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今回紹介いたしますのはこちら。

「アイアムアヒーロー in NAGASAKI」 にしだけんすけ先生 

小学館さんのビッグスピリッツコミックススペシャルより刊行です。


にしだ先生は16年に本作でデビューした漫画家さんです。
現在は週刊スピリッツで「ジャガーン」を連載されている新進気鋭のにしだ先生が挑む、話題作のスピンオフは、先生の地元である長崎を舞台にした作品となっています!


見晴らしのいい山から、街を見下ろしている少年、山田。
彼はその絶景を見下ろし、写真を撮ってはにやにやと笑っていました。
夕焼けも撮りたいし、ここでのんびりしようとその場に腰かけた山田でしたが……ちょうどその時、ハイキングか何かの三人組の若者が談笑をしながらその場にやってきました。
彼らは山田のことを特に何とも思っておらず、山登り特有のすれ違いざまのあいさつをしてスルーしていくのですが……山田は勝手にその三人組の、心の中で考えている胸の内を想像し、自分の悪口を言っているという妄想をしてしまい……その場から逃げ出してしまうのでした。
その三人組は、山田が逃げ出しても全く気にしていません。
山田のことをただのなんでもない人と見ているのももちろんですが……眼下に広がる町の一角から、火事のそれらしい煙が立ち上っているのが見えたから、なのです。

その街の中のとある高校では、弓道部が練習に精を出しております。
その中で特に目を引くのが、スポーツ推薦でこの学校に入った少女、楡井です。
昨年インターハイで優勝した彼女ですが、今年の連覇も楽勝じゃないかと部員たちは囁いているぐらいの仕上がりを見せる彼女。
ですが彼女は、友人の可奈子が遅いことを心配していました。
すると部員の一人は、冗談でこんなことを言いだします。
もしかして、感染した?
……巷で噂の、「ZQN」。
まだその災禍が降りかかっていないこの長崎でその話題はまだ冗談か何かとしか受け止められず、楡井はそんなのいるわけないじゃん、と怒り出すのです。
そうこうしていると……突然、学校中に非常ベルの音が鳴り響きます。
どうやら火事か何かが起こった様子。
今一つ危機感のない一同は、どうするか、普通は逃げるだろう、などとのんびりこれからのことを話し合っていますと……そこに、可奈子がやってきたのです。
ですが可奈子、弓道場に入ってくるでもなく、扉の前で仁王立ちしていて……?

そのころの山田は、路面電車に乗って今日撮った写真を吟味していました。
写真が趣味の彼ですが、今日は会心の写真も取れたようで。
これはMVPだろう、とにこにこ笑いながらその写真を眺めていたのですが……美しい背景の中に、人影が見切れてしまっていたことに気づくと、すぐにその笑顔は曇ってしまいます。
そして先ほどまで改心だと思っていた写真をあっさりと削除してしまうのでした。
そんな人間不信の彼が、目下の楽しみにしているのがお小遣いを貯めてようやく手が出る存在になった「軍艦島ツアー」への出発。
そのチラシを見て笑顔になる山田でしたが、再びその笑顔は曇りだします。
一瞬脳裏をよぎった、過去の記憶。
子供時代に友達とした、軍艦島に一緒に行こうという約束。
その友人との思い出が、彼のこの人間不信の原因の一端を担っているようですが……?

そんなときでした。
山田の近くに座っていた女性が、窓を見てあれは何かしらと首をかしげたのです。
気になった山田がその女性が見ていた方向に視線をやりますと……
なんと言うことでしょうか。
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旅客機が、煙を上げながら墜落していて……街の真っただ中に墜落してしまったのです!!
当然街はパニックになっているようで、隣に座っている女性は携帯でニュースを見て怖いわね、と山田に話しかけてきました。
この状況でもあまり危機感のない女性は、山田に向かって世間話をし始めます。
東京で行われているという細菌テロ、長崎だから大丈夫と思ってたけど、よく考えたら感染した人が飛行機に乗ってくるかもしれないのよね。
そう言えば君、学生さん?
うちの子も高校生なんだけど、今は反抗期真っ盛りで、今朝なんて噛みつかれたのよ。
怖い怖い……
おばさんも腹の中では、自分のことを悪く思っているのではないか。
そう思うと、山田はその場から逃げ出したい衝動に駆られてしまうのですが……
直後、そのおばさんの様子が異常なものとなるのです。
怖い怖い、と言っていたのは、寒い、サムイ、暑い!などと口走り、自らの服を引き裂いたではありませんか!!
そして大口を開け、山田にかぶりつかんとしたのでした!!
あまりにも予想外の出来事に、呆然としたまま動けない山田。
このまま餌食になってしまうのかと思われたその瞬間です。
おばさんの頭部を、一本の矢が貫いたのは!!
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その矢を放ったのは……楡井でした。
電車の中は、目の前で起きた……言わば殺人の光景を見せつけられ……静まり返るのですが……
楡井は、助けた人物が誰かを知らなかったようですが、その姿を見ると、山田だとわかったようです。
実は高校を中退していた山田ですが、クラスメイトか何かだったようで楡井は山田のことを覚えていました。
が、山田のほうは、すぐには思いだすことはできません。
とはいえ楡井は目立った生徒でしたので、ほどなく思いだすことはできました。
が、再会を喜び合う暇などはありません。
すでに電車は、
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ZQNに取り囲まれていたのですから……!!



というわけで、長崎を舞台にしたスピンオフが描かれる本作。
長崎の街を舞台にZQNパニックが巻き起こるわけですが、メインとなるのは山田が目的としていた軍艦島!
無人島である軍艦島ならばZQNの魔の手も伸びてこないだろうと考えて、山田と楡井はこの後そこへ向かうこととなるのですが……
もちろんそう考えるのは彼らだけではないので、そこまでの道のりも生半可なものではありません。
厳しい道のりを強いられるうえ、そ戸でであるある人物がとんでもない男で……?
軍艦島への道と、軍艦島での異常事態。
様々な恐怖と絶望が訪れるこの長崎の地で、山田と楡井は生き残ることができるのでしょうか?
さらに問題なのは、山田の人間不信です。
どんな人間を相手にしても勝手にその心の内を妄想し、自分を否定すると思い込んでいる彼、ホラーのセオリーでは一人で行動して死んでしまうタイプ。
そんな彼がこの世界でどう生き延びるのか!?
過酷で残酷のこの世界で、果たして二人はどうなるのか。
「ヒーロー」はこの世界に存在するのか?
最後の瞬間まで目の離せない物語が繰り広げられるのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!