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今回紹介いたしますのはこちら。

「コロコロ創刊伝説」第2巻 のむらしんぼ先生 

小学館さんのコロコロアニキコミックスより刊行です。


さて、のむら先生現在の生活を描きつつ、コロコロコミックが上り詰めていったあの時代を振り返っていく本作。
のむら先生の再起と、伝記的な物語という二つの側面を描いていくわけですが、やはりメインはコロコロの過去を振り返っていくエピソード。
今回も様々な出来事を描いていくわけですが、その中で個人的の思い入れのあるある作品の隆盛を描いたエピソードを紹介したいと思います!



1981年の3月に、95万部発行と言う絶頂に達したコロコロコミック。
ですがライバル誌の台頭や、大ヒット作品が生まれなかったこともあって、部数はじりじりと下降の一途をたどっていきました。
のむら先生の出世作である「とどろけ!一番」が打ち切りになった1983年の5月には、その発行部数はピークの半分、47万部にまで落ち込んでしまい……
当然編集部は重い空気に包まれている……と思いきや、意外に楽しそうな声が漏れ聞こえてきます。
自身が手掛ける雑誌のピンチだというのに、編集者たちは何が楽しくて喜んでいるのでしょうか?
その答えは……当時発売されたばかりだった、ファミリーコンピューター、フェミコンです!
取材と称してか、プレイに熱中している編集者。
編集長が部数の低下に頭を悩ませているその時も、ゲームに熱中していたわけですが、そこに時々編集部に遊びに来るという子供たちが入ってきました。
そしてその子供たちは、編集者と一緒美ゲームで遊び始めます。
子供には負けないぞ、と息巻いて「ベースボール」で対戦を始める編集者。
ですが結果は、逆転満有為ホームランを打たれての敗戦!
このままでは引き下がれないと、別の編集者がコロコロ編集部の名誉にかけてとリベンジマッチに挑むのですが、またも逆転負けを喫してしまうのです。
そんなやり取りを見ていた編集長はひらめきました。
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そうか、子供が大人に堂々と勝てる世界……それが、ゲームの世界!
これは子供たちが夢中になるぞ!!

すぐさま開かれた編集会議で議題に上ったのが、ファミコンを題材とした漫画の立ち上げです。
編集長が担当編集に指名したのは、やる気ならだれにも負けない編集者、黒田!
大抜擢された黒田は、俺にやらせてくれるのか、必ずや面白いものにする!と、やっぱりやる気満々!
なにせ黒田はコロコロ編集部で最もファミコンに熱中していると言ってもいい男、普通の漫画の担当でも興奮するというのに、それがファミコンがらみならばもうそのやる気は倍増するというものです!!
……とはいえ、フェミコンを題材にした漫画、と言ってもどうすればいいのやら。
黒田はその答えを、偉大なゲーム漫画の先駆者に求めることにしたのでした!!

やってきたのは、すがやみつる先生の仕事場でした。
すがや先生と言いますと、あの「ゲームセンターあらし」で一世を風靡した、ゲーム漫画のパイオニア。
すがや先生に連載をお願いしたいと黒田は頼み込んだのですが、すでにすがや先生は「あらし」にかかりきりでもう一本連載する余裕はないそうで……
ですが自分を頼ってきた編集者を無碍に追い払うのははばかられたのでしょう、一人のアシスタントに声をかけたのです。
すがや先生に指名されたアシスタントは……まだ22歳の、まだまともに漫画一本を描きあげたこともないというひよっこもひよっこ、あさいもとゆき先生でした!
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しかしすがや先生は知っていました。
あさい先生は「まともな漫画」を描きあげたことはないものの……ファミコン発売と同じ月から放送された某魔法少女アニメの、エロスな同人誌でひと稼ぎしていたことを!!
黒田も、まだ一本も漫画を描いていないという方に食いつきます。
ファミコンと言う新しい世界には、新人と言う新しい才能!
君に賭ける!と、黒田は第1話で取り上げようとしていたファミコンカセット、「F1レース」を手渡すのです!
……が、所詮いちアシスタントにすぎないあさい先生、ファミコン本体を持っていなかったりするのでした!!

黒田はあさい先生にファミコン本体をプレゼントし、さらに打ち合わせもガンガン行っていきます。
打ち合わせで映画から名前を拝借してタイトルを「ファミコンロッキー」に決め、漫画に活かすため「F1レース」を連日プレイ!
このゲームの売りである時速400キロの速さを体験し、だんだんと見えてきました。
その見えた物を頼りに、ひたすらネームを進めていくあさい先生!!
1週間の苦闘の末生み出したネームを黒田のもとへと持っていきますと……返ってきたのは、なんか地味、と言う感想でした。
ネームでは、「F1レース」の時速416キロまで加速すると一気に490キロになるという攻略法を活かし、それを使って主人公がライバルに逆転勝ちする、というもの。
無難にまとめ上げたと言えるその内容……漫画として、コロコロの漫画としては「熱さ」が足りないのです。
コロコロ漫画の基本は、「ガッツな笑いとド迫力」じゃないか!
そう言って、二人でどうやれば子の漫画をより熱くできるのか考えるのですが……
そこでふと黒田が思いついたのは、マックス496キロのこのゲームの限界を超えた、音速越えのスピードを出せばいいんじゃないか!?というものでした。
ですが当然そんな要素はゲームの中には存在しません。
全国に発表する漫画で、嘘をつくことになってしまうわけですが……
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ゲームでは無理でも、漫画ならできる!と、黒田はその作戦にゴーサインを出すのです!!
そしてその発想をきっかけに、漫画の全体像も決まってきます。
珠信仰はゲームの天才児、どんなライバルも死闘の末に編み出した必殺拳で打ち勝つ!!
子供たちも自分が夢中になっているゲームに、さらに思いもよらない世界があるとしたらわくわくするはずだ!と!!

こうしてあの名作、「フェミコンロッキー」は誕生しました。
そのゲーム内に存在しない技の数々はいまだに語り草になっていまして、「ゼビウス」で画面を埋め尽くすほどの敵が登場するとか、「スターフォース」のゴーデスの謎には続きがあったとか、有名なところでは「スパルタンX」で24周すると最後はシルビアが襲い掛かってくる、なんてものがあったり……!
最終決戦では血まみれになるわ、激しすぎる戦いで目が見えなくなるわともうファミコン漫画の範疇を超えたスポ根漫画的な作品となっていました!!
あさい先生の副業(?)をいかし、登場する女の子のサービスシーンも盛り込まれていたのも人気の一員だったのかも……
ともかくこの大ヒット作の登場は、コロコロ復活の狼煙となったのでした!!



というわけで、「ファミコンロッキー」の誕生のエピソードを描いたエピソードを収録した本作。
「ファミコンロッキー」は個人的に超好きな漫画でして、いろいろ語りたいこともあったりなかったりするのですが……そこはそれ!
人気作の誕生に隠された秘話を興味深く読めるはずです!!
ちなみにこの後あさい先生とのむら先生の対談も収録されるなど、盛りだくさんの内容になっていますよ!!
このほか、「超人キンタマン」にまつわるお話や、高橋名人の誕生のお話、レトロゲームのムックに描き下ろされた作品の収録、そしてのむら先生の転機の一つとなる「とどろけ!一番」の打ち切りの時の話を描く注目のエピソードも掲載されています!
さらに「とどろけ!一番」の運命を決したボクシング編をのむら先生のコメント付きで再録したり、テレビン番組の企画用に描かれた4コマ漫画を収録したり、対談なども収録されたりと実に内容は充実!!
その上、かつての盟友、たかや健二先生に捧げる作品10Pも描き下ろされておりまして、様々な面で見どころばかりなのです!!

のむら先生の復活劇とコロコロの長い戦いの歴史。
どちらも目が離せない本作、今後の展開も楽しみですね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!