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今回紹介いたしますのはこちら。

「狭い世界のアイデンティティー」第1巻 押切蓮介先生 

講談社さんのモーニングKCより刊行です。


さて、着実に復活の道を歩いている押切先生。
そんな押切先生の最新作である本作は、少し前からはやり始めた(?)漫画家漫画です。
が、そこは押切先生、単なる漫画家の奮闘を描く物語ではなく……?



時は年末。
どこも忘年会を催すシーズンですが、出版大手のここ、件社でも謝恩会と言う名の忘年会が催されていました。
ずらりと並ぶ豪華料理、ビンゴ大会で配られる豪華な賞品、来場するグラビアアイドルやアイドル声優……
その豪華な品ぞろえを前にして、招待されていた中堅漫画家は色めき立ちます。
寿司か、ビースステーキか。
大御所作家のサインか、自分の認めた作家との交流か。
はたまた美しい異性との出会いか……
めったにない交流の場に、彼らの目の色は自然と変わっていくのです!
そしてそれは、大御所作家でも変わりません。
自分が積み重ねてきた実績を、ダイレクトに感じることができるこの機会もまた、めったにないことなのですから!!
線の集合体で織りなす「漫画」と言う芸術でのし上がってきた兵達が集まるこの宴。
この宴に「凡人」はただ一人としていないのです!!

そんな場所にやってきた少女、神藤マホ。
彼女は件社の漫画賞で佳作を受賞した、新人です。
受賞者のあいさつがあるとのことで、彼女もまた招待されたわけですが……実は彼女、漫画で成功するという以外に目的があったのです。
かつて、彼女の兄がこの件社に漫画の持ち込みに来ました。
どんな方法なのか、どんな相手なのかはわかりませんが、その際に彼女の兄は件社ビルの上階から落とされ、串刺しにされてしまいました……
その人物が誰なのか。
まったく手掛かりはないのですが……この中にその人物がいることだけは間違いありません!!
付け焼刃で覚えた漫画で佳作を受賞し、ようやくその張さのスタートラインに立ったマホ……
彼女は握りこぶしを固め、こう決意したのです。
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見つけ出して、この手で百裂きにしてやる、と!!

犯人は編集者か、居合わせた漫画家か?
目を光らせながらあたりをうかがっていますと、壇上ですさまじい催し物が行われていました。
なんと、今年打ち切りになった作家がはりつけにされて見せしめにされているのです!!
しかも来場していた客たちは、その作家たちに罵声と、わざわざ用意されていたパイをぶつけるという追い打ちをくらわすという、屈辱の追い打ちまでするのです!!
こうして作家たちに駄作を生み出させないように恐怖を植え付け、より両策を生み出させようとするこの様……
件社の貪欲なビジョンが見て取れます!!
ですが貪欲なのは作家のほうもまた同じ。
マホと同じ、新人賞を受賞した新人が一人、麻帆に声をかけてきました。
なんと彼女、100万円をちらつかせ、これで受賞を辞退してくれないかと言いだすのです!!
ライバルが減れば減るほど、自分が成功するチャンスが増える。
そう考えての行動らしいのですが……
もちろん、漫画界での大成が目的ではないマホが辞退するはずもなく。
貴女とは誌面で相見えることになりそうね、と言い残して、新人は去っていくのです。

そして、新人の授賞式の時がやってきました。
8人いた受賞者でしたが、例の100万円で3人の辞退者が出たため、壇上に登ったのは5人。
その5人が今後の意気込みを語ることになりまして、まず最初に例の100万円の新人が挨拶を始めました。
その最中、並び的に4番目に意気込みを語る予定の新人の男がぼそりとマホを含む他の4人にこうささやきました。
夜道には気を付けろ、連載するのは俺だ、連載用のネームなんか描いたら、住所を探って毎日嫌がらせをしてやる。
……バイオレンスな発言をした彼ですが、2番目に意気込みを語った新人も、心の中ではとんでもないことを考えています。
二次会の席で4人の酒に猛毒を入れてやる!
そして100万円女も、編集を買収して全員引き摺り落とす、などと考えていまして……
まさにストロングスタイル、新人と言えども一切の容赦はない様子!!
そんな中で、マホが意気込みを語る順番が回ってきました。
その発表で……ほかの新人たちのそのたくらみが、生易しいものだったことがわかってしまうのです!!
私は、消去法で行動したいと思います。
まず、この4人を蹴落とします。
この4人が至近距離に集まるチャンス、そして私の立ち位置が中央なのも幸運でした。
この毛落とし合いの世界で生き残るには、漫画力だけでは足りません。
暴の力で、この業界を邁進したいと思います。
……ほかのメンバーは、一応口ではまともな意気込みを語っていたというのに……いきなり何を言うのでしょうか。
びっくりする他の4人ですが、直後
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マホの鋭い拳がアゴを捕え、彼らを卒倒させたのです!!
が、一人だけその拳を受け止めている男が!!
マホの殺気をビンビン感じていたとのことで、すぐに反撃を試みるものの……
その男が受賞したのは、努力賞1万円。
その程度の力では、マホを倒すことはできず……あっさり撃破されてしまうのです!!

そのとんでもない様子を、モニター越しに「編集王」なる謎の男が見ていました。
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そして、暴の力で邁進するというその言葉は、業界を見極めた素晴らしい言葉だと称賛!!
今後が楽しみだとしながらも、この世界の何百、何千と言う新人作家が跋扈し、気を抜けばたちまち食われるルールの厳しさを潜り抜けられるかとも問いかけ……!!

こうして、物語は始まるのです。
血を血で洗う漫画界の地獄の闘争。
編集王の黒い野望。
そして、マホの復讐劇が……!!



というわけで、なんにでもバトル要素を盛り込むという押切先生の得意技(?)の一つがさく裂する本作。
この後も、漫画家残酷物語と言った感じのストーリーとともに、はげしい圧を感じさせるバトルが繰り広げられていくことになります!!
兄を突き落とした犯人を見つけるために手っ取り早いのが、件社の信頼を勝ち取ること!
ですがそのためには人気作を生み出すという方法のみならず、件社の求める仕事もこなさなければなりません!!
憎き敵の傀儡となりながら、その先でマホは何を見るのか!!
情熱を傾ける漫画家の生き様、その漫画化を処分する出版社の刺客、謎多きマホの力の源……
様々な謎と、様々な血と汗と涙が飛び散る本作……
これは漫画家漫画なのか、復讐バトル漫画なのか、そのどちらでもあるのか!?
答えは今後の展開の中にある、のでしょう!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!