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今回紹介いたしますのはこちら。

「溶解教室」 伊藤潤二先生 
秋田書店さんの少年チャンピオンコミックスエクストラ もっと!より刊行です。

さて、ホラー漫画界のビッグネーム、伊藤潤二先生今年2冊目のホラー漫画刊行となる本作。
本作にはその表題作から始まる「溶解」シリーズ5編、そして6Pの短編2編が収録されています。
伊藤先生の魅力と言えば、生理的な恐怖、常人離れした発想、混ぜ込まれたユーモアでしょう。
ですがそんな中で忘れてはいけないのが、強烈なインパクトを残すキャラクター!
本作でもそんな強烈なキャラクターが登場するのですが、果たしてどんなキャラクターなのでしょうか……!?


とある高校に、一人の男子が転入してきました。
阿澤夕馬と名乗る彼、物静かな印象を受けるメガネの美青年。
ですが彼、自己紹介の時から奇妙な行動をとるのです。
名前を名乗った後に取ったその行動は……この度はまことに申し訳ありません!と謝罪すること!!
クラスの一同は、初めて会うなりそのギャグは何だと大笑いするのですが……

何をしても、いや、しなくても謝りに謝る夕馬、すぐにそれが目についた不良たちからいじめられ始めます。
が、それでもひたすら謝る彼……
とうとうクラスの正義感の強い女子、有須慶子が心配して声をかけてみたのですが、それでも彼はすみませんと返すばかりなのでした。

そんな慶子が下校をしておりますと、少女が付いてきていることに気が付きます。
おかっぱ頭のその少女、なにやら目つきが尋常ではありません。
気味の悪さを感じた慶子、走って逃げだすのですが、振り切ったと思えば今度は前の道からその少女が姿を現すではありませんか!!
逃げても逃げても先回りする少女。
その少女、クックックと笑ったかと思うと、
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あんたの柔らかい脳みそをチューチュー吸わせておくれ、と恐ろしいことを言いながら慶子に向かってダッシュしてくるではありませんか!!
いよいよ恐ろしくなり、わき目も振らず逃げ出す慶子。
それがいけなかったのでしょう、路地から出た瞬間に通りがかったトラックに接触してしまったのです!!

幸いけがは軽症で、一週間ほどで退院できそう。
ご両親は不幸中の幸いを喜ぶのですが……意識を取り戻した慶子はあの少女のことが恐ろしくてなりません。
三人でその少女のことを話していますと、思いもよらぬ人物がやってきます。
あの転校生、夕馬が!!
夕馬はやってくるなりいつものように謝り始めました。
ですがその理由を聞けば納得、なんとあの不気味な少女は彼の妹だというではありませんか!!
最初こそ両親たちは激怒しましたが、夕馬とあの不気味な少女ことちずみは両親をすでになくして二人きりだという身の上にいることを知り、そして誠心誠意毎日やってきては土下座までして謝ってくる真摯な気持ちを受けて徐々に態度を軟化。
プレゼントなんかも持ってきてくれますし、何故かわかりませんがその謝罪に奇妙な……身も心もとろけるような心地よさを感じるようになってきた慶子。
退院することにはすっかり二人は打ち解けていったのです。
退院し、学校に久しぶりに登校しようという道すがら、夕馬はついにちずみのことを話し始めました。
昔は素直でかわいかったちずみがああなってしまったのは自分のせいなんだ。
幼いころ、厳格な両親に厳しくしつけられていた夕馬は、そのストレスを発散するために虫やカエル、蛇といった小動物を殺していた。
その祟りでああなってしまったんじゃないか……と。

そんなころから、街を「不気味な少女が徘徊して女子供を追い回す」という噂が広まっていました。
そしてその噂を歌づけるかのように、日夜様々な家の前で土下座して許しを請う夕馬の姿があちこちで見かけられました。
夕馬に感化されたのか、慶子も一緒になって土下座してみたものの、夕馬はあなたはちずみの邪悪さを分かっていない、僕はまだ謝りに行くところがあるからとつれなく一人立ち去ってしまうのです。
不完全燃焼の慶子は、妙にテンションが上がってしまって夕馬の自宅を訪ね、直接ちずみと会ってみることにしました。
鍵の開いていた彼の家は、何とも言い難い悪臭が漂っています。
地済みを探し回っておりますと、突然登場!!
クックックと言う奇抜な笑い声に驚きながら、お兄さんがどんな気持ちで謝ってるかわかってるの?と尋ねてみますと……ちずみから返ってきたのは「そりゃあ昇天するほどの快感だろうよ!!」という言葉だったのです!!
ちずみがいうには、夕馬は謝れば謝るほど快感を感じ、すべて自分のために謝っているのだとか……?
しかも子供のころ小動物を殺していたというのも、ストレスの発散のためなどではなく、悪魔を呼び出す儀式の生贄にしていたとのこと。
おまけにその悪魔召喚の儀式は成功を収めたんだそうです!!
しかもその日をきっかけに、夕馬は謝罪魔になったらしく。
夕馬が謝っているのは言葉をかける対象ではなく、呼び出した悪魔に向けられたものなのだというのです!!
その証拠だと言って、地済みは押入れのふすまをがらりと開けました。
そこには、両目と口の穴から得体のしれない液体を流している
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ちずみたちの両親と思しき二つの生首……!!
これがアタシたちのパパとママだよ、もう脳みそは流れ出てしまってからっぽだけどね、と笑うちずみ!!
恐怖のあまり、慶子は逃げ出してしまうのでした!!

その日あたりから、慶子は周囲の奇妙な様子を目撃することとなります。
周囲の人間がいつも鼻をかむようになり、物忘れがひどくなり、ぼんやりしっぱなしという状態に。
慶子もなんだか頭がぼんやりしていたのですが……
そんな日も、いじめっ子は夕馬に土下座してみろやと迫っています。
夕馬も素直に許してくださいと土下座をし始めました。
慶子はもういじめるのはやめて、と止めるのですが、振り返ったいじめっ子の顔は
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目と口の穴から「なにか」がどろどろと流れ出ていて……!!
まさかこれは、夕馬の謝罪の影響、だとでもいうのでしょうか!?
そうしている間にも、夕馬は慶子に謝罪を繰り返してきて……!!
本当にちずみの言っていることが真実なのでしょうか。
それとももっと別の恐怖が……?
慶子の運命やいかに!!


というわけで、良くも悪くも2014年を沸かせた謝罪をモチーフにした本作。
ちなみに本作第1話の掲載は2013年3月ですので感知がいなされませぬよう……
とにかく、奇怪な兄妹が事件を巻き起こし、周囲の人物が巻き込まれていくという内容になっています!
本作の恐怖の元凶である二人は、悪意の有無はともかく、直接攻撃を加えてくるわけではないというところがミソ。
謝ってくる、という行為を止めさせるのは難しいですし、そもそも勝手に土下座してくるのですから距離をとろうにも取れません。
謝る、という単純な、ある意味弱さの象徴ともいえる行為がもたらすすさまじい恐怖……
溶解していく様の恐ろしさと合わさり、恐怖もひとしおといったところです!!

さらにこの後にも、この奇妙な兄妹のまた別の奇妙な力や、予想もできないイベントなんかが描かれていきます。
見るからに邪悪なものの、慶子に真実を教えてくれたりと意外にいい人な気もしないでもないちずみ、そしてその心の内が全く見えない夕馬。
伊藤先生独特のシュールさと不気味さがまじりあった二人が行き着くすさまじい結末、その驚愕の舞台とは!?
結末までもが伊藤先生らしい感じの本作、ファンならずとも見逃せませんよ!!

そして見逃せないのは短編2編も同じ!
こちらも伊藤先生ならではの奇抜極まりないアイディア一発勝負な感じのお話となっております!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!