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今回紹介いたしますのはこちら。

「マジョンナ 三家本礼 Extra Works」 三家本礼先生 

エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。

さて、本作は三家本礼先生の単行本未収録作に加え、カラーイラストや再録作品などを詰め込んだ豪華な一冊となっております。
95年にデビューした三家本先生、漫画家生活20年超の歴史を体感できる本作、今回はそんな中から三家本先生初期の傑作、「クレイジーママ」を紹介したいと思います!!


順子ちゃんがおうちに帰ってきました。
帰ってくるなりおやつを食べようと冷蔵庫を探り始める順子ちゃんに、お母さんはやさしくその前に手を洗いなさいと注意します。
そんな時テレビから流れてくるのは、あまり耳触りの良くないニュース。
学校内のいじめによる子供の自殺の増加、子供の出すSOSサインに気づか児、手遅れになるケースも多い……
お母さんは、順子ちゃんに問いかけました。
クラスのみんなはどう?あれから仲良くしてくれてる?
そうたずねると、順子ちゃんは……少し間を開けた後、うんと頷きました。
とりあえず安心してしまったお母さんは、困ったことがあったら何でも打ち明けてね、と笑いかけるのでした。

図書館に本を返しに行ってくるという順子ちゃんを送りだし、お母さんは物思いにふけっていました。
その視線の先にあるのは、仏壇の男性の写真です。
もうすでに鬼籍に入ってしまった夫……
そんな夫が、「父」がいないということが順子ちゃんに取って地獄のような苦しみをもたらしてしまいました。
数か月前、父親がいないというだけでいじめのターゲットにされてしまった順子ちゃん。
宇田川と言うクラスの中心的存在の女の子が指揮をとり、ひどいいじめを受けていたのですが、そこでお母さんは黙っていませんでした。
その子と両親に土下座させ、事態は収束。
安息の日々が再び始まった……かと思われたのですが……
鳴り響く電話から、悪夢は終わっていなかったどころか、最悪の結末を迎えてしまったことを知るのです!

警察からの知らせを受け、警察署に向かうと、そこに待っていたのは……
物言わぬ亡骸となった順子ちゃんでした。
目撃者の情報によれば、図書館前の歩道橋から飛び降りた自殺と推測されるようです。
自殺の動機に心当たりはないか、と問われるお母さんですが……
ない、わけがないではありませんか!!

「あれ」を根絶やしにしなかったのがそもそもの誤算だった。
そう考えたお母さんは、まず子供服用の生地を購入しました。
そしてその生地で、子供服を作り上げるのです。
それは順子ちゃんを弔うための服……ではありません。
子供用にしては大きすぎるその服が出来上がると、お母さんは……
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自らその服を着て、ランドセルを背負ったではありませんか!!
一体彼女は何を考えているのでしょうか……?

宇田川家では。
順子ちゃんのことなど全く知らず、家族だんらんを楽しむ家族が穏やかな時間を過ごしていました。
そんな家族のだんらんを中断させるかのように、連続で鳴り響くインターホンの音。
宇田川家の母親がハイハイと言いながら玄関のドアを開けますと、飛び込んできたのは……チェーンソー!!
その節は大変お世話になりました!!
そう言いながら、チェーンソーとともに飛び込んできたお母さん!!
そのまま有無を言わさず、母親の頭をカチ割ったのです!!
絶叫を聞きつけて父親もやってきますが、今度はお母さん、父親の頭部を下あごあたりから真横に分断!!
突然目の前で繰り広げられた地獄を前にして、宇田川はおびえきり、おもらししながら這いずって逃げようとするのが精いっぱい……
そんな彼女に、お母さんが迫ります。
最近内野順子をいじめたやつの名前全部上げてごらん。
返り血で真っ赤になったお母さんが、チェーンソーを手にそうたずねてくるのですから……宇田川も大人しく白状せざるを得ないでしょう。
クラスの女子、全部……
そう素直に白状した瞬間、お母さんは「簡単に友達を売るな!!」と理不尽言葉を吐くとともに、宇田川の体にチェーンソーをつきたてるのでした!!
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夜の街に、笑い声が響きます。
ママチャリに乗ったお母さんの笑い声が。

皆殺しよ!!明日は学級閉鎖よ!!
ママチャリのかごにはクラスの女子の生首が詰め込まれ……!!
お母さんの瞳には、もはや狂気しか見てとれないのでした!!

……と、そんなところでお母さんは正気に戻りました。
どうやら葬儀などを終えた後、順子ちゃんの遺品を整理している最中に妄想に取り付かれ、空想の世界に没入してしまっていたようです。
そもそも最近順子ちゃんがいじめられていたという証拠すらないわけで……
やり場のない怒りが、そんな妄想の世界にいざなったのでしょう。
とにかく気持ちを整理するためにも、遺書か何かがあればそれを確かめたいところ。
そのため順子ちゃんの部屋を探していたのですが……しばらく探っていた最中、ふとあの時のことが思い出されます。
順子ちゃんが学校から帰ってきたとき、なぜか自分の前でランドセルを下ろそうとしなかった。
なぜ……?
順子ちゃんが家に帰ってきた後、洗濯籠につっこんだらしいあの日来ていた服。
その服を裏返し、背中側を見てみると、そこには……
ランドセルで隠れる部分に、びっしりと順子ちゃんを罵倒する言葉が落書きされていたのです!!
……すべてがつながりました。
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お母さんの形相は、悪鬼羅刹のような恐ろしいものへと変貌し……!!
今宵、妄想は現実へと変わることとなるようです……


というわけで、ママが狂気に陥るその瞬間を描く怪作を収録した今巻。
本作をはじめとして、今巻には実に様々な三家本先生らしい作品の数々が収録されています。
表題作である(三家本先生的には黒歴史らしい)、強烈な個性を持つ魔女が主役の「マジョンナ」、単行本「美女アマンダ」に収録された「画女」「美女アマンダ」「給食の飯田さん」。
「ゾンビ屋れい子」の文庫版などにも収録されていた「スワンの水」、デビュー作「闇を這う音」……
デビュー作では三家本先生の今の絵柄を何となく感じさせつつも、今とはかなり違う画風に注目したいところ!!
「美女アマンダ」などの再録作品も、単行本収録時に改稿された雑誌掲載時のページも併録していまして、収録単行本を持っている方も満足な内容になっています!!

そして個人的に今巻の最大の目玉だと思っているのが、三家本先生駆け出し時代に描かれた読者投稿の実話怪談もの!!
96年の「夜の廊下を走るもの」、00年の「しのびよるもの」、99年の「呼ぶ穴」の散策が収録されておりまして、特に「夜の廊下を走るもの」のビジュアルのインパクトはすごいです!!
おそらくあえてそうしただろうと思われる、印象が全然違うイラスト、そしてそこからドンと現れる恐怖描写のギャップ!
お話としては大変短いものばかりですが、それでもファンならばうなってしまうものばかりですよ!!

さらにカラーページ8Pにカラーイラストがギュギュっと詰め込まれ、さらに先生ご自身による各作品の解説プラスあとがきと、240P超の大ボリュームのずみずみに見どころがみっちり!!
ファンならずとも見ごたえ満点の一冊になっているのです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!