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今回紹介いたしますのはこちら。

「地獄の教頭」第3巻 大沼良太先生 

スクウェア・エニックスさんのヤングガンガンコミックスより刊行です。


さて、教育のためならばどんなダーティーな手段もいとわない、謎多き教頭・近衛。
その裏の顔を知ってしまった女教師、新藤は、近衛と言う人物がいったいどんな人間なのかと言うことを調べ始めました。
そんな彼女に、副校長である椎名が接触。
彼は、裏切りと口外は厳禁だと前置きをして、近衛の過去を明かし始めたのでした!!


強いなと近衛が初めて出会ったのは、15年前のことでした。
デカい体を少し曲げ、低姿勢な話しぶり。
手を後ろで組むのが癖で、へこへ個と頭を下げてくるあたりさわりのない教師……
それが、椎名が最初に感じた近衛のイメージだと言います。
お互い普通の教師で、教員室では隣同士と言う関係にもかかわらず、特別興味を持つような存在でもないと考えていた椎名ですが……徐々に情勢は変わってきました。
コーヒー要ります?と缶コーヒーを携えて話しかけてくる近衛。
最初は飲み物ならあるので、と断っていた椎名なのですが、その行動をほかの教師にもしていることに気が付きました。
近衛の行動を注視していますと、どうやらコーヒーは会話に入るきっかけのようで、コーヒーを渡してからその渡した相手と雑談をする、のが目的のようです。
仕事ぶりも何やら不思議な感じで、大量の仕事が残っているわけでもないのに変えるのはいつも最後の方なのです。
ちょうどそのころ、椎名もやることがあったので帰宅が遅くなっていまして……隣の席で遅くまで働いているのですから、次第に会話も増えていくのが自然というもの。
二人はちょくちょく会話を交わすようになっていったのです。

会話を交わす関係になったことから、椎名は近衛の癖について指摘をします。
後ろで手を組むのは、目上の人と話す時失礼になる。
近衛は、ほかの人の前ではそうしないように気を付けます、と2歳年上の椎名に対してそんな答えを返してきました。
椎名先生が心の広い先輩で助かってます、と冗談半分の返事をする近衛の姿を見て、椎名の頭にはある考えが浮かんだのです。
今夜、話す時間をもらえるかい?
そう言って品は近衛を誘い、居酒屋に向かったのでした。

椎名は、同僚としてではなく、一人の人間個人として話をしたい、と様々な質問を投げかけました。
その中で近衛が明確な反応を見せたのは、なんで教師を目指したのか?というもので。
その質問に近衛は迷うことなく答えたのです。
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この仕事以外みられなくなってしまっただけです、後悔はしていませんが。
……彼は何かのきっかけがあって、教職以外はあり得ないと考えるようになった、と言うことのようで。
その答えにどう反応するべきなのか考えあぐねている椎名に、今度は近衛が同じ質問を返してきます。
椎名のあげた教員志望動機は、本人が言う通り歪んだものでした。
学生時代は親のためにエリート神学校に通うっていたものの、受験失敗。
二流大学に通わなければいけない屈辱などもあり、学校生活を一度も楽しいと思ったことがないのだそうです。
だから教師としてまた学校生活をやり直そうと思ったのです。
結局楽しい学園生活はいまだに遅れていないのですが……
そんなことを言っているうちに、自らの言葉で自らに腹を立ててしまったようで。
私は過去の後悔を塗りつぶしたくて、今も生きてる落ちこぼれだからね。
そう言いながら、歯を食いしばってしまうのでした。

後日、椎名は近衛の肩に手を置き、小さな声で語りかけました。
君にしかできない相談がある。
週末の夜とある会合がある、そこに君も同席してほしいのだが。
その日、大人しく近衛は椎名に同行。
そこは高級そうな料亭で、見たことのある大物政治家の姿もありました。
そこでも後ろで手を組む近衛に、それをやめろと引きはがそうとする椎名……
ですがその時、近衛の手がただ事ではないほどごつごつとして、薄汚れていて……!?
椎名はとりあえず近衛の手のことはあきらめ、この会議に来た本題に入ることにしました。
彼の目的はここで、全教師を実力に応じたランク付けを行い、教頭や校長にならずとも給料のアップができるというプランのプレゼンを行うこと。
が、椎名渾身のそのプレゼンを……政治家たちはほとんど聞きながすのです。
文部省の教育統制権はより効果されるものの、政治家たちから見たメリットはそれだけ。
ランク付けなどをするなら当然それ用箱が必要で、手間や無駄が発生してしまう、とスルーし、早々と酒の席になだれ込もうとするのです!
椎名は沸き上がる怒りを押し殺し、財津と言う小物の政治家をトイレに連れ込みました。
椎名は財津の弱みを握り、その政治家のコネを使って大物政治家と一緒の酒の席をわざわざセッティングさせたのだとか。
ですがその大物政治家は、酒や女ではないビジネス的なものには非常にシビアで……
これでは大物政治家を連れてきた意味がないだろう、と財津を殴りつけるのです。
そして、うずくまる財津を見下ろしながら。財津の不倫の現場を抑えた写真とともにこう語りかけたのです。
確実に大物政治家が動くように言い聞かせてくれませんか?
そして大物政治家が無駄だという箱のトップに置いて下さいよ。
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私のような人間は、あんたらみたいな優秀な人を利用し尽くしながらの仕上がるしかないんですよ!
決定的な証拠を握られてしまっている財津は、椎名に従うほかありません。
大物政治家を一緒に嵌めよう、と迫る椎名は嫌らしい笑みを浮かべます。
しっぱ返しが来ないための準備は万全ですし、もしもの時の弾除け人材も用意済みですから。
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ちょっと脅せば経仔へ越しそうな、いつでも切り捨てられる興味のない人材が。
……椎名は、その目的で近衛を連れてきていたのです。
何も知らない、はずの近衛を、スケープゴートにするために!!


というわけで、近衛の過去編が描かれる今巻。
近衛の過去を知っている椎名から明かされるその事件は、やはり近衛のとんでもない能力が垣間見られることとなります。
それこそが本作の売りと言えるのですが……この過去編の肝は、近衛ではないのです。
15年前と今、近衛は全く変わっていない。
そう言う椎名は、自分のことを顔の面影以外丸切り替わってしまった、と言います。
この15年前の事件で、椎名はどのように変わったというのでしょうか?
野心のために、政治家すらも強請ろうという椎名は、やはり近衛とぶつかってしまうのでしょうか!?
過去編、注目です!!

さらにその後、また別の近衛の謎を探ろうとする人物を中心にしたストーリーが開始。
近衛は、自分のしている指導はばれないに越したことはないが、ばれたらばれたでどうにかするだけだ、と言う覚悟を持って今の行動を続けている節があります。
そんな彼が調査をされていることに気が付いたら……!?
やはりそこに待っているのは地獄、そんな本作ならではの圧倒的恐怖と、迫力がつまったエピソードになっているのです!!

そのうえラストでは大きく物語が動いていきそうな展開が!!
新藤の動きも気になりますし、なによりまだまだ謎のヴェールに包まれている近衛の秘密がいよいよ明かされそうな次巻、期待せずにはいられませんね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!