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今回紹介いたしますのはこちら。

「鮫島、最後の十五日」第8巻 佐藤タカヒロ先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。

さて、鯉太郎と大山道の激戦を目の当たりとし、再びその体に闘志をみなぎらせた蒼希狼。
タイミングを計ったかのように、その取り組みの翌日、七日目に鯉太郎と蒼希狼の取組が組まれます。
前日までとはうってかわって、全身から闘志をみなぎらせる蒼希狼。
鯉太郎はそんな蒼希狼にどう立ち向かうのでしょうか!?


土俵上で向かい合う二人。
両者は相手をまっすぐににらみつけ、今にも噛みつかんばかりの闘志を隠そうともしません。
近頃の蒼希狼からは全く感じられなかった闘志。
その闘志のままに、以前のような本気の取組をすれば、この戦いは期待できるかもしれない。
二人を個人的に好きではないだろう虎城をしてそう言うこの戦い。
蒼希狼は四つ相撲を得意としていて、左右どちらの四つでも強烈な上手投げを放つことができます。
鯉太郎のほうも、吽形とともに実がいた左四つ、左下手の形からの攻めは相当なもの。
スピードに関しては言うまでもなく、相手を圧倒することも珍しくはないのです。
行事の軍配はまだ返りません。
多くの取組はこの軍配が返るとき、いわゆる時間いっぱいまで集中力を高めたり、相手との呼吸を合わせたりしていきます。
が、必ずしも時間いっぱいを待つ必要はないのです。
お互いの呼吸が合って両者がしっかりと手をついて立てば、立ち合いは成立、取り組みは始まるのです。
現実にもそう言うことはまれにあり、直近では13年の3月場所に起きています。
二人の放つ闘志は、今にも拭きだしそうな熱気を感じさせます。
その姿は、見るものすべてに今にも取り組みが始まるのではないかと思わせるもので。
実際、二人の目にはもう相手の姿しか映っていません、
大山道はそんな姿を見て、にやりと笑い待ってこういいました。
ずっと、何年も待っていたんだものな……
そう、二人の思いは同じ。
今までくすぶり続けていた蒼希狼。
そんな蒼希狼との取組など、鯉太郎は全く求めていなかったのです。
が、今の蒼希狼は、かつて鯉太郎と熱戦を繰り広げたあの時の闘志が復活しています。
鯉太郎は、そんな蒼希狼との取り組みを求め焦がれ続けていました。
そして久しぶりの思いを滾らせる蒼希狼も、その闘志を鯉太郎にぶつけたくて仕方がないのです!
もう、待てねーよ……
二人の思いは同じ。
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時間いっぱいを待たず、二人は同時に立ち上がったのです!!

一回目の仕切りで同時に立った二人。
二人は頭からぶつかり、場内には強烈な衝撃で生まれた重い音が響き渡りました!!
あたりはほぼ五分!
ですが二人のそのあとの行動は対照的です。
再び頭を下げて二度目のぶちかましを狙う鯉太郎、そんな鯉太郎をじっくりと見て右のかちあげで迎撃しようとする蒼希狼!
ですが鯉太郎はそんな蒼希狼の行動を読み切り、ぶちかましを停止させるという大山道が見せたフェイントを使ったのです!
空振りする蒼希狼の右腕。
その一瞬の隙を狙って鯉太郎は左下手を取りに行くのですが、蒼希狼は、それをやすやすとは許しません。
すばやく右手で捌き、廻しを許さず、今度は逆に左上手を取りに行きました!!
が、鯉太郎もそれを右腕で受け止めて防ぐのです!!
鯉太郎は素早く蒼希狼の左側へと回り込み、再び下手を取りに行きます。
蒼希狼は右足を引くことによってそれを許さず、また左上手を取ろうとするものの、先ほどと同じように防がれました。
そんな攻防が、そのあと何度も繰り返されていきます。
鯉太郎は言うまでもありませんが、闘志を復活させた蒼希狼のスピードも幕内内で指折りのもの。
鯉太郎のスピードに難なくついていき、そこらのノロマと一緒にするな、と笑うのです!!
そこで鯉太郎は、さらにギアを入れていきます。
以前とは比べものにならない鯉太郎の素早い動き、流石の蒼希狼でも上手を取りに行くことはできません。
鯉太郎が狙う下手を許さないのが精いっぱい、ですが、早いだけ、では勝てないのが相撲というもの!!
どんなに早かろうが、リズムが一定すぎる。
鯉太郎がとびかかってくるそのタイミングで、蒼希狼は狙いすました張り手を放つのです!!
が。
それは鯉太郎が撒いた餌でした。
ギリギリのタイミングで体を翻し、かがみこむ鯉太郎。
張り手の体勢に入った蒼希狼が、それに反応するよりも早く
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再びのぶちかましをさく裂させたのでした!!

流石の蒼希狼もぐらつきます。
勝負どころと見た鯉太郎は、回転の速い張り手を放ちつつ前へ!!
その張り手の乱れ内を浴びながら、蒼希狼は歓喜に震えていました。
響く、そうだ、この重さだ。
まるで自分の存在をぶつけてくるような、叫んでいるかのような。
だからもう一度、鮫島と取りたかった!!
蒼希狼は、鯉太郎の突っ張りを真っ向から、咆哮とともに体で跳ね返します。
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この取り組みで、俺の存在も鮫島に叫ぶ!!
すべてをぶつけようという闘志。
そのあふれ出る闘志を感じ、鯉太郎も笑うのです!!
真っ向からあふれ出る闘志をぶつけあう二人!!
二人のすべてがぶつかり合うこの戦い、勝るのはどちらなのか!?
熱戦は、間もなく決着を迎えます!!


というわけで、死んでいたといっていいかつてのライバルが復活し、再び魂のぶつかり合いを繰り広げる今巻。
勝敗だけを見るならば、蒼希狼が復活しない方が鯉太郎は楽だったでしょう。
ですが鯉太郎が求めているのは白星よりも、こう言ったむき出しの魂同士のぶつかり合い!!
まさにその求めるものを形にしたような取り組みとなったこの戦い、一瞬も気の抜けない、そして最高に心の躍る一番となるのです!!

そしてこの蒼希狼との一番が終わった後、ついに本作最強の横綱が本格的に登場することとなります。
最強と言う名すらも生ぬるい、あまりにも強すぎる横綱・泡影。
その異形ともいえる泡影の強さを目の前にして、鯉太郎は?
番付上で言えば、鯉太郎と泡影が本割上でぶつかりあうことはないでしょう。
もし二人が戦うことがあるのなら、その場面は、優勝決定戦となるはず!!
バチバチシリーズ最終章にして登場する最強の横綱に、鯉太郎は挑むことができるのでしょうか。
いや、それ以前に鯉太郎の体が持つのでしょうか?
手に汗握る十五日間。
これからも鯉太郎の前には続々と強豪、そしてライバルたちが立ちはだかることでしょう。
確実なのは、鯉太郎が燃え滾る闘志を見せつけるかのような戦いを見せて呉れること。
その戦いを、これからも楽しみにしていきましょう!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!