330
今回紹介いたしますのはこちら。

「木倉さんと三人三脚」第3巻 奥英樹先生 

小学館さんの少年サンデーコミックスより刊行です。

さて、蛇辺を打ち破るために訓練を続けていた宝児。
着々とレベルアップはしているものの、まだまだ蛇辺との差は歴然です。
ですがそれよりも問題なのは、華の状態です。
今までは右手に槍を持たなければ表に現れなかった昇が、右手に棒状のものを握っただけでも出るようになってしまっていたのです。
しかもその症状は進行しているようで……?


県大会の日。
宝児の心配をよそに、華は4位入賞を果たし、関東大会への切符を手にしていました。
ですがその成績とは裏腹に、華の心の中は不安でいおっぱいのようです。
後ろにまわしていた右手は震え、一人になればその恐怖で涙を流してしまう……
それでもおびえた様子を表に出さないため、それに宝児は気が付きません。
そのおかげで宝児は協議に集中することができ、68メートルを超える記録をたたきだすのです。
このまま成長を続けていけば、ひょっとしたらインターハイのころには本当に蛇辺を超える78メートルを出せるかもしれない。
周囲もそんな期待を寄せ始めます。
そんな空気の中で放たれた蛇辺の投擲。
記録は72メートル……宝児の自己ベストをあっさりと超えてきます。
こんなもんじゃねーだろ、もっと本気で楽しませろよ!
蛇辺はそう笑い、宝児を挑発してくるのです。
ですが宝児はぐっと我慢。
いくらなんでもいま蛇辺の記録を超えるなんて言うのは無理というもの。
勝負は全国、インターハイで決着をつけてやる!
そう考えてぐっと我慢するのですが……その時のことです。
客席にいつの間にか華……いや、昇が立っていて、こんなことを言い出すではありませんか!!
上等だよ!
331
今日野里が負けたら、テメーの女になってやるよ!!
突然の大発表に、もろ手を上げて大喜びする蛇辺!
宝児からすれば青天の霹靂もいいところです!
大慌てで、あんた何を言ってんだ、と昇に駆け寄るのですが……
昇はぐっと宝児の頭を引き寄せ、衝撃的な事実を明かしたのです。
さっき、華の最終投擲の時、お前が声をかけるまで華に戻れなかった。
徐々に俺が現れてる時間が長くなってる、このままじゃ華を乗っ取っちまう。
たのむ、今日で決着をつけてくれ……

もうこうなれば、今日この場で勝つより道はありません。
蛇辺をここで破れば、昇の現世への思いが消え、成仏するはず。
インターハイまでにそれを成し遂げるはずでしたが……もうそれどころか、次の関東大会までの時間すら残されていないのです。
蛇辺を倒すためには、少なくとも今の自己ベストを5メートル以上伸ばし、蛇辺の記録を超えなければなりません。
2投目の投擲は、突然会場に姿を現した宝児の兄に気を取られ、失敗してしまいましたが……その後はすぐ気を取り直し、闘志を再燃!
今までの、戦いをすぐ諦めてしまうという精神的なもろさを乗り越え、兄の前で成長を見せつける一投を放ったのです!!
結果はなんと74メートル04!!
蛇辺の2投目の73メートルを大きく超える素晴らしい記録を見せるのでした!!

勝負は決勝の3投に持ち越されます。
蛇辺は3投目をあえて適当に投げることで、投擲順番を宝児の前に操作。
宝児の前に大記録を見せつけることで、より面白い勝負にしようと考えたのです!!
そして蛇辺が投げた4投目。
すさまじい伸びを見せたそれはぐんぐんと距離を稼ぎ……記録はなんと76メートル22!!
先ほど大きく更新したばかりの自己ベストを、さらに2メートル以上伸ばさなければ勝てなくなってしまったのです!!
プレッシャーのかかる中、思わず華のほうに目をやる宝児。
ですが華も押し寄せる様々な感情に耐えきれず、思わず目をそらしてしまい……
まだ心がざわついている状況で宝児が投げなければいけない4投目。
その時はやってきた……と思いきや、にわかに空に雷鳴が閃いたではありませんか!
どうやらゲリラ豪雨のようです。
雨が止むのを待って競技を再開することとなり、宝児はいったんチームメイトのもとへ戻るのでした。

優勝する気でいかないと、一生勝てない。
雨で頭を冷やしたのか、宝児の覚悟は決まったようです。
が、その場には華の姿がありません。
慌てて探しに行くと、ほどなく見つかった華。
彼女は大事な時だというのに、応援せずに目をそらしてしまったことを悔いていたようです。
駆けつけてくれた宝児に、プレッシャーを感じさせないようにしなければ、と考え……華は無理に笑いながら右手を見せてきました。
その手は、包帯でぐるぐる巻きにされています!!
そして、これならば何かをつかむことはない、私は左利きだから右手を使わなくても何とかなる、大丈夫だから頑張って!と明るく言ったではないですか!!
ですが宝児にはわかっています。
332
それがカラ元気だということを。
大丈夫なわけないじゃん、と言いながら彼女の右手をぎゅっと握り閉め、いうのです。
絶対勝つ、なんていっても不安は消えないと思うけど……
プレッシャーだって力にする、だから勝つって信じて見届けてよ!
最後まで、三人で一緒に戦おう!!
華は、涙をこぼしながら、うん、とうなずきました。
彼女も覚悟は決まったようです。
ありがとう、一緒にやり投げ頑張ってくれてうれしかったよ。
勝ち負けの話じゃなくて、今日まで頑張ってくれた。
だから私、宝児君のこと……
……そこまで言った時のことでした。
333
華が……昇に変わってしまったのは……!!
右手で、手を握っただけで……昇に変わってしまう。
突きつけられた現実は、宝児を、昇を……華を驚愕させるのです。
もはや、名前を呼んでも花が出てくることはなく……
……雨は上がりました。
もはや一刻の猶予もありません。
この大会で、蛇辺を超える。
運命の3投。
この戦いが、すべての運命を決めるのです!!!


というわけで、クライマックスを迎えた本作。
もはや華に残された時間はありません。
とにかくここで蛇辺を倒さなければ、華は昇の意識によって塗りつぶされてしまうのです!
ですが蛇辺は高校記録を持つ正真正銘の実力者。
宝児はまだこれ以上マイベストを伸ばさなければ、同じラインにすらたてないのです!
まだ余裕を残している状態で74メートルを投げている蛇辺。
そんな男に、あと3投で完全に勝利を収めなければならない……
昇、華、宝児。
三人で歩んできた1年の成果が試されるのです!!

全3巻となってしまった本作ですが、ちょっと急ぎ足にはなってしまったものの、様々な因縁などが決着し、綺麗なラストとなっています!
成長しながら戦う最終決戦、蛇辺と昇の因縁、宝児と華の関係……
さらに読後感良いフィナーレと、そして描き下ろされた後日談4P半。
最後まで楽しめる作品に仕上がっておりますよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!