本日紹介いたしますのはこちら、「童話迷宮」です。
新潮社さんのバンチコミックスエクストラにて刊行されました。
作者は釣巻和(つりまき のどか)先生。
釣巻先生は06年に四季賞で佳作を受賞しデビュー。
07年に「くおんの森」で初の雑誌連載を開始し、その繊細で幻想的な絵柄や独特な世界観で高い評価を得ました。
なんと四季賞受賞時19歳(09年現在22歳?)と言う末恐ろしい才能の持ち主です。
さて、こちらの作品は小川未明先生の童話を原作と言うか、モチーフに扱った連作です。
小川未明先生といえば明治から昭和にかけて活躍した童話作家で、「野ばら」「赤いろうそくと人魚」などの名作を生み出し、「日本のアンデルセン」と異名を取るほどの大作家。
その数々の名作を下敷きにまったく新しい幻想的なお話がつづられています。
物語は九九が苦手な少年が不思議な店に迷い込むところから始まります。
その店は喫茶店のようで、流されるように主人公は珈琲を注文。
それを聞いて店主らしき怪しげな人物はこの店ではミルクと砂糖の変わりに「ゆめとうつつ」を出しているが、どちらにするかと尋ねてきました。
思わずどちらも、と答えた主人公の元に来たのは珈琲と、1冊の本。
その本を手に取り、読み始めると……不思議な物語の世界へと入ることになるのでした。
この「童話迷宮」は、小川先生の物語を下敷きにした話が12編、その物語をめぐって不思議な体験をする少年の話が3編の15編で成り立っています。
収録されているものは他愛の無いようなものから、切なさを感じさせるもの、不可思議な出来事をつづったもの、生と死を扱ったものまで多種多様。
ですがそのどれもが釣巻先生の持つ独特な絵柄と雰囲気もあいまって神秘的な味わいを持っています。
小川先生の原作を知っていれば「こんな風に原作を活かしたのか」という楽しみ方ができますが、知らない方でもまったく問題ないクオリティの高い短編ばかり。
もともとはウェブコミックとして連載された作品で、カラーだったものを白黒に落とし込んで単行本化しているのですが、気持ち見辛いところはあるものの幻想的なムードを一層増す効果を生んでいます!
また、季刊エスに掲載された短編「放課後のランドセル」と、表題作連載前に2ヶ月連続で掲載された読みきり「月のナイフ」を収録。
どちらも夢等の不思議を取り扱った作品で、表題作と並べてもまったく違和感が無く統一感を崩していません!
繊細で幻想的な物語がやさしく詰め合わせられた、「童話迷宮」は上下巻の全2巻で発売中です。
独特の雰囲気や心に残るお話に加え、描き込まれた絵柄だけでも一見の価値有り!
読めば何かを考えさせられてしまうこと間違いなしですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!
コメント
コメント一覧 (4)
実は昨日本屋で、釣巻和さんがサインしてたんです。本屋のお偉いさんと、ポスターの話や、コミックのサインとかをやっていたんで、おそらく本人だったと思うんですけど・・。
ブログにも書いたんですが、サインしてたんで漫画家さんかな~と覗いていたら、「くおんの森」というポスターのことを話していたので、そこからちょっと調べてみて、この漫画家さんの存在を知りました。
この記事で紹介されている漫画も、本屋の人が一杯持ってきて、サインを頑張ってました笑。若手漫画家さんとかは、本屋めぐりとかもしてるんですかね・・。マネージャーさんと営業の3人で来ていました・・。
俺もその昔はそういう環境で暮らしていたこともあるんですが、たいてい買っちゃった後に存在を知るんですよね……
マイナー気味な漫画家さんにはこういう草の根活動も重要と言うことなんでしょうか。
デビューして、連載持っても厳しいもんなんですね……
でも確かに連載持っている人が、そういう活動をしてるとは意外でした。でもなんだかすごく楽しそうな雰囲気でしたけど。なんか好感度アップしました。
この漫画を知れたのも何かの縁かもしれないんで、今度作品を読んでみようと思います。
俺も他の作品読んでみよう!!