hc0
本日紹介いたしますのはこちら、「3.11を忘れないために ヒーローズ・カムバック」です。
小学館さんのビッグコミックススペシャルより刊行されました。

さて、本作は細野不二彦先生が音頭をとっておこなわれた、東北復興支援プロジェクトによって発表された読み切りを1冊にまとめたものです。
小学館さんの雑誌でかつて発表されていた人気作品の新作読み切りを各先生が描き下ろすと言う豪華な企画を、一冊で読める贅沢な本作。
そのラインナップは、発起人である細野不二彦先生の「ギャラリーフェイク」をはじめとしまして、ゆうきまさみ先生の「究極超人あ~る」、吉田戦車先生の「伝染るんです。」、石森プロ協力による島本和彦先生の「サイボーグ009」、藤田和日郎先生の「うしおととら」、高橋留美子先生の「犬夜叉」、荒川弘先生の「銀の匙」、椎名高志先生の「GS美神 極楽大作戦!!」と、どれをとっても傑作ばかり。
さらにそこへ、震災一周年の特別読みきりとして発表されたかわぐちかいじ先生の「俺しかいない~黒い波を乗り越えて~」を収録。
すべてが見所と言っていい本作ですが、今回は個人的に一番思い入れのある藤田和日郎先生の「うしおととら」に焦点を当てて紹介したいと思います!

夏。
今日も趣味である絵画の作成に精を出すうしおですが……物凄い勢いでお父さんに怒られておりました。
その理由はただひとつ、荒れに荒れ果てたうしおの部屋です。
寺の息子なんだし、片付けくらいしろと怒鳴るお父さんですが、うしおはどこ吹く風。
オレにはたっぷり時間があるんだから、いつかそのうち片付けるさ!と笑うばかりなのでした。

夕方。
明日の球技大会に備えて、うしおはクラスメイト達とサッカーの練習をしていました。
ひととおり練習を終えて解散となったとき、とらがうしおに突っ込みを入れてきました。
カタヅケってやつをやらなくてもいいのか?
ですがうしおはそんな至極当然のツッコミにも、さらっと流すばかり。
大人は早くやれ、今日やれってよく言うもんだ、でも俺たちには時間なんてたっぷりあるんだ!と笑うのです。
そんなうしおととらに、声をかけてくるものがいました。
なえ、そこのニイちゃんたち。
あたし駅に行きたいんだけど、どっちか知ってる?
そんな声をかけてきたのは、ランドセルを背負った少女でした。
うしおは早速彼女を駅に連れて行ってあげようとするのですが、そこでニイちゃん「達」と呼ばれたことに気が付きました。
彼女は、とらが見えているのです!
hc1

幸いと言うかなんと言うか、彼女はとらをそれほど怖がっていないようで。
さらに知らない人についていってはいけない、という大事なこともよくわかっているようで、道を教えてくれれば言いとしっかりしたものです。
ですが彼女、駅に行く前にうしおがボールをもっていることに気が突きました。
そして「三度ぶつけ」なるゲームを知ってるかと聞いてくるのです。
うしおも聞いたことのない遊びですが、ざっくり言うとボールを持った人が誰かに投げつけて当てていく、というシンプルなゲームの様子。
2人ではつまらないからととらも交えてその三度ぶつけに興じることになるのですが……どうもその少女、避けるのが苦手なようで。
やさしく投げたうしおの弾にもぶつかり続けてしまう彼女を見て、とらは大笑いするのです。
それを聞いてしゅんとなる少女。
しかしそれはその言葉に傷ついたというよりは、何かを思い出して暗く沈んでいるようで。
よく三度ぶつけを一緒にやっていた、トモダチのイナモっちゃんにもいつもヘタだと言われていた。
だからあたしには、ボールみたいに「フコー」が当たっちゃうんだ。
やさしかったおばあちゃんが死んで、お父ちゃんの工場が潰れて、お母ちゃんとお父ちゃんがリコンして。
……そして、お母さんのところへ行くことに名って、電車に乗ろうとしていたんだそうです。
だったら、ボールを避ける練習をしよう。
これからはその「フコー」ってやつにも当たらないようにさ。
そう言ってうしおは、少女に避ける訓練をしてあげるのでした。
とらが、バケモノの臭いを感じ取っていることも知らず……

改札まで少女を送り届けたうしおととら。
別れ際に少女はチャコと名乗り、笑顔で駅の中に入っていきました。
早く母ちゃんのところに着けるといいな、と呟くうしお、ですがとらは着けねーよとなにか不吉なことをつぶやきまして。
単なる憎まれ口ではなく、チャコの正体を知っているからだったのです。
しかしその答えが語られたのは、とらの口からではありません。
突然現われた中年男性からだったのです。
うしおにいきなり今の子を知っているのかと訪ねてきたその男性。
彼女はチャコのことを知っているようです。
そんな彼は言いました。
チャコちゃんはもう、
hc2
死んでいるんだよ。
電車を待っていたチャコ。
彼女の目はうつろで、あたしの乗る汽車が来た、とうわごとのように呟いています。
そしてその汽車は、やってきました。
おぞましい顔をつけた、火炎の車輪で走る汽車……火炎特急「不知火」!!
hc3
その正体は、死んだ人間の魂を石炭にして走る妖怪、「火車」。
すでに多くの哀れな魂をその口に詰め込んだ火車は、またたくまにチャコをも飲み込んでしまうのです!!
火車の先制攻撃によってチャコを護ることが出来なかったうしお。
ですがまだチャコは火車の腹の中にいるはず!!
hc4
チャコの、男性の想いをとともに、うしおととらの戦いが再び繰り広げられるのです!!

というわけで、いまだ色あせないうしおととらの戦いが収録された本作。
思わず手に汗握る激しい戦いと、じんわり来るドラマは、当時読者を引き込んだあの頃と比べても違和感なし!
当時ファンだった方ならば間違いなくご満足いただけることでしょう!
本記事では「うしおととら」の紹介にとどまらせていただきましたが、他の作品も見逃してはいけません。
「美神」では同じ椎名先生作品のキャラがゲスト(?)出演していますし、
hc5
「ギャラリーフェイク」では発起人らしい部隊を選んだドラマが展開。
hc6
ヒーローズ・カムバックと言う題名にふさわしい、歴戦のヒーロー達の今の活躍が堪能できますよ!!

読めば力が湧いてくるヒーローの競演、「ヒーローズ・カムバック」は全国書店にて大好評発売中です!
あのかつての人気漫画の新作が読めると言うだけでも買いといえる本作。
漫画好きならば避けて通ることは出来ますまい!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!