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今回紹介いたしますのはこちら。

「とめはねっ! 鈴里高校書道部」第14巻 河合克敏先生 

小学館さんのヤングサンデーコミックスより刊行です。

さて、三年生と望月の書道部引退を前にして迫ってきた書の甲子園。
それぞれがそれぞれの気持ちを秘める中、書の甲子園に提出する作品制作をかねての合宿が進んでいくのですが……?


望月や勅使河原たちがそれぞれ集大成と言える作品を提出していく合宿最終日前日。
最終日の午前中で合宿はおわりとなり、お世話になったお寺を大掃除しなければならないので……実質の最終日と言えるそんな状況の中で、いまだ縁は作品の構想を練っている段階でした。
ですがそのギリギリの段階で、影山が直訴するのです。
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大江が徹夜で作品を書きたいと言っております!
やっと構想が固まった、間に合うかどうかは一か八かになりますが、時間の限り書かせてやってください!

縁の徹夜の作業は無事許可され、他の生徒たちがかたずけをする中で本番が始まります。
そんな彼に清風は、今から朝まで描いても納得いくものが描ける可能性は低いというのですが、それはゆかりも承知の上。
この数日間悩んできた書の構想がやっと固まり、今はそれを形にしたい気持ちで心が昂ぶって眠る気が起きない……とのこと。
清風もその気持ちはわからんでもない、とうなずくのです。
ですが縁、昨日はあの井上有一の書を見てショックを受け、書をかけないような状態にまで追い込まれていたはず。
縁はそれほどまでの精神的ダメージから脱することができたのでしょうか?
縁は正直に、まだそのダメージは残っていると打ち明けます。
あんなすごいものを見たら、自分が何を書いても全く足元に及ばない気がする。
でも、今はもう頭の中からあの書を追い出してでも自分の書を書くしかない……
そんな縁の心情を聞いた清風は、あれを見に行かせたのは自分だから放っておくわけにもいかないな、とこんな話をしてくれました。
井上有一が尊敬していた顔真卿という書家がいた。
その人物の代表的な書には、下書きの状態にもかかわらず傑作と呼ばれているものがある。
それは、強い気持ちがこもっているからである。
書き手の感情がはっきりと現れていることが魅力になっており、井上有一はそんな顔真卿にシンパシーを感じて、作為ではない純粋な気持ちの身が現れている書を目指したのだと思う。
それを聞いて縁はハッとします。
それを体現した作品こそが、縁がショックを受けた「噫横川国民学校」なのだ!!
縁はさらにそこで気が付くのです。
あの作品は、祐一が地獄のような体験をしたからこそかけたものだと思っていた。
でもそれだけではなく、亡くなった人を弔う気持ちで悲しみや怒りをこめた書いたんだ。
大事なのは体験そのものではなく、気持ち……!
そこに気が付いた縁は、今の今までちらついていた「噫横川国民学校」のイメージを振り払うことができました。
ぱぁっと表情を明るくする縁。
もうその表情に迷いはありません。
起床時間まではおよそ5時間半……勝負の時はやってきたのです!!

夜更け。
縁は影山とともに、一心不乱に筆を振るっていました。
他の生徒たちはそれぞれの想いを胸に眠りにつくのですが……望月だけはなかなか寝付けないのです。
それは、宮田に言われた一言が原因でした。
縁は、やめていく自分に、今の全力をこめた書を見てもらいたがっている。
……縁は、自分のために今回の書を書いている?
それも、あれだけ真剣に……
一体どんな書を書こうとしているのだろう。
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望月はその胸に奇妙なざわつきを覚えながらも、いつしか眠りに落ちるのでした。

その頃、縁は突然筆を止めて影山に話しかけていました。
「噫横川国民学校」のような、作為のなく作者の気持ちが出ている「卒意の書」はすごく難しいのではないか?
そう言う書を書こうとすると邪魔になってくるのは、うまく書こうという心なんじゃないか……?と。
すると影山、こんな言葉で返してきました。
「寧ろ拙なるも功なるなかれ」。
傳山という書家の残した言葉で、多少下手な書よりも技術だけで心のこもっていない書のほうがいけない、多少カッコ悪い書よりも媚びた書になる方がいけない、ありのままに真っ直ぐ書け、あれこれ巧妙に考えすぎるんという言葉なのだと言います。
ですがその境地に達するには、数十年積み上げた基礎があってこそなのではないか。
一年四か月程度書をかじった自分がその境地に立とうとしても、ただ下手なだけの書になるのではないか。
縁はそう考え、うつむいてしまうのですが……
そこでも影山は力強く答えるのです。
確かにお前はまだ1年4か月しか書を学んでない。
だがその間書いてきた書を今思い出してみろ!
……縁の中を駆け巡る、今まで書いてきた書の数々。
それが一生懸命学んだものであれば、血肉となってしっかり身についたものであれば!
後は本当に素直な気持ちになって、各言葉の意味をかみしめながら筆を動かせば……!
縁は完全に吹っ切れたようです。
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思いの丈をぶつけるように筆を動かし……やがて……!!


というわけで、いよいよクライマックスを迎える本作。
縁が自分の思いのすべてをこめてぶつけた書とはどんなものなのか?
そしてそれを見た鈴里高校書道部の面々の、何よりも望月の気持ちは……?
ここからは一同の想いと努力の結晶が生んだ結果が、続々と結実していく様が描かれていくのです!!

本作は今巻にて完結。
縁をはじめとした書道部の、書の甲子園における成果はどんなものなのか。
望月が挑む、日本代表もかかった柔道大会の結果は。
それぞれの進路はどうなっていくのか。
一条を含めた、望月と縁の恋の行方は……
様々な気になるあれこれが存在する本作ですが、今巻でそのほとんどにきっちりと決着がつけられていきます!!
そして迎える寂しくもなんだかホッコリするラストは、本作らしいさわやかな感動を与えてくれるものに!!
さらにさらに、なんとこの単行本のために17ページにもわたる「その後」を描いたエピローグがし描きおろしで収録!!
3年生が去った後の鈴里高校はどうなっているのか、気になるあれやこれやは……?
より一層感動が深まる追加エピソードも見逃せない、満足間違いなしの一冊に仕上がっております!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!