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今回紹介いたしますのはこちら。

「続ハーメルンのバイオリン弾き」第7巻 渡辺道明先生 

林檎プロモーションさんのココカラコミックスより刊行です。

さて、超獣軍の中に飛び込んでいき、そこで変わり果てたハーメルの姿を目の当たりにしたトロンとコルネット。
そこで二人は過酷な運命と熾烈な戦いに巻き込まれることになるのですが……
その頃、グローリーの空中戦艦にとらえられていたサイザーとオーボウ、そしてライエルはとんでもないものを見ることになっていたのでした!!


そこにいたのは、目隠しに酸素吸入マスクのようなものを付けられ、さらに拘束衣でガッチリと身動きができない状態にされていた一人の男でした。
その男は、グローリーの最高戦闘司令官、ハープシコードの弟、ヴァスだと言います。
ですが、その拘束の目的は彼を身動きできないようにしようとするためだけのものではないようで。
耳戦もつけられていますし、目隠しは彼の目に光が入りづらくするための簡易的なもの……これは、彼を眠らせたまま起こさないようにしている、というのが目的になっているようなのです。
しかもハープシコードやグローリーの王によれば、このヴァスが世界の秩序を保つ存在だというではありませんか。
だしぬけにそんなことを言われ、事情を理解するどころではない一同。
この世界のライエルは、怒りと悲しみに心を支配されていて、敵だと思ったものには容赦なく、野獣のようにその牙をむく狂暴な性格……
オーボウは、納得のいく説明をしてもらわねば、このライエルが暴れ始めるかもしれない、そうすれば弟気味が目を覚ますのは必至だろう、と遠回しながらきっぱりと説明を要求したのでした。

グローリー王グロッケンは衝撃の真実を明かします。
この世界は、現実には存在しない。
……このバラライカが作りだした夢の世界。
この世界がそんな幻も同然の世界だということは、トロンたち3人しか知らないはず……
グロッケンは続けます。
この世界は現実には存在しないが、その現実の世界は凍結しており、現状こちらが現実のようなものになっている。
とはいえ、自分たちはあるものが作りだした夢の中の人物に過ぎない。
現実の世界は、バラライカの術によってずべてが眠らされている。
そして、この世界を作り出しているのは……現実世界の中で最も重要視された10人。
この世界は、その10人の、夢の集合体なのだ!!

バラライカは「十人の夜会」、ナイト・メア・ウォーカーと呼ばれる10名の部下たちにその重要な10人を眠らせているそうです。
その10人は、誰もが何かしら現実の世界に不満を持ち、世界を変えたいと思っているものなのだそうです。
現実世界は永遠ともいえる眠りについていて、夢の世界だけが動いている。
しかし、その10人が一人一人目を覚ましていけば、夢の一部ずつが消えて行き、やがて元の世界に帰るだろう……
グロッケンによれば、このグローリー帝国に関しての部分を創造しているのが、ヴァスだというのです。
ヴァスが目を覚ませば……グローリーは消滅する。
……そんなにわかには信じられない言葉を、顔色一つ変えず紡ぎ出したグロッケン。
荒唐無稽にもほどがある話、と切り捨ててもいいはずなのですが……オーボウには、どうしてもその言葉を他愛もないと受け流すことはできません。
そんな心のもやもやを感じたのは、ライエルも同じだったようです。
とうとう我慢の限界が気て、暴れ始めたライエル!!
その衝撃がヴァスを眠らせている装置に接触し、細かなひびが入ると……それに対してヴァスがほんの少し反応を見せました。
するとどうでしょう。
瞬く間にグロッケンやハープシコードが、そして空中戦艦が消失!!
サイザーたち三人は中空に投げ出されたのです!!
しかもそれだけではありません。
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サイザーの腕までもが透け始め……消える兆候を見せ始めたではありませんか!
ですがその直後、再び空中戦艦や、グロッケンたちが姿を現し、サイザーの腕も元通りに復活しました。
どうやら、ヴァスが再び深い眠りに落ち、この世界が安定したようです……!!
サイザーが消えかけたのは、多少はヴァスの認識によって作り出されていることが原因の様子。
こんな事実を目の当たりにさせられては、グロッケンの「夢物語」も信じないわけにはいかないでしょう。

しかしこの世界は、魔王ハーメルによって魔王軍が活発に行動していて、戦局としてはかなり人間たちが苦境に立たされている状態。
ここまでわかっているのならヴァスを起こし、平和になった現実世界に戻るべきなのではないでしょうか?
確かにその通りでしょう……現実世界の現在を生きる、大多数の人類にとっては。
グローリー帝国は、魔王軍との戦いによってごく一部の生き残りを除いて、全滅させられてしまっています。
つまり、この夢が覚めれば、グロッケンやハープシコード、そして多くの国民たちは……!!
そこでグロッケンは考えたのです。
この新たな夢の世界で、今度こそ魔族を滅ぼし、わが国が元首となる!
このグロッケンが世界の王となり、下衆な愚民どもを平伏させよう!!

……そもそも、グロッケンはなぜこんな本来知りえない事実を知ったのでしょう。
それは、「刻を告げる者」がいるからだ、と、檻の中にとらえた一匹の黒い妖精を見せつけてきました。
その妖精は……バラライカとともにいた、邪悪に染まってしまった妖精、リコ!
おそらくこのリコがあえて真実を、それもおそらく偏った情報をグロッケンに与え、より一層の情勢の混沌と世界の安定を測ったのでしょう……!!
バラライカの本当の恐ろしさを知らないグロッケンは、おそらく利害の一致とばかりに利用してやろうと考え……まんまと傀儡となってしまったわけです。

そして、グロッケンはここにサイザーを連れてきた目的も明かします。
ずらりと並んだ、銃を構えた兵士たち。
サイザーをとらえ、この戦艦の艦首に括り付ける……!
魔王軍の軍団長の一角である彼女がはりつけになっていれば、魔王軍もおいそれとは手が出せなくなるはず。
サイザーを航海を守る船首の女神像の代わりにしてやろう!と考えていたのです!!
ですがその真意を明かした瞬間、グロッケンにライエルが飛び掛かります。
ライエルは、グロッケンに襲い掛かりながら……確かにこういいました。
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サイザーに、手を出すな。
……出会ってまだ間もない自分を、助けようとした……?
現実世界で思いを寄せ合い、結ばれた二人。
そのつながりが、この夢の世界でも強い絆となって残っていたのでしょうか。
サイザーもこのライエルの言葉を聞き、得体のしれない胸の痛みを感じるのですが……
ライエルはグロッケンの妖精魔法によって吹き飛ばされてしまい……そのまま戦艦の壁を突き破り……地へと落ちていきました……
たまらず追いかけようとするサイザーですが、消耗したサイザーでは取り囲んだ兵士たちを振り切れず、すぐに取り押さえられてしまいます。
この気持ちは何なのか……?
不可思議な感情で胸がざわつくサイザー。
ですがその感情が何なのかを確かめる時間は与えられません。
グロッケンは、サイザーを見下ろしながら冷酷に言い放つのです。
その目障りな、黒い翼は切り取ってしまえ。
抵抗できないようにな。
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サイザーの翼に突き立てられる、鋭い刃……!
サイザーとライエルは、このままグローリーのあふれ出る黒い欲望によってその命を失ってしまうことになるのでしょうか!?


というわけで、驚愕の展開が続く今巻。
サイザーとライエルは、グローリーによって大変な窮地に追い込まれてしまうこととなりました。
超高空から落下してしまったライエル。
グロッケンにとらえられ、その翼を折られようとしているサイザー。
運命ともいえる出会いを果たした二人……夢の世界とはいえ、このまま終わるとは思えませんが……!?
そして、この世界の成り立ちに気が付いたグロッケンの行動も気になる所。
10人の夢によってできているという言葉が、どの程度真実なのかはわかりません。
混沌を好むバラライカだけに、戯れにすべて包み隠さず教えたかもしれませんし、都合良く捻じ曲げた嘘と言う可能性も捨てきれないでしょう。
ですが、バラライカにはユーモレスクやドロッポ、オルヘルをはじめとした複数名の部下がいることは確実。
彼らがそれぞれ一人ずつを眠らせている、ということなのでしょうか……?
歴史をもとの世界に近づけるよう奮闘するだけでなく、彼ら「十人の夜会」を撃破する必要もありそうです!!

そして後半では、トロンとコルネットに再びスポットライトが当たることとなります。
暗躍するバラライカ、踊らされるギータ。
魔王軍にも様々な思惑が交錯しているようですが、彼らがトロンたちにとっての避けることができない強敵で、怨敵であることだけは間違いありません!
トロンたちの戦いの他、このコンアモーレ王国を左右するフィドル姫や、その恋人であるチェンバロ、そしてコンアモーレ王もそれぞれの運命に立ち向かうこととなり……!!
以前目の離せない展開が連続していくのです!!

もちろん恒例の脱力おまけもたっぷり収録!!
描き下ろしのおまけ漫画が9ページ半掲載されておりまして、シリアス多めになっている本編に足りない(?)潤いを与えてくださっております!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!