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今回紹介いたしますのはこちら。

「黒」第3巻 ソウマトウ先生 

集英社さんのヤングジャンプ・コミックスより刊行です。

さて、お屋敷でクロと暮らす少女、ココの日常を描いていく本作。
一見、黒猫のクロと平和に暮らしているようにも見えるココですが、周囲の目から見るとそうではありません。
黒猫の姿をしているものの、明らかに猫ではない何かであるクロ。
誰もが知っているはずの怪物のことを一切忘れてしまっているココ。
周囲の人々が心配する中、今度はココの髪が真っ白に変わってしまうという異常な出来事が!!
果たしてココはどうなってしまうのでしょうか……?


ここの変貌を目にしたマリアは、悩んでいました。
白髪になったココを見てから、すでに二週間。
まだマリアはその出来事を、両親にも医師にも言えないままでいました。
そのことを正直に打ち明けてしまえば、大人たちはおそらくクロのことを排除しようとするでしょう。
ですが、今のココは完全にクロに依存してしまっています。
今のココが、クロのことを失ってしまったら……どうなってしまうのでしょうか。
その時のことを想像するだけでも……
とはいっても、このまま静観していたところで何も解決はしません。
マリアは意を決し、ココの家へと向かうのです。

クロは門のすぐ横の塀の上に座っていました。
マリアが近づくと、クロはそれに気が付いたようで顔を上げ……立ち上がりました。
思わず身をちぢこめるマリア。
ですがクロは何をするというでもなく、門の内側に降り立って懲りたを見つめ続けるのです。
クロが突然人を襲うようになった……というわけではないのでしょうか。
そうしている間にも、「道」の外では、人間を襲う怪物が蠢いています。
それを見るたび、マリアの脳裏には忌まわしい思い出がよみがえるのです。
兄が怪物によって殺められた過去の思い出が……
そのつらい思いでは、マリアに怪物なんて全部いなくなってしまえばいい、という強い怒りを抱かせる原因となっています。
しかしココが必死で訴えた、「クロはクロだよ、わたしの家族だもん!」と言う言葉が引っかかってなりません。
怪物がみんないなくなったほうがいいという考えは今でも変わりません。
ですが……クロは……違うのでしょうか……?

マリアは医師の家へとやってきました。
来客中、御用の方は午後お越しください、と看板が掲げられていたのですが、鍵などはかかっていませんでした。
そっと扉を開け、中に入っていくマリア。
すると応接室では、医師を中心とした街の大人たちが話し合いをしていました。
どうやらそれはここに関係あるお話のようで……マリアはそっと聞き耳を立てるのでした。

話の内容は、屋敷に住む者が町長と花の管理者をしていた、と言うこの街の慣習にまつわるものでした。
屋敷に大人がいない以上は花の管理者と町長を別に考えよう、町長は屋敷に住むという慣習をやめるべきか、でも観衆を変えたことで何かが間違って怪物が道に入ってくるかもしれない……
様々な話を、ああでもないこうでもないとしているうちに話題はクロのことへ移っていきます。
死んだ動物の体を黒い虫が奪い操っている状態を、「憑き物」とよぶ。
が、クロは憑き物のように怪物に成長してはいないし、人を襲うどころかココを守ろうとしている。
おそらくクロは大けがを負った時に黒い虫に入られてしまったが、まだクロが死んではいなかったため二つの命が共生している状態になったのではないか……?
医師はそんな持論を展開するのですが、ほかの大人たちの恐怖を抑えることはできません。
どんな状態でもクロが危険ではないとは言い切れない、大変なことが起こる前にクロは消さなければ。
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医師を除いた大人たちはみなその意見に賛同するのでした。

マリアは決意を胸に秘め、ある人物のもとにやってきました。
ベンチに腰掛け、猫の背中を撫でている少女……ミルクのもとに。
そしてマリアは、ミルクにこうお願いをしました。
ここを助けに行くの、協力してくれる?
クロがココの色を吸ってる、髪の色が真っ白になってたのよ。
それを聞いた瞬間、ココはびくりと体を震わせ……ココちゃんは死ぬの?と質問をしてきます。
マリアは首を横に振り、きっとクロは何か伝えようとしてココの色を吸ったんだ、色を吸われたら普通は死ぬはずなのに生きているんだから、と答えるのですが……
助けるってどうするんだ、とミルクはいやがるのです。
マリアは逃げ出そうとするミルクを捕まえ、よく一緒に遊んでたじゃない、友達でしょう、と彼女を説得しようとするのですが、そこでミルクはマリアを突き飛ばし、馬乗りになって手にしたカバンでマリアを叩きながら叫びました。
もう遊んでない、私はもう必要とされたないんだ、友達じゃなくなったんだ、助けたくても無理だよ、と。
で巣が大人しくたたかれ続けるマリアではありません。
逆にミルクを突き飛ばし、ミルクに友達がいない理由がわかったわ、ときつい一言を投げかけたのです!
マリアも何も考えず助けたいとだけ思っていたわけではありません。
ココと一緒に都会に行こう、この街の大人は信用できない。
そんな考えを打ち明けたのですが、ここではミルクのほうが冷静なようで。
この街を出てどうするんだ、本で読んだけどどこに行っても化け物はいるし、クロを連れて言ったら居場所なんてない、子供だけじゃ何にもできない。
……それを聞いたマリアは、泣き始めました。
そして、思いの丈を吐きだし始めたのです。
何にもできなくてもほっとけないもん、ココが死んじゃったらやだよ……
マリアが見せた、飾らない本音……
ミルクには、そんな彼女の本当の気持ちが一番胸をうったようです。
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いつも強がってるくせに、マリアちゃんは泣き虫なんだね。
そう言って、そっと彼女を抱きしめたのでした。

ココに死んでほしくないのはミルクも同じ。
マリアの気持ちに心を動かされたミルクは、とうとう決心してくれたようです。
二人は……お屋敷へとやってきました。
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心を閉ざしてしまった、大切な友人を助けるために……!


というわけで、いよいよクライマックスを迎える本作。
数々の謎が明かされていき、物語は収束に向かっていきます。
クロの正体はなんなのか。
ココの両親はどうなったのか。
マリアとミルクの気持ちはここに伝わるのか。
そして……ここが選ぶ未来は……?
すべての謎と、ココの抱えていた闇に決着がつき、物語はフィナーレへ。
ココとお友達と家族たちのお話は、どんな結末を迎えるのか?
ぜひとも皆さんの目で感動の結末をご確認ください!!

そして恒例の番外編も2編収録。
一話はいつものようにココと黒の日常の一コマを切り取ったお話なのですが、もう一話は幻想的な物語であると同時に、エピローグと言ってもいいお話になっています。
数々の不穏な影を垣間見せつつも、平和な日々を描いていた本作の最後をさわやかに占めてくれる、読後感良い内容に仕上がっていますよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!