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今回紹介いたしますのはこちら。

「いぬやしき」第2巻 奥浩哉先生 
講談社さんのイブニングKCより刊行です。

さて、思いがけないことから機械の体になってしまった壱郎。
世間からどころか、家族からすら軽視され続け、挙句の果てに苦しいながらも一軒家を立てて間もなく病が発覚……
そんなところで手に入れた機械の体。
さらなる絶望……と思いきや、とんでもない力が手に入ったことで、生き甲斐のようなものまで感じることができました。
人を救うことを決心した壱郎ですが、実はもう一人同じことがきっかけで機械の体になった若者がいて……?


奇怪の体になったもう一人の男、獅子神皓。
彼は最近引き籠り始めた友人、直行の部屋を訪ねました。
彼の目の前で、自分はもう獅子神皓ではない、と言って体の中身を見せたのですが……もちろんそんなことをにわかに信じられるわけがありません。
そこで皓は直行を連れて、まずベランダに出ました。
そして、電線の上にとまっているカラスの狙い……指をピストルの形にして、バンと撃つまねをすると……
それに反応したかのように、一斉に飛び立つカラス。
直行は、カラスは知能が高いから撃たれたと思って逃げるんだろう、と考えたのですが、次の皓の行動を見てはそうも言っていられません。
逃がさない、と言いながら飛び去った一匹のカラスに向けてもう一度バンとやると、今度は明らかに何かが「命中!
カラスは地面に落ちていったのです!

その後、皓は直行を街に連れ出しました。
皓のほうから手品だと偽り、展示品のテレビに映っている映像をエロスなものに帰るといったいたずらをした後、最後にもう一つだけ見せる、とおもむろに両手を広げ、指揮者のように動かし始める皓。
するとその手の動きに合わせるかのように、道行く車たちが次々と衝突をはじめ……!!
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こんなことまでされては、直行も彼がもう皓ではないと信じるしかなくなってしまうのです!

機械の体を手にした皓は、今まで心の中に秘めていたものを一気に解放してしまったようです。
友人だった直行には、直行を引き籠らせた原因であるいじめっ子を全員殺してやると物騒な言葉をかけ……
そして、その言葉がただの思わせぶりな言葉ではない本気であることを現す、とんでもないことをしでかすのです。
とっぷりと日も暮れた夜。
住宅街の中で目隠しをしてぐるぐると回転し、一軒の家に向き直りました。
するとその見知らぬ家の玄関の扉を開け、中に入っていきます。
廊下を歩いていくと、台所で夕食の準備をしている母親らしき人物を発見。
そして、その母親が皓の姿を見て戸惑っているうちに
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皓は彼女を撃ち抜き、無慈悲に殺めてしまったのです!!
しかも、こんなにあっさり殺してしまっては意味がない、とお風呂場へ。
そして、そこで入浴している親子の父親に向かって指鉄砲を発射!!
最初は威嚇しただけでしたが、弐発目では確実に肩口を撃ち抜いたのです!!
そこで父親は、なんとなくですが事態が呑み込めたようです。
母親は死んだのか?と質問してきて……皓がそれを肯定すると、すすり泣きはじめる父親。
それを見て、皓は「ちょっとキタかも」、とつぶやくのです。
だからと言ってこの恐慌を辞めるつもりはさらさらありません。
せめて子供だけは、と懇願してくる父親に、子供も殺すとはっきり言い渡し……射殺。
子供のほうは結局うってはいないのですが、亡骸になった父親にしかと抱きしめられていた為、湯船に沈んで溺死してしまうのでした。
そんな様子を見て、皓は笑うのです。
ああ、生きてる。
俺、生きてる感じがする。
そう言って皓が悦に浸っているその時に、運悪くその家の娘が帰ってきてしまいました。
惨殺死体を見て、絶望する娘。
皓はそんな娘を指鉄砲で脅し、階段に座らせて尋問……いや、場にそぐわない奇妙な質問を始めたのです。
どんな漫画を読む?
その漫画のキャラで誰が一番好き?
娘からの質問には答えず、奇妙な質問ばかりを繰り返す皓。
ついに耐え切れなくなった娘は、泣きながら死にたくないと繰り返すのですが……
皓は彼女の掌に指を当て、すっと切り裂いたのです!!
死に直結するような大けがでこそありませんが、皓がいつでもたやすく彼女を殺せる、という事実を突きつけ脅すには十分すぎる威力で……
彼女はさらに大きな声で、殺さないで、お願いしますと泣き叫ぶのでした!!
一軒家なのが不運だったのか、その声はだれにも届きません。
彼女はむなしくこのまま皓の玩具となって殺されてしまうのでしょうか……
いや、誰にも届きはしませんでしたが……その声は、人間ではない物には届いていました!!
悲痛な叫び……それは
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壱郎の耳に届いていたのです!
急いで車に乗り込み、声のもとへと急ぐ壱郎!!
果たして壱郎は間に合うのでしょうか?
そして、皓の凶行を止めることができるのでしょうか!?
運命の時は間近に迫っています!!


というわけで、もう一人の主人公が動き始めた本作。
偶然同じ場所に居合わせ、同じように機械の体を手に入れ、運命を捻じ曲げられてしまった二人。
その二人は、機械の体を手に入れ、ほどなく自分の体をある程度受け入れ、そこに生きがいを見出すようになりました。
が、問題はその方向性が全くの逆だということ。
壱郎は持ち前の善人ぶりと、今まで誰の役にも立っていなかったのかもしれないという引け目や劣等感のようなものが相まって、「一人でも多くの人を救う」と言うところに自分の生きている意味を見出しました。
が、逆に今までなんということはない普通の人生を歩んでいて、大きな感動も挫折も味わってこなかった様子の皓は「目の前で生の人間ドラマ」を、それも悲劇を引き起こして見つめることで生きている実感を味わうようになるのです!
直行によれば、皓は飼い犬が死んだ時大泣きをするような人一倍涙もろい人物だったとのこと。
家族仲もどうやら良好なようで、凶行に走るような理由は見つかりません。
……だからこそ、人生を変えるような力を手に入れてくるってしまったのでしょう……
自分のために人を危め続ける皓、救い続ける壱郎。
同じ力を手に入れ、逆の行動をする二人の間に衝突が起きるのは必然。
やがて起きるであろうその激突の行方は?
そしてその結果は……?
二人の運命から目が離せませんね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!