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今回紹介いたしますのはこちら。

「BOX ~箱の中に何かいる~」第2巻 諸星大二郎先生 

講談社さんのモーニングKCより刊行です。


さて、奇妙な「箱」の館の中で、不思議な体験をしながらパズルを解き、脱出に挑戦する羽目になってしまった光二達。
正式に館に招かれた7人と、興味本位で首を突っ込んできた謎の女、興子の8人で挑んだこの脱出ゲームめいた探索ですが、中は明らかに異様で、脱落者も出てとうとうプレイヤーは5人にまで減ってしまいます。
案内人らしい怪しい少女や、得体のしれない化け物がひしめくこの空間から、一体何人が無事脱出できるのでしょうか……?


館を脱出するためには、パズルを解いた証であるカードを、参加者全員分持っていなければならない。
とりあえずの行動の指針を得た一同は、谷夫妻の入った「箱」を押しながら、新たな部屋へと入っていきました。
そこは小さな箱が無数に組み合わされて壁や床になっている巨大な迷路のような空間で、道も壁も凸凹で谷夫妻の箱をはこぶのも一苦労です。
しかも、道も幾重にも分かれていまして……
分かれ道に差し掛かると、まず甲田が二手に分かれようと一人でさっさと違う道へ行ってしまいました。
あいつ箱を押すのが嫌になったんだな、と毒づいていた残りの光二達三人ですが、またすぐに分かれ道が見えてきました。
やむなくいったん谷夫妻の箱をこの場に起き、また別行動をとることになりました。
惠と智恵子が二人で、光二は一人で別々に探索を開始。
妥当なチーム分けと言えますが……めぐみは正直、不満そうな表情を見せるのです。

二人で探索中、智恵子は惠に尋ねてきました。
本当に男の子か?
……だしぬけにされたその質問に、決まってるじゃない、と眉をひそめて答えるのですが……智恵子はさらに食い下がってきました。
私は霊感もあるけど勘も鋭いんですよ、あなた秘密持ってません?と。
とはいえ、秘密を持っていない人なんてどれくらいいるでしょうか。
智恵子が言いたいのは惠の秘密の内容についてではなく、この館に集められた7人には全員なにか秘密を持っている、ということの様。
ちなみに智恵子は、この霊感がみんなの持っている秘密に当たるんだと主張しております。
そうなりますと、惠は光二の秘密に俄然興味が出てくるのですが……智恵子は何となく、秘密と言うほどのものではないが、深刻な問題を抱えているようだ、と察知している模様です。
が、それは惠たちが尋ねて聞くようなものではなく、光二本人から話してくれるまで待つべきものだとも言うのです。
なんだか知った風な口をきく智恵子に、惠は面白くないようで……
智恵子こそ問題は霊感だけなのか、そのですます口調は人を馬鹿にしてるみたいに感じるが、自分を守ろうとして壁を作っているんじゃないのか、と反撃を試みます。
しかし智恵子は悪びれもせず、そうかもしれません、私って弱い女なんです、と言いだしまして。
霊感なんて隠そうとしても出てしまって変な目で見られるから、人とは距離を作っておいたほうが楽です。
その説明は確かにある程度筋は通っているようで、惠はとりあえず頷くしかないのでした。
そんな惠に、再び智恵子が攻めてきます。
光二さんにべたべたしすぎじゃないですか、と。
光二は谷夫妻の時も手伝ってくれたし、頼りになるし……などと言っている惠に、ど真ん中ですか?と合いの手のように質問する智恵子。
その抜群のタイミングに、思わずうんと答えてしまう惠……!
何だよ、変な意味じゃないよ、と照れ隠しに軽く智恵子の肩を押しますと、智恵子は何でどつくんですかとめぐみの背中をたたき、どついてなんかないだろと少し強くめぐみは押し返し……
そうやってるうちにエキサイトしてしまい、智恵子は両手でめぐみをドンと突き飛ばしてしまいました!
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壁に激突してしまう惠ですが、この辺りの壁はどうにももろいようで、惠の体重を支え切れず壁に大穴が開いてしまいました。
その大穴の先には隣に伸びていた通路がありまして、そこには……件の光二がいるではありませんか!
なんだかバツの悪い二人ですが、怪我の功名と言えましょうか、合流することはできました。
そのまま合流して道を進みと、ようやく次の部屋に続いているらしい扉が見えてきます。
その扉の前に行きますと、別ルートを言っていた甲田もやってきまして……結局どの道を歩いてもこの扉にたどり着くようになっていた様子。
弄ばれてしまった感じではありますが、とりあえずゴールはゴール。
扉を開こうとしたものの……予想通り開きません。
今までの扉通り、何らかのパズルを解かなければいけないのでしょうか?
ですがメンバーの中でまだ解けていないパズルは、甲田の持っている得体のしれない箱だけ。
解き方はさっぱりわかりませんし、智恵子の霊感によればこの箱はまだ関係がない気がする、と言うことで……もう一度考え直してみることになりました。
そこで、惠があることに気が付くのです。
今まで、次の部屋に進むための扉は、何かのパズルを解くことによって姿を現し、事前にひらいていた。
ですがそれ以外の最初から見えている扉は、なぜか光二しか開けることができなかった……
つまりこれは、この扉の開け閉め自体がパズルなのではないか?と!!
そのことを言いた光二は考え込み……気が付きました!
これはあれだ、俺のところに来たパズルの、箱根細工だ!
あれを開けたときと同じだ!!
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箱根細工の開くまでの手順と、今まで開けてきた扉の開き方の手順。
スライドさせたり、上にあげたり、横に動かしたり、一度開いたのを閉じたり……
二つの手順が、きっちりと合致していたのです!!
そうなると……次の部屋に向かう扉を開くために必要な手順は、上にあげて開いた扉を、下げて閉じること。
そうすれば次の部屋へ行くことができるのですが……そのためには、あの化け物だらけになってしまった前の部屋に戻らなければなりません!
光二は一人で戻る決意をします。
その前に、谷夫妻の箱を次の部屋の扉の前に動かして置こうということになったのですが、生きているか死んでいるかもわからないような状態の谷夫妻が不意にはこの扉をわずかに開き、杖を差し出してくれました。
どうやら、せめて武器代わりにこの杖を持っていってくれと言うことのようです。
まともな武器も用意できないこの状況、何もないよりははるかにマシというもの。
ありがたくその杖を拝借し……化け物だらけの部屋に戻る扉の前へと向かいました。
そして、光二は二人にこう告げます。
俺が入ったらこの扉は一度また閉めろ、
そして5分後にまた開けろ、それまでに二つ前の扉の所まで行く。
その後は俺が戻るまでどこかに隠れるなりして頑張れ、できるだけ早く戻るからな!
頷く二人を確認すると……扉を開き、
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顔をのぞかせた化け物を蹴飛ばして杖でふっとばし、中へと突入!!
二人はすぐに扉を閉め……光二の決死行が始まったのです!!



というわけで、新たな展開を見せる今巻。
一人化け物ばかりの部屋に突入した光二、その作戦を成功させることができるのでしょうか?
一見安全に見える惠と智恵子ですが、二人もこのまま待っているだけで済むはずもないでしょう。
時折何か妙な反応を見せたり、何よりも光二たちにあまり協力的ではない自分本位差が目立つ甲田の行動も問題を引き起こすことになっていきそう。
果たしてこの部屋は、犠牲者を生まずして通り抜けることができるでしょうか……

単独行動をしていた興子のほうも、なかなか大変なことになってきます。
彼女を敵視する魔少女もいますし、様々な出来事に直面するわけですが……何といますか、興子ならば何が起きても大丈夫な感じもあります!
光二と並ぶ主人公と言っていい彼女の行動も注目しなければいけないでしょう!!

深まる謎、激しいアクション、様々なギミックが用意されたパズル、交錯する思惑、時として容赦ない鉄槌の下される展開。
どこをとっても見どころ満点な本作ですが、諸星先生ファンとしては何よりも注目したいのがキャラクターの掘り下げ具合でしょう!!
正直いって諸星先生作品では、キャラクターは舞台装置の一環のようなもので、あまり強烈な個性を持つ人物、と言うのはいませんでした。(「栞と紙魚子」シリーズのキャラくらい?)
そんな諸星先生作品としては珍しく、本作では惠や智恵子と言った強烈な個性を持ったキャラクターが用意されていまして、しかも恋愛要素めいたものまで入れ込んでいるのですから驚きでしょう!!
今巻ではっきりと明示される惠の秘密と、それを知った光二の反応もまた……思い切りましたね諸星先生、と言わざるを得ますまい!!
さらにちょっと驚いたのが、今巻のおまけです!
内容はぜひともご自身で確認してほしいのですが、まさかの智恵子の日常を描くキャラ掘り下げ系のコミカルなおまけ漫画が2本、4P収録されているのです!!
本編でも智恵子はところどころ気合の入った作画がされている気がしますし……
まさか諸星先生、本気で萌えを狙ってらっしゃる……!?
謎多きお話の顛末とともに、そっち方面も超注目ですね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!