き始めてしまうではありませんか!
もはやノックアウト寸前の阿修羅ちゃん、ジローはすぐに彼女を休ませました。
人間は日々こんな修羅と戦っているのか、とうなりだす阿修羅ちゃん……
ビッグマウスにそぐわぬ体たらくではございますが、ジローは逆にそれを見て反省します。
よく考えたら、他人の宿題をやらされるなんて拷問だよな。
そう考え、無理しなくていいからあきらめよう、と阿修羅ちゃんに優しい声をかけるのです。
が、そこで意外な言葉が返ってきました!!
ばか、宿題しなかったら先生に怒られるだろ!
ジローは修羅場に対する危機感が足りない、ほんとアタシがいてよかった!!
そう言いながら、立ち上がって再び問題のプリントに向かうのでした!!
一生懸命宿題に挑んでくれている阿修羅ちゃん。
そんな姿を見て、ジローはどうしても疑問を感じてしまうのです。
どうして僕のためにここまでしてくれるんだろう、何が目的なんだ?
阿修羅って怖い神様じゃなかったっけ、とにかくあまり怒らせないようにしないと……

思っていたにもかかわらず、ジローはいつの間にか机に突っ伏して眠ってしまっていたようです。
ハッと目を覚まし……何だ夢か、と笑うのですが……
すぐ横で、違うぞと言う声が聞こえてきました。
腕組みしてジローをにらみつけてくる阿修羅ちゃん。
そして、おい、とジローに声をかけ……背中から生えた阿修羅の象徴(?)である手を伸ばしてきたのです!!
命だけは、と身を縮めるジロー!!
ですがそこで阿修羅ちゃんがしてきたのは……優しくジローに毛布を掛ける、という行動だったのです。
寝るならちゃんとフトンで寝ろ、カゼひいちゃうぞ!
そんな声までかけてきてくれ……そして、問題のプリントを手渡して来ました。
問題のプリント……全部解いてあるではありませんか!
修羅場破れたり!と笑う阿修羅ちゃん!
アタシは帰るからなと阿修羅像の中に引っ込もうとする阿修羅ちゃんに、ありがとうとお礼を言うジロー。
阿修羅ちゃんは、
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とってもいい笑顔でどーいたしまして、と返し、阿修羅像の中に帰っていくのでした。
その笑顔にほのかな胸の高鳴りを感じてしまうジロー。
これは阿修羅像を特等席に飾ってあげないとな。
そうつぶやきながらプリントを片付けようとするのですが……
そこで……プリントの裏面の問題がまるで手付かずなことに気が付くのでした……!



と言うわけで、キュートでちょっぴりドジ、そしてとてもいい子な阿修羅ちゃんとジローの毎日を描いていく本作。
この後ちょっとしたイベントがありまして、阿修羅ちゃんは正式にジローと一緒に住むこととなります!
ジローは今、この家に一人暮らし状態(暗い事情ではないです!)。
そんな寂しく忙しい彼のもとにやってきた阿修羅ちゃんは、ジローの修羅場を解決するために日々頑張っていきます!!
が、阿修羅ちゃんはまじめでいい子なものの、人間の風習に疎い所があったり、ドジをしてしまったり、ポンコツだったりと……いろいろちょっとした事件を起こしてしまいます。
ですが、彼女の頑張りやいい子ぶりはこれでもかと言うくらい登場人物や、読者さんのほうにも伝わってくるので大丈夫!
ジローを含めたみんなが彼女を温かく迎え入れてくれます!
そして阿修羅ちゃんも決めるところでは決めてくれる、と言うのも見どころの一つ。
基本的にあまり修羅場を解決できない彼女ですが、その心根の優しさは本物です!!
しっかりとジローのことを考え、さりげなく(?)気を使ってくれるそのいい子ぶりは必見!!
個人的に今巻の最大の見どころは、一人暮らし状態だったこの家にある人物が返ってくるエピソード。
そこで見せてくれる阿修羅ちゃんの心遣いはもう……胸にこみ上げてくるものがありますよ!!
可愛いだけではない阿修羅ちゃんの麗しきお姿を、是非ともご堪能ください!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!