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今回紹介いたしますのはこちら。

「累」第12巻 松浦だるま先生 

講談社さんのイブニングKCより刊行です。


さて、野菊が脱走してしまい、累もまた姿を消した前巻。
母の幻を追って放浪を続けた結果、累はとうとう母の最期の言葉を思いだしだのでした。



自力で母・透世ゆかりの地にたどり着いた累。
そこには、羽生田が待っていました。
その地にはもはや何一つまともなものは残されておらず、累に関しての情報を得るには羽生田の口からきくほかありません。
累は特にそのことに関して何の感情も抱いていないかの如く、静かに受け入れるのです。

透世は、ある舞台の講演を前に姿を消しました。
羽生田はその直前の透世の姿と、累の姿がどうしてもダブって見えてしまいます。
あの時のように、突然ふらりといなくなり、二度と自分の前に姿を現さなくなってしまうのではないか?
そんな不安がどうしてもぬぐいきれず、累から目を離すことができなくなってしまうのです。
そうしてともに行動することになった二人。
羽生田の求める、自分の作り上げた舞台を累に演じさせるという夢を実現するためには、まず野菊を見つけて咲朱の復帰をするのが近道でしょう。
ですが野菊は戸籍すらない人物。
じっと息をひそめて暮らされていれば、そう簡単に見つかるはずもありません。
羽生田は野菊の「客」を当たっていって、地道に捜索をしようとするのです。
そんな時のことです。
羽生田のもとに、こんな連絡が入ったのは。
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事務所に、咲朱が現れた。

間違いなくその正体は野菊でしょう。
野菊は応対した人物に、こう言い残して忽然と消えてしまったのだそうです。
星詠む夜、本当の姿で初めて会った場所、私はそこにいる。
……羽生田も累も、これは罠だろうと確信します。
累たちが野菊の顔を欲しているのを見越して、危険を冒してまで呼び出そうとするのですから。
累はその台詞めいた言葉の指し示す場所を、野菊と自分が初めて対面した鎌倉の海辺で、夜に待っている……そう言うことだろう、と予想して羽生田に告げました。
そこで羽生田は、その誘いには乗らず、自分一人でそこに誰が待っているのかを確認するという作戦を提案してきます。
累は大人しくそれに従い、羽生田の用意した部屋で待つことになったのですが……

羽生田が去っていったのを見計らい、累は立ち上がります。
累が向かったのは……とある学校の、体育館でした。
そしてそこに……野菊は現れます。
星詠む夜、などと言う過剰に私的な言い回しは、野菊らしくない。
その言葉は野菊の口を借りた、幾の言葉だろう。
そう考えて、累は幾と出会ったあの体育館にやって来たのです。
案の定そこには、野菊と累が待っていました。
ここは累と行くが初めて会い、そしてジョバンニの役を通して星を詠んだ場所。
そのことは羽生田は知らないわけで……できるだけ累一人で来るよう確実性を増した場所を指定してきたわけです。
累は、野菊に殺されてしまっても構わないとすら考え、一人でここにやってきました。
が、その前にとこんなことを言ってきたのです。
殺すつもりなら少し待って、大事な話があるの。
羽生田さんがいないのは都合がいいわ、信じてもらえるかわからないけど……
そこまで行ったところで、真っ暗だった体育館に電気がつけられました。
羽生田です。
戻ってきてからの累の様子がおかしい事を木にかけていた羽生田は、一人で待ち合わせ場所に向かったと思わせた後、ひそかに累の後をつけていたのです!
今まで様々なことをしてあげたにもかかわらず、自分を裏切るかのような行為に激昂する羽生田。
ですが累は、羽生田の舞台には野菊の顔で出る、とはっきり答えて見せました。
が、その後とんでもないことを言って見せたのです。
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それで最後にする、口紅を使うのも、舞台に立つのも。
……もちろんそんなことを言われても、すぐに配送ですかとは信じられません。
戸惑う一同の前で、累はさらにダメ押しの言葉を告げて見せました。
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「交換」の主導権を、あなたに譲る、と……!!



と言うわけで、最終章が本格的に動き出す今巻。
累が思い出した母の最期の言葉は、一体何だったのでしょうか。
その言葉を知るのは今や累本人しかおらず、想像することくらいしかできませんが……
どちらにしろ、あの累をここまで変貌させる力を持ったものであったことは間違いないようです。
明るい陽の下の世界に暮らさせてやりたいという母が最期に残した言葉。
その母の言葉を知らないまま、累を明るい世界の住人にしようと手を尽くす羽生田。
闇の中で生き続け、揺れ動く野菊。
そんな中で、物語の鍵を握る存在となりつつある幾……
それぞれの思惑は複雑に絡み合い、物語は一つの結末に向かって一気に進んでいきます!!
この累の要求と言葉を受け入れれば、次の舞台が終わったときに物語もまた終わるはず。
ですが、そう簡単に物事が進むはずもなく……!!

物語はクライマックスへ一直線。
全ての謎を解き明かすことになりそうなものの存在も明かされ、あと1巻か2巻で完結しそうな状況になってきました!!
果たして物語はどんな結末を迎えるのか!
ここまで来たら、もはや最後まで見守るしかありません!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!