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今回紹介いたしますのはこちら。

「うらたろう」第1巻 中山敦支先生 

集英社さんのヤングジャンプコミックスより刊行です。

さて、愛の戦いを描き切った「ねじまきカギュー」を完結させてから2年半、とうとう刊行となった中山先生の最新作。
本作は前作とは違い、舞台は数百年昔の日本。
そこで繰り広げられる物語とは……?


青い空、白い雲、おいしい空気。
それらを堪能して、生きている素晴らしさをかみしめている少女、ちよ。
彼女は山に住む不老不死の「鬼人」様に会うために足を踏み入っていました。
彼女と一緒にここへやってきたジイは、どんどんと元気よく進んでいく千代とは裏腹にもうバテバテ。
鍛え抜かれた肉体を持つジイよりも、彼女のほうがよっぽど体力がある、ようなのですが……
突如せき込んだかと思いますと、その口から鮮血を吐きだしたではありませんか!
ハッとするジイですが、ちよはそれを見ても口を拭い、にこりと笑って再び歩き出すのです。
が、その旅は簡単なものではありませんでした。
ダイチを揺るがすすさまじい振動が連続して襲ったかと思うと……二人の背後から、巨大な異形のイノシシが現れたのです!!
有無を言わさず襲い掛かってくるイノシシ!
突進で巨木をなぎ倒すその力、到底戦って勝てる相手とは思えません!!
なんとか逃げようにももはや体力は限界近く……
そこでちよは自らおとりになってジイを逃がそうと駆け出しました!
ですがイノシシはそれを許さず、高く高く跳躍して千代に襲い掛かってきて……!!
その落下自体は辛くも避けることのできたちよでしたが、衝撃で崩れた足場はどうすることもできません。
ちよは真っ逆さまに落下していってしまうのです!

ちよはが目を覚ますと、自分がだいぶ高くから落ちていたことに気が付きます。
崖の下に落ちたおかげで、あのイノシシからは逃げられたようですが……ジイはどうしたでしょうか。
筋肉があるから大丈夫だよね、と楽観的に見つもり、あたりの様子をうかがうちよ。
するとその周囲には、苦悶の表情を浮かべた地蔵のようなものがたくさん並んでいます。
さらにその中央に
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木の根が大量に絡みついた状態で眠っている、一人の男がいたのです!!
鬼人様に間違いない!そう察知したちよは大騒ぎ!
耳元で呼びかけてるのですが、鬼人はいったん目を開け、また眠りについてしまいました。
そこでちよは、鬼人の耳元で絶叫!!
流石の鬼人も我慢できません。
人が寝てるのに断末魔みてぇな声を出しやがって、とようやく起きだしてくれました!
早速、鬼人に不死になりたいんです、と目的を告げるちよ。
ですが、鬼人はおもむろにちよの小刀をひったくると、自らの首を掻っ切ったではありませんか!!
すさまじい鮮血が飛び散り、千代はショックでぶっ倒れてしまいます。
ところが鬼人の傷はみるみるとふさがっていき、小刀を放り投げてこう言うのです。
これでも不死になりてぇか、わかったら二度と俺の前に現れるな、と!
目の前で繰り広げられたショッキングな光景。
しかし、ちよは一転して大喜び!!
アナタこそあたしが求めていた本物の不老不死です、と目を輝かせるのでした!!

ちよは今まで様々な不老不死の噂を求めてきました。
人魚の肉、火の鳥の生き血、蓬莱の霊薬、賢者の石、アムリタ、仙桃、水銀……
ありとあらゆるものを探し求めましたが、そのどれもが根も葉もない偽物だったとか。
その旅の中で、そもそも不老不死なんて始め狩らないのかもしれない、とまで考えるようになってしまっていて……
そんな時であった本物の不老不死!
ちよは満面の笑みで、あたしと出会ってくださってありがとう、と鬼人に笑いかけるのです。
そこでいよいよ本題。
改めてちよはお願いするのです。
あたしを不老不死にしてください、と!
ですが帰ってきたのは、できるわけねーだろと言うつれない言葉……
鬼人は確かに不老不死の肉体は持っていますが、他の人物を不老不死にする千佳羅なんてあるわけがない、というのです!
……つまりアタシは不老不死になれないと……?
そう問いかけるちよを、その通り、回れ右だと指示する鬼人。
ちよは嫌だと絶叫し、ひどい、詐欺だペテンだと駄々をこねて鬼人に縋りつくのですが……
鬼人は、今までもこうして不老不死を求める権力者や金持ちを見てきたのだとか。
その結果、欲深い連中ほど必死に生にしがみつこうとしやがる、くだらねぇ、生きるなんてろくなもんじゃない、と考えるようになってしまっていたのです。
ですがちよはと言いますと、生きることは素晴らしいのだ、と必死に反論します。
が、それでも鬼人は眉をひそめてこういいました。
いずれ死ぬことが決まってるお前らに、死にたくても死ねないやつの気持ちなんかわかるかよ、と……
その顔から強い思いを感じたちよ。
そんなちよと鬼人のもとに、ジイが姿を現しました。
早速駆け寄ろうとするちよでしたが、ジイはこっちにきてはいけない、お逃げ下され、とちよを引き離そうとするではありませんか。
ですがその理由はすぐにわかることとなります。
ジイは
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あのイノシシに、すでに下半身を食いちぎられてしまっていたのですから……!!

ちよは必死にイノシシをジイから遠ざけようと走り回ります。
下半身がちぎれたジイは、もはやどうやってもほどなく息絶えてしまうことでしょう……
そんな状況もわからないちよですが、ジイはよくそのことをわかっているようで、その息絶えるわずかな間を使って鬼人に語りかけるのです。
あの子を助けてやって下さらぬか、あの子は誰よりもよく笑い、よく泣いてよく怒る。
誰よりもこの世に生まれてきたことを喜んでおられる。
ワシはあの子に生きていてほしいのです。
あの子は不死を望んてらっしゃるが、わしは正直どうでもよい。
不死になれずともよい、ただすこやかに
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あと一年の寿命を、一日でも長く生きてほしい。
残された人生を、ただ笑って生きてほしい……



というわけで、不老不死を求める少女・ちよと、その不老不死を持つ鬼人ことうらたろうを主役とした物語が始まる本作。
余命一年の少女が生きることの素晴らしさを謳い、不老不死の男が生きることの無為さを語る。
そんな対照的な二人が出会い、お互いの求めるものを得るための旅が始まるのです。
その不老不死の方法を探すための旅を続けていく中で、様々な謎や今後の物語の鍵が示されていくことになります。
ちよの余命がなぜ一年だとわかっているのか?
不老不死に絶望しているうらたろうがなぜ旅に出ることを承諾したのか?
物語の進行とともに、少しずつ謎が生まれ、解き明かされていく。
そしてこの世に蔓延る妖怪と戦い、その陰にまた別の不穏な影が見え隠れし……
ちよの意外な正体や、もしかしたらラスボスになるかもしれないもっと意外な人物が現れ、物語はますます複雑に!!
中山先生らしい熱いキャラクターの主張、激しすぎるバトル、そして明暗入り混じるドラマと、盛りだくさんの内容が楽しめるのです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!