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本日紹介いたしますのはこちら、「劇画 プロレス夢十夜」です。
作者は原田久仁信(はらだ くにちか)先生。
宝島社さんより刊行されました。

原田先生は、26歳の時に少年サンデーでデビューした大ベテランの漫画家さんです。
代表作はサンデーにて連載された「プロレススーパースター列伝」。
あの梶原一騎先生原作による、ドキュメントタッチのプロレス漫画で、当時のプロレス人気と「ホゲェーッ」「ゲラーアウト!」と言った印象的な台詞回しなんかもあいまって大人気を博しました。
ところが梶原先生の事情によって連載は打ち切りに。
その後もその確かな画力を生かしてスポーツ漫画や極道漫画、政治漫画などを発表。
2000年代半ばごろは漫画を描きながらもアルバイトやラーメン屋なんかをしていた時期もあったそうですが、近年はめでたく本格的に漫画家業に復帰されたようです!

さて、本作は宝島社さんから発売された別冊宝島のプロレスゴシップ誌で掲載された作品を7編収録した単行本です。
その虚実はともかくとして、色々な人物のインタビューや取材などを元に、様々なプロレス史上の事件の裏側を描いていく本作。
往年の名レスラー阿修羅原の物語や、永遠の独身貴族(?)淵が語るジャイアント馬場物語と言う比較的当たり障りのない物語から、ビックリする内情が描かれた物語まで収録されています。
その裏話は、FEGの隆盛から破産までの物語や、プロレスリングNOAH内部のゴタゴタ、さらに橋本真也さんの破天荒な生き様など、様々!!
そんな中今回は、当時物凄く話題になり、今でも見方によってはプロレス史上最大の大イベントだったと言っても過言ではないだろう、「あの」興行に関する物語を取り上げたいと思います!!

94年、秋。
アントニオ猪木は、当時新日本プロレスの企画宣伝部長だった永島とともに北京空港にいました。
ですが、あの基本的にいつも余裕と自身に満ちた猪木がその日は不安そう。
大丈夫だろうかと不安がる猪木に、永島も信じろよ、と答えるしかない。
そんな不安とともに北京空港から飛び立つ先は……「北」。
そう、あの北での大興行、その打ち合わせに向かう日だったのです!!

師、力道山の故郷に錦を飾りたい。
そんな一念と、当時都知事選出馬や脱税スキャンダル、伝説の「アントンハイセル」事件などもあっていろいろ追い詰められていた状況の逆転を狙った一石二鳥の大興行。
当初は実現するわけがないと周囲からは思われておりましたが、94年7月の国家主席交代をきっかけに事態は急変したのです。
新主席の就任とともに大イベントを行って国の威信を示したいと言う思惑が、猪木の提唱した大イベントにガッチリマッチ!
思いもよらぬとんとん拍子で交渉の席が設けられたのです。

ですがやはりあの国は油断ならない国。
北に向かう飛行機内でも、階段の席まで向かう車の中でも、応対してくれたCAや運転手は日本語がわかるようで。
案内人のような男も、何かと日本のものと自国のものを比較してどっちがすごいか?と言うようなことを尋ねてきたりと、やりにくいったらないのです!
そんなムードの中、会談の席についたのはあの国のナンバー3の地位にいる超大物でした。
相手は超大物、そのほかにももろもろの難しい事情がある国が相手ですから、発言には気をつけなければならないでしょう。
しかしここで発揮されるのが猪木の独自の交渉術!
いきなり「ところで、日本にミサイルがむいていると言うのは本当ですか?」と尋ねだしちゃうじゃないですか!!
顔色を変えていさめようとする永島ですが、そこは相手も然る者。
ニタリと笑い、「日本国がおかしなことをしなければ何も心配はないのですよ」と、におわしながらも明言せず、さらに脅しのようにも取れる返答で返すのです!!
ですが度肝を抜かれるのはその返答にさらに返す猪木の言葉!!
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「実は、日本のミサイルもこちらに向いていますッ!」!!
流石にこの言葉には面食らうナンバー3、そして顔面を蒼白にする永島!!
ですがそんな空気を猪木は続く言葉でぶち壊すのです。
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「こちらの女性は美人揃い、日本男児の股間のミサイルはみなこちらに向いていますッ!」と言う!!
豪快に笑い飛ばす猪木。
思わずナンバー3もつられて笑ってしまいます。
これで一気に両者の立場は近づいたと言えるでしょう。
豪快かつ、その裏ではしっかりと駆け引きを感じさせる猪木の発言。
このあたりはいわゆる「政治家」では難しい、猪木ならではのテクニックと言わざるを得ません!

そんな感じで興行自体は決定します。
ですが問題は資金面。
いざ決まったとなったら、スポンサーを見込んでいたあの国にゆかりがある系の企業との交渉が次々に失敗してしまったのです!
結局は長州力と懇意にしていた企業から2億円を借りて難を逃れたのですが、これでもう興行の赤字は確定してしまったのでした。

不安はまだまだあります。
あの国の意向で様々な規制のある取材陣への対応、残念ながらあまり思慮深いとはいえないレスラー達へのタブーの徹底……
そのあたりも何とか潜り抜けて、ようやく興行は開始。
二日間にわたる興行の初日は、観客動員19万人(作中では19万人と記されてますが、どうも初日は15万人と言うのが公式らしいです)のギネス級の大入りです!
この日のメインは橋本VSスコット・ノートン。
当時の新日の基準なら、間違いなくメインイベントと言えるカードです。
体験したことがないくらいの大観衆の前での試合、と言うだけでのまれかけていた橋本ですが、試合が始まると一層違和感で戸惑ってしまいます。
いつもなら沸き立つところで沸かない観衆……
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結局そのままドローで終わってしまった試合。
猪木は、この試合の前に行われていた女子の試合に食われていたからだ、と冷静に分析。
戸惑っていてはいけない、筋肉のポーズをしてもここでは伝わらない。
明日には空気が代わる、俺にはわかるんだ。
そう猪木が語る問題の二日目。
19万人の観客が見守る、アントニオ猪木VSリック・フレアーの超豪華カードの火蓋は切られるのです!!

と言うわけで、北の興行のもろもろを描いたエピソードが収録された本作。
猪木は本当にあの19万人を沸かせることが出来たのでしょうか?
そんな興行の行方の他、その夜のアレコレも描かれていたり。
同行した女子プロレスラーたちも女性でして。
良くも悪くも野獣のようなプロレスラーたちとその夜何があったのかっ!?
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意外とこの話、あの夫婦の誕生秘話だったりもするのかもしれません!!

その他にもゴシップ的な見所も満載。
話題はプロレスだけに終わらず、あの物議をかもしまくった「すっごい滑るよ!」事件まで触れられていたり……
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驚愕の内容、ぎっしりです!!

さらに各話の後に収録されている解説や、原田先生のインタビューも注目したいところ。
プロレスファンで、ゴシップが許容できる方ならば必見ですよ!!

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