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今回紹介いたしますのはこちら。

「怪談百物語 新耳袋 第4夜 山の牧場」 原作・木原浩勝先生・中山市朗先生 漫画・鯛夢先生 
集英社さんのホームコミックスより刊行です。

さて、木原・中山両先生による恐怖短編シリーズを漫画化している本作もはや第4巻。
今までの間では短編を10編前後収録していましたが、今回は長編1編にそれに関連しているかもしれない短編1本の2編に絞られています。
その長編は……原索での発表時からすさまじい反響を呼んだ「山の牧場」!!
禁断の物語とも言われているそのお話とは……!?


中山先生がまだ大学生だった、1982年の夏。
兵庫県に卒業制作の映画を撮りに来ていました。
あとは高台から街を見下ろすカットをとれば終了というところで、そのいい感じの高台を探して山を車で走っていました。
メンバーはカメラマンのウメツジ、スクリプターのカゲヤマ、地元の友人であるフジモト、そして中山先生の4人。
地元民であるフジモトの運転でそのスポットを探していたのですが、いまいちいい場所が見つかりません。
そんな道中、舗装されていない細い道を発見します。
もしかしたらこの道を分け入って入ればいいスポットがるかもしれない、と考えた一同はその草の生い茂る細い道に車を入らせるのですが……

道は細く、生い茂る草木のために周りはほとんど何も見えません。
Uターンすることもできないので、もうこの先がどうなっていようとも行けるところまで行ってみるしかないのです。
やがて一同はその道端に奇妙なものを発見。
ドラム缶にペンキで、「あと30m」と書かれた、謎の表示。
進んでいくにつれ、点在しているそれは20m、15m、10m……と距離が縮まっていきまして、やがてそのドラム缶に記されている文字が「終点」になると……たどり着きました。
こんな人の踏み入らないような山奥にある……牧場に。

地元民、フジモトも存在を聞いたこともないというこの牧場。
人の気配が全く感じられなかったことも手伝って、一同はそこを探索してみることにしたのです。
すると、どうもこの牧場は妙なところが多く目につきます。
まず牧場で最も重要な厩舎。
大きく、きれいな建物なのですが……あまりにもきれいすぎるのです。
わら屑一つも落ちていないどころか、どう見ても「使ったことがない」レベルに!
さらに気になる点は、屋根の一角にきれいな球形くぼみがあること。
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直径2メートルほどのそれは、どうやってそうくぼませたのか想像もつきません。
厩舎の骨組みの一部もきれいな半円状に飛び出してまがっていて……いったいどうすればこうなるというのか、全く理解できないのです。
歩いていくとそのあと、今度はさかさまになったトラクターが放置されているのを見つけます。
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ですがそれも奇妙。
さかさまになったまま放置していくだけでもおかしいのですが、そのさかさまになっている市が建物の壁際ギリギリであるにもかかわらず、その建物には傷一つついていないのです!
しかもトラクターのわだちがしっかり残っているにもかかわらず、他の車や重機の痕跡もなし。
いったいこれはどうやってさかさまになったのでしょうか……?

奇妙なものはまだまだありました。
倉庫らしき建物に行ってみると、やはりわら屑一つもないにもかかわらず大きな石灰の山が二つだけ用意されています。
そして、居住スペースのように見える2階があるのですが……どこを探してみても、階段がないのです!
ここまで来たらどうしてもその2階を確認してみたくなります。
一同は近くにあった土手を登り、そこから2階のひさしに飛び移って窓から入ってみることにしました。
幸い鍵はかかっておらず、中に入るとそこは廊下らしき場所でした。
ですがその廊下、二部屋ある片方の部屋に続いている扉はあるのですが……あとは何もない、行き止まりなのです。
部屋を出てもあるのは行き止まりだけ。
この廊下……何のために存在するのでしょうか……?
ともかくその通じている部屋に入ってみることにします。
案外こういうのはふたを開けてみるとなんて来ない普通のモノだった、という落ちが付くものなのですが……
その部屋は
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壁、天井、わずかな隙間もなくびっしりとお札が張られた奇妙極まりないもので……!!
しかも床には、ゴロゴロと人形が転がっている挙句、窓にはあのドラム缶に書かれていたペンキ文字で「たすけて」と書いてあるではないですか!!!
あまりの異常さに言葉も出ず、ただただ嫌な予感を感じる一同。
もう帰ろうかとなったのですが……中山先生はどうしても、もう一つの部屋が何なのか気になってしまってなりません。
文字や人形はたちの悪いいたずらだとしても、この建物自体は何なのか。
人の住めない居城う空間を作るはずがない、階段がもう一つの部屋にあるのかもしれない。
そんな淡い期待にも似た気持ちを胸にひさしを伝ってもう一つの部屋を見に行くのですが、そこには……!!


というわけで、あまりにも奇妙な光景が広がる山の牧場のエピソードを描いていく本作。
この後も一同はさらなる奇怪な風景を次々と目撃することになるのです。
さらにいったいこの建物は何なのか?
その謎が明かされることはないのですが……中山先生たちはおぼろげながら、そこで何をしようとしていたかという予想をつけることはできました。
それが正解なのかどうなのかはわかりません。
ですが、この牧場が異常であることは確実。
その牧場にかかわったものに降りかかってくる不可解な出来事、そして徐々にその様相を変化させていく牧場……
正直言って全然怪談じゃありませんが、読めば読むほど奇妙な感覚に襲われ、謎が深まっていくこの物語。
満を持しての漫画化、楽しむしかありませんよ!!

そして最後に収録されたエピソードもまたぞくっとさせてくれます。
今後おそらく継続的に漫画化されていくであろう「黒い男」シリーズの第1話にあたるこの作品、この山の牧場との関連性も考えてしまうのですが……!?


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!