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今回紹介いたしますのはこちら。

「EAT-MAN THE MAIN DISH(イートマン ザ メインディッシュ)」第1巻 吉富昭仁先生 
講談社さんのシリウスKCより刊行です。

さて、本作は吉富先生の代表作である「EAT-MAN」シリーズ10年ぶりの最新作となる作品です。
前作で新たな世界へと旅立った、世界一の冒険屋ボルト・クランク。
戻ってきた彼はどのような冒険を繰り広げるのでしょうか……?


炎に包まれた街。
駆けつけた警察はそれを見て唖然とします。
いったいこの三乗を招いたのはだれなのか……?
警察がかたずをのんで見守っていると、滅びゆく街の中から人影が一つ歩いて出てきました。
街から脱出した人間か、と保護に向かう警察。
ですがその哨戒機が男に近づいていった瞬間……

そのコートの男は右腕を巨大な兵器へと変化させ、粉々に破壊してしまったではないですか!!
次々と破壊されてしまう哨戒機。
警察の一人は必死になってその怪しい男を捕獲しようとするのですが……同行していたベテランの警察が応援が来てからにしよう、とそれを抑えました。
あいつがこっちに銃を向けるなら人出は多いほうがいい。
あの男を知っているかのような口ぶりをするベテランに、当然あいつは何なんだと尋ねる若手警察。
ベテランは、若いもんは知らないだろう、自分もうわさでしか知らないと前置きをして話し始めました。
大昔にくたばったと思ってたが、また現れるとはな。
……世界一の冒険屋、ボルト・クランク!!

荒野のある街で、町の代表らしい男が大勢の人々の前で演説をしていました。
最近、3つもの町が破壊された。
次はこの町の番かもしれない。
だから冒険屋の皆さんにこの町の警護をしてもらいたい!
代表はこの町の警護のために、大勢の冒険屋をこの町に集めていたのです。
この町に来るかもしれない、などというあやふやな情報では警察は動かない、そこで冒険屋の力を借りた、ということのようですが……
何も起きなければただ酒飲み放題の楽な仕事じゃないか、と構えていた冒険屋たちですが……代表が一連の町破壊事件の容疑者がボルトだ、と言うと騒然とします!!
ボルトは、正体不明ながらその実力は折り紙付きの半ば伝説となった冒険屋。
彼を象徴する、最も奇妙な特徴は……金属でも何でも、食べたものを手から再生する不可思議な能力!!
その腕前にあこがれを抱くものも多いのですが……
そんな憧れの対象にまでなった大物が、街を破壊している?
ざわめきが収まらない中、一人の男性が突如壇上に立ってしゃべり始めました。
ジャクソンと名乗るその男性、この仕事は俺が引き受けるからみんな今すぐ町から出ていけ、と言い出すではないですか!!
血気盛んな冒険屋たちは当然それに反発!
ジャクソンは鋭い眼光を代表へと向けるのですが……壇上に代表の娘らしき少女が現れ、心配そうに寄り添ったのを見て引き下がっていったのでした。

ジャクソンはこの町を守る、と言うのとは別の目的があるようです。
それは、ほどなくして明らかになりました。
街中で、代表を見た瞬間……代表に向かってもう突進を始めたではないですか!!
すんでのところで周囲にいた冒険屋によって取り押さえられたジャクソン。
その時のやり取りで、ジャクソンは右腕を吹き飛ばされてしまったのですが……
その傷口から出てきたのは血液でも肉片でもなく、
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機械の部品!?
彼は、人間そっくりに作られた自立型アンドロイド、ヒューマノイドだったのです!
この世界ではさほど珍しいものではないヒューマノイドなのですが、ジャクソンは例外でした。
かつて大統領を暗殺しようとした過去を持っていて……!
感情などもあり、かっとして人に危害を加えることもあるヒューマノイドですが、本来なら人間を殺そうなどと考えないはず。
ですがジャクソンは、代表こと、マイルズが作ったヒューマノイドはその限りではない、と言うのです。
マイルズは金のために人を殺すことができるヒューマノイドを作り続けてきた、それももう終わりだ。
ジャクソンの突然の暴露に驚き戸惑う周囲の人々。
そんなときに、街の南西からコートの男が入ってきたという報告の声が聞こえてきたのです!
すぐ殺せと叫ぶマイルス。
冒険屋の一部はまだ何もするなとその支持を打ち消そうとするのですが……そんな騒動のすきをついてジャクソンはマイルズに銃弾をはなちました!!
恐慌を止められなかった冒険屋たちは、すぐにジャクソンに銃を向けてけん制するのですが、ジャクソンは落ち着き払って早くこの町を出ろと言うのです。
この町は……と何かを言いかけようとしたジャクソンですが、そこで驚くことに、どてっぱらをぶち抜かれたマイルズが立ち上がったではないですか!!
その腹の風穴から覗いていたのは、機械部品……!
マイルズもまた、ヒューマノイドだったのです!
驚いた瞬間に生まれた一瞬のスキ。
その隙をついて、ジャクソンの腹部を破壊したのは
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マイルズの娘と思われていた少女だったのです!!
マイルズの体はもうすでに朽ちていたのだそうです。
ジャクソンが破壊したマイルズは、マイルズの形をしたただの機械。
マイルズ本来の意識は、この少女型ヒューマノイドに移されていたのでした!
真相を知って、冒険屋たちはジャクソンの行っていたことが本当であることを理解し、マイルズを取り囲みました。
が、すでに冒険屋たちは袋の鼠となっていたのです。
この町の住民たちは、全員マイルズの作ったヒューマノイド!
普段は普通に暮らしているのですが、マイルズの意思一つで操り人形にされてしまう憐れな存在だったのでした!
冒険屋たちも奮闘はしたものの、数には勝てず拘束されてしまい……
もはや打つ手のなくなったジャクソンと冒険屋たち。
そこでマイルズは、今まですっかり忘れていたジャクソンのことを思い出したようで。
お前は大統領の暗殺に失敗し、破壊されたはずじゃないか?と尋ねてきました。
ジャクソンは、そんな完全敗北とも言える状況にもかかわらず……にやりと笑ってこう言うのです。
大統領の護衛をしていたのがボルトだった。
彼に再生されたのさ、お前に操られるチップを外した状態で。
私は彼に依頼した、マイルズのヒューマノイド工場を破壊してくれと。
残ったのはこの町の工場だけだ。
お前はもう、終わりだ。
……その時、静まり返った町にコリッという音が響き渡りました。
ねじをかみ砕き、飲み込みながら……現れたのです!
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世界一の冒険屋、ボルト・クランクが!!


というわけで、再び動き出した清開一の冒険屋。
今回のシリーズも、今までと変わらない味わいを保っております!
ハードボイルド、アクション、ユーモア、アイロニカル……様々な要素が混然となり、読者を飽きさせないのです!
そしてボルトの基本的に何もかも知っているのに最後の最後まで何にも教えてくれずにおいしいところをさらっていく(?)スタイルも健在!!
今回は4つのエピソードを収録しているのですが、どれもがクライマックスに大きなどんでん返しが用意されていまして。
そのどんでん返しに驚き、そしてボルトに決め顔とともに訪れる結末にカタルシス的なものを感じて……
最後のボルトが立ち去るシーンで余韻に浸る、そんなボルトの冒険が今回も楽しめるのです!!

最近はエロス要素やシュールな感じの作品が多かった感じのする吉富先生。
「スクール人魚」でそれらの要素にホラー要素を加えてみたり、「地球の放課後」と言った謎が多い日常もの、あるいは「バランスポリシー」と言った骨太なドラマも用意されたTSものと、様々な作風にもチャレンジされていました。
そんな作品も十二分に面白かったのですが、やはり吉富先生の名を不動のものとした、原点ともいえる作風もいいもんです!!
本作の今後が楽しみでなりませんね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!