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今回紹介いたしますのはこちら。

「水木しげるの日本霊異記」 水木しげる先生 

KADOKAWAさんより刊行です。

さて、本作は水木先生が平安時代にかかれたという日本最古の仏教説話集である「日本国現報善悪霊異記」を漫画化したものです。
水木先生と言えば、遠野物語やら、泉鏡花の作品&人生やら、方丈記やらと古典などなど、いくつも漫画化してきています。
今回の作品はそんな作品群の中でもややマイナー気味な題材ですが、果たして水木先生はどんな作品に仕上げてくださったのでしょうか!?


飛鳥時代、尾張国愛智郡。
一人の男が水田に水を引いておりますと、にわかに空に暗雲が立ち込めてまいりました。
早いとこきり上げないとななどと思っているうちに、夕立が振ってきてしまいます。
慌てて近くの古木のうろに入り込み、雨宿りをするのですが、これでは雨が防げても雷が落ちてきてしまってはひとたまりもありません。
そこで男は雷の落ちないおまじないだと、手に持っていた鉄の杖をうろの前に突き立てたのです。
するとやはりといいますか、そこにものすごい雷が落ちちゃいます。
男はびっくり仰天するのですが、それはただ雷が落ちたからだけではありませんでした。
その雷が落ちた地点に……
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どう見てもカミナリ様、の子供にしか見えないような子供と……薄汚いぼろを身にまとった出っ歯の男、ネズミ男が転がっていたのです!!
と言ってもネズミ男はただそこでおしっこをしていただけなんだそうで、そこに突然この子供が落ちてきたんだそうです。
で、その子供は本当にカミナリ様の関係者のようで、雷の修業をしていたら間違って落ちてしまった、のだとか。
男は、カミナリ様が相手ではたとえ子供だろうと何をされるかわからないと考え……何と鉄の杖でぶちのめそうとするじゃありませんか!!
カミナリの子は、地上にいる今どうも大した力は持っていないようで、あなたの望みをかなえてあげるから助けてくれと懇願。
子供ができないことに悩んでいた男に、赤子を授けてやるという条件で解放されたのでした。

その後、男に待望の子供が誕生しました。
が、その子供はちょっぴり、いや、大分奇妙!
生まれた時から、
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頭に蛇が巻き付いていたのですから!

その子供は蛇丸と名付けられ、すくすくと成長していきます。
十歳になったころ、男は蛇丸にスゴイ特技を見せられました。
それは、自分と同じくらいの大きさもあろうかという岩をひょいと持ち上げ、軽々と放り投げて見せる剛力です。
大したもんだと見惚れていますと、そこにどこからともなくネズミ男が現れました。
蛇丸のすごい力を活かして、都で力比べをやれば大儲けできる、と金の匂いにつられてやってきたそうなのですが……男もそれに面白そうだと賛同。
ネズミ男のあやしさに警戒はするものの、蛇丸を任せることにしたのでした。

都に来た二人。
いつものように偉そうなネズミ男に指示されるまま、蛇丸は往来の真っ只中に巨岩を持ってきました。
するとネズミ男は、道行く人にわずか10歳の子供が今からこれを持ち上げて遠くに投げ飛ばすから、見たかったら見物料を払え、とやり始めたのです。
都の人々は金をとるのかと渋りながらも、興味が勝ってお支払い。
ですが、蛇丸が見せた巨岩の投擲はそのおかねが惜しくなくなるほどのすごいものだったのです。
数十メートルは飛んだだろうかという大投擲に、見物客は感心しきり!
もう一回やってくれと大喝さいを浴び、早速結構な額を稼ぐのでした。

ですが本番はここからです!
怪力の子供がいるという噂を聞きつけた都を収める王様が、蛇丸を御所の別院に呼びつけました!
王様は、一つわしと力比べをしないかと持ち掛けてきます。
シメたとばかりにネズミ男は、もし勝ったら褒美をくださいなと約束を取り付け……
さっそく勝負開始です。
王様は力比べを提案しただけあり、大きな岩を数メートルも投げ飛ばしました。
ですが蛇丸の一投は、やすやすとそれよりも遠くに飛んでいったのです!!
蛇丸の完勝に王様も潔く敗北を認めまして、二人はがっぽりとお金を稼ぐことができたのでした!!

次はどう稼ごうかとほくそ笑むネズミ男、蛇丸を連れて次の仕事場を探し歩いていました。
日も暮れたころ、二人は元興寺というお寺の前に差し掛かり、ここで一晩泊めてもらおうということに。
ですがお寺の住職、泊まるのは構わないが……となにやら煮え切らない感じ。
事情を聞いてみますと、何でも鐘つき堂で怪しいことが起き、若い層が何者かに殺されるというとんでもない事件が起きているというではありませんか!
鬼の仕業かもしれないとささやかれているこの事件。
ネズミ男は金の匂いを嗅ぎ取り、こんな提案をするのです!
蛇丸はほかにはいない怪力の持ち主である、こやつに退治させたらよい!と!!!
いきなりすぎる提案ですが、蛇丸は怖くもないよとぜんぜんウェルカム。
ネズミ男は蛇丸に鐘つき堂で寝るように言いつけ、自分はお寺のほうでゆっくり眠るのでした!!

そして夜更け。
本当に、鬼がやってきたではありませんか!!
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果たして蛇丸はその力で鬼をねじ伏せることができるのでしょうか!?
それとも……!?


というわけで、この蛇丸のお話「がごぜ」をはじめとして、全7編の短編を収録した本作。
みんな大好きがしゃどくろをはじめとして、卒塔婆小町などの様々な骸骨系怪異のでる「どくろの怪」、水木先生の作品には頻繁に登場して活躍する死神が頑張る「閻魔大王の使い」、大蛇に魅入られた女性の数奇な運命を描く「蛇執の怪」などなど、引き込まれるお話ばかり!
紹介した「がごぜ」のように、ネズミ男の登場や、自分の実体験を交えるなどなど、水木先生テイストあふれる追加要素も満点!
日本霊異記のお話を堪能できるだけでなく、水木先生味を存分に堪能できる一冊となっているのです!
もちろんその物語は言うまでもないクオリティ。
水木先生ファンのみならず、昔話的なお話に興味なある方も楽しめること間違いなしですよ!!



現代に生きる半妖怪として長らく漫画界をリードしてきた水木先生ですが、15年11月30日にお亡くなりになられてしまいました。
いちファンとしてご冥福を祈るとともに、たくさんの名作を生み出してくださったことに感謝いたします。
本当にありがとうございました。
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